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【恋の短歌30選】有名な恋の短歌(和歌)一覧 名作短歌の作者・意味とは?

      2017/12/31


 

「短歌」には、季節の感動を詠んだ歌、人生の不安や苦しみを嘆いた歌、恋する気持ちを詠った歌など、人々の日常に溢れる感情が多く詠み込まれています。

その中から今回は、「恋」に関する「短歌」を紹介したいと思います。恋人と会えない時間を辛く感じたり、相手の気持ちが分からなくて不安になったり、そんな気持ちになっているのはきっと、現代の私達だけではないはずです。

紹介した三十首の作品を読みながら、共感したり、感動したり、好きだと思える一首に出会えたら素敵ですね。

 

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短歌(和歌)とは?

五・七・五・七・七の三十一文字(みそひともじ)で表現する短歌。

「短歌」のはじまりは1300年前の奈良時代に遡り、その頃は、「短歌」「長歌」「旋頭歌」「仏足石歌」「片歌」という、五七調の歌(五音と七音を基調とした歌)を全てまとめて「和歌」と呼んでいました。それが平安時代に入ると、「短歌」以外の歌の文化が廃れていったことから、「和歌」というと自然と「短歌」形式の歌を指すようになっていったのです。

「和歌」の特徴は、まず、歌の中に縁語、掛詞、序詞などの修辞法が多く用いられていることが挙げられます。修辞法とは、伝えたい想いを効果的に伝えたり、趣を添えたりするために用いる技巧のことで、時には言葉遊びのように使われることもありました。

また、「和歌」のもう1つの特徴は、貴族や文化人などが中心になって盛り上がった文化ということです。それは、天皇や上皇の「勅命」によって編纂された歌集が多く存在することや、宮中での「歌合(うたあわせ)」の様子が古典文学作品に描かれていることからも分かりますね。

長い間、多くの人に詠まれ、親しまれてきた和歌ですが、明治時代に入るとそんな「和歌」の歌風を批判する声が上がり始めました。それがきっかけとなり、同じ五・七・五・七・七の形式でありながら、明治時代以降の作品を「短歌」と呼び、これまでの「和歌」と区別するようになりました。

近代の「短歌」には、都市化・近代化していく社会を背景に、生活への不安や苦悩が詠まれた歌なども多くあります。そしてそれが現代になると、口語(話し言葉)やカタカナを用いて表現された作品も登場し、時代とともに「短歌」も変化してきました。

また、「短歌」は「和歌」と違って修辞法をあまり用いないこと、そして天皇や貴族など権力とも切り離された文学であるという特徴もおさえておきたいですね。

このように「和歌」「短歌」にそれぞれ歴史や特徴がありますが、ここでは、五・七・五・七・七の形式で詠まれた歌を「短歌」と一括りにして紹介していきたいと思います。

 

関連:短歌・和歌のルール、決まり、修辞法とは?短歌と和歌の違いと歴史


恋の短歌(和歌)30首

 
①『足引きの 山鳥の尾の しだり尾の ながながし夜を ひとりかもねむ(ん)』
 

作者:柿本人麻呂

意味:山鳥の長くたれさがった尾のような、長い長い秋の夜。私は恋しい人と離れて、たった一人、寂しく寝ることであろうか。

※「山鳥」・・・キジ科の鳥で、オスの尾の長さは1メートルを超えることもあります。

修辞法:「足引きの山鳥の尾のしだり尾の」は「ながながし」を導く序詞。

 

 
②『筑波嶺(つくばね)の 峰より落つる 男女川(みなのがわ) 恋ぞつもりて 淵となりぬる』
 

作者:陽成院

意味:筑波山の峰から流れ落ちるみなの川は、次第に水かさを増して、深い淵になります。それと同じように、あなたを思う私の恋心も積もり積もって、今では深い思いの淵のようになってしまいました。

※「筑波嶺(つくばね)」・・・茨城県南西部にある筑波山のことで、和歌によく詠まれる歌枕としても有名な場所です。

※「男女川(みなのがわ)」・・・筑波山を源として流れる川で「水無乃川」とも書きます。

修辞法:「川」「淵」は縁語。

 


 
③『陸奥の しのぶもぢずり 誰ゆへに みだれそめにし 我ならなくに』
 

作者:河原左大臣

意味:陸奥の国の信夫の地で作られる乱れ模様のように、私の心は乱れています。こうなったのは誰のせいでもない、あなたのせいなのですよ。

※「しのぶもぢずり」・・・陸奥国信夫郡(福島県福島市)で産した、乱れ模様に染めた布のことです。

修辞法:「陸奥のしのぶもぢずり」は「みだれ」の序詞、「しのぶもぢずり」「染め」は縁語。

 

 
④『逢ふことの 絶えてしなくは なかなかに 人をも身をも 恨みざらまし』
 

作者:中納言朝忠

意味:もしあの人と愛し合うことが全くなかったなら、あの人の冷たさや、わが身の辛さを恨んだりすることもなかっただろうに。

 

 
⑤『君がため 惜しからざりし 命さへ 長くもがなと 思ひ(い)ぬるかな』
 

作者:藤原義孝

意味:あなたに逢うためなら、死んでも惜しくないと思っていた命ですが、あなたに逢えた今では、いつまでも長くあって欲しいと思うようになったものです。

 

 
⑥『嘆きつつ ひとり寝(ぬ)る夜の 明くる間は     いかに久しき ものとかは知る』
 

作者:右大将道綱母

意味:あなたが来てくださらないのを嘆きながら、ひとりで寝る夜の明けるまでが、どんなに長いものか、あなたはご存じですか。きっとご存じないでしょうね。

 

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⑦『忘れじの 行く末までは かたければ     今日をかぎりの   命ともがな』
 

作者:儀同三司母

意味:あなたが「いつまでも忘れないよ」とおっしゃるそのお言葉を、これから先もずっと変わらないとはとても信じられません。ですから、私はそうおっしゃってくださる今日を最後に死んでしまいたいものです。

 

 
⑧『やすらは(わ)で 寝なましものを 小夜更けて かたぶくまでの 月を見しかな』
 

作者:赤染衛門

意味:あなたが来てはくださらないものと分かっていれば、ためらうこともなく寝てしまったでしょうに。来るとおっしゃるから、あなたをずっとお待ちして、とうとう西の山に沈もうとする月を見てしまったことですよ。

 

 
⑨『音に聞く 髙師の浜の あだ波は かけじや袖の ぬれもこそすれ』
 

作者:祐子内親王家紀伊

意味:うわさに高い高師の浜の、きまぐれに立つ波のように、浮気で有名なあなたのお言葉は、心にかけますまい。うっかり心にかけたら、あとで涙で袖をぬらすことになるでしょうから。

※「高師の浜」・・・大阪府堺市から高石師にかけての浜のことです。

修辞法:「音」「高師(髙し)」「波」「かけ」「ぬれ」は縁語。

 

 
⑩『瀬を早み 岩にせかるる 滝川の われても末に 逢は(わ)む(ん)とぞ思ふ(う)』
 

作者:崇徳院

意味:川瀬の流れが早いので、岩にせきとめられた急流が、ひとたび分かれても、のちにはまたひとつになる。それと同じように、たとえ今は恋しい人と別れても、また必ず逢おうと思う。

※「滝川」・・・急流のことです。

修辞法:「瀬を早み岩にせかるる滝川の」は「われても末に逢はむ」を導く序詞、「瀬」「せか」、「滝川」は縁語。

 


 
⑪『玉の緒よ 絶なば絶えね ながらへ(え)ば 忍ぶることの 弱りもぞする』
 

作者:式子内親王(恋)

意味:私の命よ、絶えるなら絶えてしまえ。このまま生きながらえていると、たえ忍ぶ力が弱くなってしまい、自分ひとりの心に秘めている思いが、外に表れてしまいそうだから。

修辞法:「緒」「絶え」「ながらへ」「弱り」は縁語。

 

 
⑫『われは(わ)もや 安見児(やすみこ)得たり 皆人の 得がてにすといふ(う) 安見児得たり』
 

作者:藤原鎌足

意味:私は安見児を妻にしたよ。人がみんな手に入れることができないと言うあの安見児を妻にしたよ。

※「安見児(やすみこ)」・・・采女(特別に選ばれて天皇に仕える若く美しい女性)で、当時天皇の許可なく采女と結婚することはできなかったため、めったにない幸運に大喜びした歌です。

 

 
⑬『信濃なる 千曲(ちくま)の さざれ石も 君し踏みてば 玉と拾はむ(ん)』
 

作者:東歌

意味:信濃の(今の長野県あたり)の千曲川の小さな石でも、あなたが踏んだのなら宝石と思って拾いましょう。

 

 
⑭『多摩川に さらす手作り さらさらに なにそこの児の ここだかなしき』
 

作者:東歌

意味:多摩川でさらす手織りの布のように、さらにさらに、どうしてこの娘が、こんなにも愛しくてならないのだろう。

※武蔵国(今の東京都、埼玉県など)の民謡であり、若者たちは多摩川で布を洗っている少女たちをこの歌で誘ったとも言われています。

 

 
⑮『見渡せば 向かつ峰(お)の上(え)の 花にほ(お)ひ(い) 照りて立てるは 愛(は)しき誰(た)が妻』
 

作者:大伴家持

意味:見渡すと、向こうの岡に咲く花のように、なまめかしく美しい姿で立っているのは、誰の愛しい妻であろうか。

 

 
⑯『明日香河 淵は瀬になる 世なりとも 思ひそめてむ(ん) 人は忘れじ』
 

作者:よみ人知らず

意味:飛鳥川の淵が一日で瀬になってしまうように、何もかもが変わりやすい世の中です。ですが、一度この人をと愛しはじめた人を、私は決して忘れたりはしないでしょう。

※「明日香河」・・・奈良県の飛鳥地方を流れる飛鳥川のことです。

※「淵」は川の水が深くよどんでいるところで、その反対を「瀬」と言い、川の流れが早いところを言います。

 

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⑰『ほととぎす 鳴くやさ月の あやめ草 あやめも知らぬ 恋もするかな』
 

作者:よみ人しらず

意味:ほととぎすがほら鳴いている、この五月のあやめ草よ。そのあやめ(ものごとの道理)もわからない夢中の恋をするよ。

修辞法:「ほととぎす鳴くやさ月のあやめ草」が「あやめ」を導く序詞。

 

 
⑱『恋ひ(い)恋ひ(い)て 逢へ(え)る時だに 愛(うつく)しき 言(こと)尽くしてよ 長くと思は(わ)ば』
 

作者:大伴坂上郎女

意味:恋しく恋しく思い続けてきて、やっと会うことができた、その時だけでも優しい言葉をたくさん言ってください。二人の関係が長く続くと思うのなら。

 

 
⑲『思ひつつ 寝(ぬ)ればや人の見えつらむ(ん) 夢と知りせば 覚めざらましを』
 

作者:小野小町

意味:想いながら寝たから、あの人が夢に出てきたのでしょう。

もし、それが夢だと知っていたなら、目を覚ましたりはしなかったのに。

 

 
⑳『色見えで うつろふ(う)ものは 世の中の 人の心の 花にぞありける』
 

作者:小野小町

意味:花であれば、色が変わっていくのははっきりと目に見えるものだが、目に見えずに変わっていくものは、世の中の人の心という花であるよ。

修辞法:見立て(「人の心」を「花」に見立てている)、「色」「うつろふ」「花」が縁語。

 


 
㉑『結ぶ手の しづくににごる 山の井の あかでも人に 別れぬるかな』
 

作者:紀貫之

意味:山の清水は、すくいあげるてのひらからこぼれ落ちるしずくで、すぐに濁り、飲み足りない。その清水のように、私は心残りのあるまま、あなたとお別れしましたよ。

※作者が志賀寺(今の滋賀県大津市にあったお寺)にお参りをした時、道中で知り合いの女性に会ったのに、あまり話せないまま別れてしまいこの歌を送ったようです。

修辞法:「結ぶ手のしづくににごる山の井の」は「あかでも」を導く序詞。

 

 
㉒『つれづれと 空ぞ見らるる 思ふ(う)人 天降(あまくだ)り来む(ん) ものならなくに』
 

作者:和泉式部

意味:なんとなく物悲しい気持ちで空を眺めている、愛しい人が天から降りてくるわけもないのに。

※男性が女性の元を訪れる「通い婚」だった当時は、女性はいつも待ってばかりいました。どんなに愛し合っていても、女性としては不安はつきもの。そんな状況の中で詠まれた和歌です。

 

 
㉓『もの思へ(え)ば 沢の蛍も わが身より あくがれ出(い)づる たまかとぞ思ふ(う)』
 

作者:和泉式部

意味:思い悩んでいると、この水辺を飛びかっている蛍も、私の体から出た魂かと思ってしまいます。

※この歌は、恋人に捨てられた作者が京都の貴船神社にお参りした時に、御手洗川のほとりに、蛍が飛び交っている様子を見て詠んだという詞書がついています。

 

 
㉔『黒髪の みだれもしらず うちふせば まづかきやりし 人ぞ恋しき』
 

作者:和泉式部

意味:黒髪が乱れているのに気がつかず横になると、まずは手で髪をかきのけてくれた人が恋しくなることだよ。

 

 
㉕『桐の葉も 踏み分けがたく なりにけり かならず人を 待つとなけれど』
 

作者:式子内親王

意味:桐の落葉がつもって、通りにくくなるほどになってしまったなあ。必ずいらっしゃると思って、人を待っているというわけではないのですが。

修辞法:「本歌取り」(本歌は「わが屋戸は 道もなきまで 荒れにけり つれなき人を 待つとせし間に」)

 

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㉖『なにとなく 君に待たるる ここちして 出(い)でし花野の 夕月夜(ゆうづくよ)かな』
 

作者:与謝野晶子

意味:なんとなくあなたが待っていてくださるような気がして、秋の草花な咲き乱れる野原に出てきました。その野原は、美しい夕方の月に照らしだされています。

 

 
㉗『小百合さく 小草(おぐさ)がなかに 君まてば 野末にほひ(い)て 虹あらは(わ)れぬ』
 

作者:与謝野晶子

意味:百合の花が咲いている草の中で、あなたを待っていると、野のはてがほのかにそまって虹が出てきました。

 

 
㉘『それとなく 紅き花みな 友にゆづり そむきて泣きて 忘れ草つむ』
 

作者:山川登美子

意味:気が付かれないように、華やかな恋を友達に譲って、私は二人に背を向けて想いを忘れようと忘れ草を摘んでいます。

※この歌に詠まれている「友」とは、与謝野晶子のことで、二人は歌においても、そして恋においてもライバルであり親友でした。

 

 
㉙『薄紙の 火はわが指を すこし灼き 蝶のごとくに 逃れゆきたり』
 

作者:斎藤史

意味:薄い紙を燃やした火は、私の指をほんの少し焼いて、まるで蝶のように逃げていきました。指にかすかな痛みだけを残して。

 

 
㉚『ヒヤシンス 薄紫に 咲にけり はじめて心 ふるひ(い)そめし士日』

作者:北原白秋

意味:ヒヤシンスの花が、薄紫に咲いた。誰かに対して、はじめて心がときめいた日もヒヤシンスの花が咲いていたなあ。

※「ヒヤシンス」・・・春から夏にかけて、薄紫、紅、黄、白などの花を咲かせます。

 


 

一言で「恋の歌」と言っても、恋の形は様々ではありますが、切なく悲しい歌も多くあったように感じます。

紹介した①から⑪は、有名な「百人一首」にも収められている作品を、また、㉖から㉚は明治時代以降の短歌を取り上げました。

誰かを好きになり、心を通わせることができても、相手の気持ちが分からなくなって不安になったり、せっかく好きな人の夢を見ていたのに目覚めてしまって悔しい思いをしたり、言葉や表現方法は違っても現代の私達にも十分共感でき、気持ちを代弁しているように感じたりする素晴らしい歌ばかりだったのではないでしょうか。


「恋」の短歌(和歌)を通して、その時代を生きた人々の生活を学んだり、自分自身の恋愛や生き方を見つめてみるのもいいものですよね。

 

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