枯山水は、日本庭園の様式のひとつです。
美しさや静けさ、穏やかさから、そこにいるだけで心が癒されるような気持ちになる枯山水ですが、どういうものなのかをご存知ない方も多いのではないでしょうか?
今回は、枯山水の意味と模様、岩、石が何を表しているのか、などについて解説します。
枯山水の意味と由来とは?
読み方は「かれさんすい」です。
枯山水とは、水を一切使わずに山水の景色を表現する庭園様式のひとつで主に石や砂のみで山水を表現しています。
ごくわずかですが、苔などの植物を用いる場合もあります。
別名、
仮山水(かさんすい)
故山水(ふるさんすい)
乾泉水(あらせんすい)
涸山水(かれさんすい)
ともいいます。
枯山水という言葉が出てくる最古の記録は、平安時代(794年~1185年)に橘俊綱(たちばなのとしつな)によって編集された日本最古の庭園書である「作庭記(さくていき)」だといわれています。
作庭記の中に、
『池もなく遣水もなき所に石をたつる事あり。これを枯山水となづく。その枯山水の様は、片山のきし、或野筋などをつくりいでて、それにつきて石をたつるなり。』
という記述があります。
現在は「枯山水」というと庭園様式のひとつを指しますが、作庭記では「池も水もない場所に石を置くことを『枯山水』という」ということで、庭園の石の置き方のことをいっていたようです。
日本庭園を造るには広い土地と池や泉など水が使える場所が必要だったため、財力をもつ権力者でないと作れませんでした。
しかし、室町時代(1336年~1573年)の応仁の乱(1467年~1477年)によって権力者も経済的に苦しくなったため、狭い土地でも作れ、水を必要としない枯山水が広まったと考えられています。
その後、枯山水は禅宗の寺院の庭を中心に発展を遂げました。
禅宗では座禅や瞑想など心を落ち着けて一切の邪念を払って無になることが重要な修行とされています。
石や砂の配置や組み合わせによって仏教的な世界観や宇宙観を表現する枯山水の庭園は心を落ち着かせる空間であるため、禅の修行の場としてふさわしかったことから、枯山水だけの独立した庭園として発展していったのです。
枯山水の模様は何を表しているの?
白砂に描かれた模様のことを「砂紋(さもん)」または「箒目(ほうきめ)」といい、水の流れを表しています。
さまざまな種類がありますのでいくつかご紹介します。
紋 | 表現 |
青海波紋 (せいかいはもん) |
無限に広がる波を表現しています。 |
流水紋 (りゅうすいもん) |
流れる水を表現しています。 |
水紋 (すいもん) |
一滴の水が落ち、そこから広がる波紋を表現しています。 |
うねり紋 | 高くうねった波を表現しています。 |
立浪紋 (たつなみもん) |
荒ぶる波を表現しています。 |
この砂紋が、川に見えたり大海に見えたり雲海に見えたり・・・人によって解釈はさまざまですが、水を使わないのに水を感じさせるのが枯山水の特徴です。
また、白砂は白いので、色の対比で石の形状や曲線を鮮明に浮き上がらせる効果があります。
その他、土ぼこりを防いだり、雑草を生えにくくするなどの効果もあります。
枯山水の岩、石は何を表しているの?
岩や石は宗教的な世界観や宇宙観、さまざまな風景を表現しています。
複数の石や岩を組み合わせることが多く、組み合わせることを「石組」といいます。
石組の代表的な種類をいくつかご紹介します。
須弥山(しゅみせん)
須弥山とは、仏教で世界の中心にそびえる山とされており、仏が住む聖なる山で仏教では重要なシンボルです。
大きな石で須弥山を、その周辺に小さな石・低い石を並べた石組で表現します。
三尊石(さんぞんせき)
「三尊」とは、三人の仏のことで、三人の仏に見立てて3つの石を置き、庭の守護とします。
3つの石は大きな石をメインに、その脇に小さめの石を添える石組です。
大きな石を「弥勒菩薩(みろくぼさつ)」
左右の小さめの石を「文殊菩薩(もんじゅぼさつ)」と「普賢菩薩(ふげんぼさつ)」に見立てます
他にも、大きな石を「阿弥陀如来(あみだにょらい)」
左右の小さめの石を「観音菩薩(かんのんぼさつ)」と「勢至菩薩(せいしぼさつ)」に見立てたり、複数の組み合わせがあります。
上の須弥山の画像は左右に小さい石があるので三尊石ともいわれています。
蓬莱山(ほうらいさん)
蓬莱山とは、道教の思想で不老不死の仙人が住む理想郷とされています。
大きな石で蓬莱山を、その周辺に長寿の象徴である亀や鶴に見立てた石を組み合わせて表現します。
上の画像では、左奥が蓬莱山、手前が亀、右奥が鶴を表現しています。
岩や石の配置は、どの部屋からもバランスよく見えるよう計算されていたり、特定の場所からしかすべての岩や石が見えなかったり、縁側や窓から見るのが一番美しい配置になっていたり、計算されて配置されています。
枯山水がとくに有名なのは、世界文化遺産でもある京都の龍安寺です。
「龍安寺の石庭」と呼ばれています。
龍安寺では大小あわせて15個の石が配置されており、七、五、三に分かれているように見えることから「七五三の庭」と呼ばれれています。
これは、陰陽五行思想(いんようごぎょうしそう)がもとになっており、奇数は陽の数なので縁起が良いと考えられ、三つの奇数をとって七五三としています。
また、その配置が川を渡る虎の親子に似ていることから「虎の子渡しの庭」と呼ばれたりもします。
龍安寺の石庭は、どの位置から眺めても必ずどこかの1つの石が見えないように配置されていることでも有名です。
枯山水を見ていると、心静かに過ごすことができます。
模様や岩、石に「これはこういうことを表現している」という決まりがなく、先入観を持たずに、自分が思うように解釈すればいいそうです。
砂紋は、定期的に引き直したり、天候や動物(鳥や猫など)が歩いたことなどで崩れたら引き直すのですが、同じ模様を作るよう心がけても、人によって出来が違うそうです。
今目の前に見えるものを感じるだけではなく、作った人の様子を想像するのも楽しいかもしれませんね。
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