赤と白の衣装に身を包み、穏やかな雰囲気で参拝客に接してくれる「巫女」
普段の生活では接することがないので、神秘的な印象を持ったり、幼い頃に憧れを抱いた人は少なくないのではないでしょうか?
そんな巫女になるためにはなにか条件があるのでしょうか?
また、男性の巫女はなんというのでしょうか?
今回は、巫女についてわかりやすく解説します!
巫女とは?
読み方は「みこ」または「ふじょ」です。
「神子(みこ)」
「舞姫(まいひめ)」
「御神子(みかんこ)」
と呼ぶこともあります。
「巫女」は古来より存在していたとされ、「古事記(こじき・712年)」や「日本書紀(にほんしょき・720年)」にも巫女の話が登場します。
中でも有名なのが、天岩戸(あまのいわと)伝説に登場する「天鈿女命(あめのうずめのみこと)」です。
天岩戸という洞窟に天照大御神(あまてらすおおみかみ)が隠れ、世界が暗闇に包まれてしまったときに、天照大御神を洞窟から出そうと考えた他の神々は、洞窟の外でどんちゃん騒ぎをしました。
その時、天鈿女命が舞い、神々が大喜びし、そのにぎやかな様子が気になった天照大御神が洞窟から出てきて世界に光が戻ったというものです。
また、歴史上の人物では邪馬台国を治めていたとされる「卑弥呼(ひみこ)」も巫女として有名です。
卑弥呼は口寄(くちよせ)といって、自らに神を憑依させ神託(しんたく・神の意をうかがうこと)を受けて他の人に伝えたり、天候を操ったり、占いや祈祷をしていたといわれており、政治的に高い地位を持っていたと考えられています。
卑弥呼の時代以降も、巫女は口寄や占い、祈祷、天候を操るなどをしていたと考えられており、医者がいなかった時代には、祈祷して病気を治したり、疫病の流行を止めたと言われています。
平安時代(794年~1185年)には、巫女は口寄せや占い、祈祷などのほかに、神楽を舞っていたと考えられており、中世以降(平安時代後期から戦国時代)には、巫女が神楽を奉納するのが恒例となったようです。
しかし、明治時代(1868年~1912年)になると、神社や祭祀(さいし・神や祖先を祀ること)の根本的な見直しがされ、巫女による神託や祈祷などが禁止されました。
そのため、神託や祈祷などをする巫女はほぼ廃業してしまったのですが、神職のサポートという立場で巫女を雇用する神社が現れました。
そして、現在は神社に勤務し、神職のサポートや、神事で神をまつるための舞や歌である「神楽(かぐら)」を奉納する女性のことを「巫女」と呼んでいます。
また、神社だけではなくお寺にも「巫女」がいます。
神仏習合によって神社の境内にお寺が建てられたり、お寺に神道の神様が祀られたりして神道と仏教は深く関わっていく中で、お寺にも「巫女」がいる状態になったといわれています。
男性の巫女はなんという?
昔から巫女はほとんどが女性でしたが、巫女と同じように口寄せや占いなどをする男性もいたようです。
そのような男性を
「巫(かんなぎ)」
「男巫(おとこみこ)」
「巫覡(ふげき)」
などと呼びました。
また、現在の「巫女」は口寄せや占いなどせず、神職のサポートや神楽を奉納する女性のことを指しますが、その反対・男性版は「禰宜(ねぎ)」と呼びます。
禰宜は、神職のひとつです。
神職には階級や役職があり、
「宮司(ぐうじ)」は、神社の長であり、責任者
「禰宜(ねぎ)」は、宮司を補佐する役割
「権禰宜(ごんねぎ)」は、一般的な神職
というふうになっています。
禰宜は、宮司をサポートするという意味合いから「巫女の男性版」と考えるようです。
しかし、禰宜は女性が就くこともできるため、厳密には男性だけではないのですが、一般的には「巫女の男性版=禰宜」と考えるようです。
巫女と禰宜の違いは以下の通りです。
●性別
巫女は女性しか就けません。
禰宜は男性も女性も就くことができます。
●神職かどうか
巫女は神職ではありません。
禰宜は神職です。
●誰をサポートするのか
巫女は神職をサポートします。神職とは宮司、禰宜、権禰宜のことです。
禰宜は宮司をサポートします。
巫女になる条件とは?
基本的には、巫女になるための年齢制限や資格はありません。
しかし、
「未婚女性しか巫女になれない」
「清らかな少女しか巫女になれない」
と言う人が多く、
「既婚者は巫女にはなれない」
「年齢も20代後半くらいまでしか巫女になれない」
と思っているという方もいらっしゃるようです。
これはどうしてかというと、「斎王(さいおう)」または「斎皇女(いつきのみこ)」という制度が関係しているようです。
「斎王」または「斎皇女」とは、伊勢神宮または賀茂神社に巫女として奉仕し、天皇に代わって天照大御神にお仕えする皇室の未婚の内親王(皇族女子の称号の一つ)のことで、飛鳥時代(592年~710年)から約600年続いた制度です。
神にお仕えするため、恋愛など男女の交わりは許されず、巫女としての役目を終えてからも生涯独身を貫いた方もいらしたようです。
そのため、他の神社でも巫女は未婚の若い女性が好ましいとされ、神社によっては男性との交際経験がない女性しか巫女になれないということもあったそうです。
斎王の制度が無くなった後も「巫女は未婚女性」という考え方は続き、現在も採用条件としている神社もあります。
そのため「巫女は結婚できない」と考える人もいるようです。
基本的には巫女になるための年齢制限や資格はありませんので、年齢制限を設けていない神社もあり、既婚者の巫女も、高齢の巫女もいます。
また、神社で働く巫女には、一般的な正社員とアルバイトのような区分がありますので、以下にご紹介します。
本職巫女
本職ということで、いわゆる「正社員」と考えるとわかりやすいです。
本職巫女は、神社に縁がある人や、神職の家族や近親者などが就くことが多く、求人は少ないそうです。
そのため代々巫女の家系の人が多いようです。
本職巫女は20代後半で定年を迎えるケースが多く、定年後は衣装の色で区別されたり、業務内容が定年前の巫女と違ったりします。
また、既婚者が巫女に就くこともあります。
巫女の衣装は一般的に赤い袴と白い小袖ですが、既婚者は濃紺の袴や深緑の袴など、色の違う袴で区別することがあります。
しかし神社によって採用条件や求人方法、定年の年齢、衣装などがさまざまなので一概にはいえません。
助勤(じょきん)巫女
いわゆる「アルバイト」と考えるとわかりやすいです。
「短期巫女」ともいいます。
年末年始やお祭など、繁忙期に臨時のアルバイトとして採用される巫女です。
神楽を奉納することはありません。
お寺でも、アルバイトやパートとして、年末年始など人手が必要な時に「巫女」を雇っていることもります。
業務内容や衣装が本職巫女と区別されることも多いようですが、神社によってさまざまですので一概にはいえません。
神事や祭りの巫女
規模の大きな神社の場合は、その神社に勤務する本職の巫女が神楽などを奉納します。
規模が小さな神社の場合は勤務している巫女がいないため、神事やお祭りがあるときだけ、その神社の氏子(うじこ)である少女が巫女として、神楽などを奉納することが多いようです。
氏子とは、その地域の氏神(うじがみ)を信仰する人たちのことです。
氏神とは、その人が住んでいる地域を守っている神様のことです。
巫女は英語でなんという?
「巫女」は英語で「shrine maiden」といいます。
Shrine=神社
Maiden=未婚女性、乙女
また、日本語の「巫女」をそのまま「Miko」「Miko-san」と言っても通じる場合が多いようです。
3月5日は巫女の日?
毎年3月5日は巫女の日です。
3月5日が巫女の日なのは「3(み)月5(こ)日」という語呂合わせから来ています。
しかし、誰かがこの記念日を制定したとか、どこかの機関に認定されているというわけではないようです。
巫女の日には、インターネットやSNS上で「巫女」のコスプレやイラストなどの画像をアップロードして盛り上がるようですよ。
普段あまり接することのない巫女さんは、神秘的で謎が多く、誰でもなれるわけではない・・・と思っていましたが、特別な条件はないのですね。
しかし、厳格に年齢制限を設けている神社もありますし、未婚女性だけ、茶髪やピアスは禁止という神社もあります。
巫女の採用条件や仕事内容は神社によってさまざまですので、巫女として働きたいと考えている人は希望勤務先の条件を調べてみてくださいね!
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