神社仏閣(神社とお寺)へ行ったとき、柱や門などにびっしりと名前が書いてある紙が貼られているのを見かけたことはありませんか?
あの紙は、「千社札」といわれるものなのですが、わざわざ自分の名前が書いてある紙を貼るのはどのような意味があるのでしょうか?
千社札の意味や、なぜ神社やお寺に貼られているのかについて解説します。
千社札の意味とは?
千社札の読み方は「せんじゃふだ」です。
千社札とは、 神社仏閣に参拝したことを記念して柱や天井などに貼り付けるお札です。
長方形のお札に自分の名前や住所、屋号(やごう・一門、一家の称号のこと)が書かれています。
「千社札」の「千」は、具体的な数字の「1000」ではなく「たくさんの」や「多くの」という意味で、「千社」とは「たくさんの神社仏閣」ということになります。
つまり、「千社札」とは「たくさんの神社仏閣に納めるお札」ということになります。
江戸時代(1603年~1868年)に神社仏閣を参拝した証を残し自分の名前を残すことでご利益をいただこうという考えが庶民の間に広まり、風習となったそうです。
なぜ神社や仏閣に貼られているの?
現在も四国八十八カ所や西国三十三所などのお寺を「札所(ふだしょ)」と呼ぶように、もともとお札を納めるのはお寺が対象だったようです。
そして、お参りをした際に、自分の住所、年齢、同行者名を記した木のお札を納めてお参りの証としていました。
神社でもお札が収められるようになったのは、江戸時代(1603年~1868年)に稲荷信仰(いなりしんこう)が大流行したためだといわれています。
稲荷信仰とは、稲荷神を信仰するものです。
稲荷神は、「稲荷大明神(いなりだいみょうじん)」や「お稲荷様(おいなりさま)」とも呼ばれ、五穀豊穣、商売繁盛、家内安全、交通安全、諸願成就の神様として広く信仰されています。
稲荷神社の総本社は京都の伏見稲荷大社ですが、全国各地に稲荷神社があり、江戸時代には何度か飢饉が起ったことから人々は五穀豊穣を願っていくつもの稲荷神社を参拝しました。
そして、お寺をお参りするのと同じように、お参りをした証としてお札を納めるようになったのです。
そのうち、次第にいろいろな神社仏閣をお参りする「千社参り(せんじゃまいり)」または「千社詣(せんじゃもうで)」という風習が広まりました。
そして、その際に奉納される木の札を「千社札」と呼ぶようになったといわれています。
もともと木札だった千社札ですが、紙の札を貼るようになったのは江戸時代中期だといわれています。
江戸時代中期の奇人として知られる「天愚孔平(てんぐこうへい・1733年~1817年)」は、江戸近郊の神社仏閣を参拝した際、記念として壁や柱に自分の名前を落書きしていたそうです。
しかし、参拝するたびに落書きをすることが面倒になり、名前を書いた札を大量に作って貼るようになったそうです。
それを見た人々が真似をするようになり、紙の千社札を貼ることが流行したそうです。
そのため、千社札がびっしりと貼られている神社仏閣は、全国各地から参拝者が訪れているという証にもなっていたようです。
千社札はもともと紙に手書きをするシンプルなものがはじまりですが、次第に木版刷りが普及し、浮世絵の技法を取り入れた豪華なものが作られるようになりました。
そして、神社仏閣に貼るだけではなく、愛好者の間では互いの札を交換するなど、趣味としての意味合いが強くなっていったそうです。
現在でも、愛好者の間で交換会が行われており、伝統的な木版刷りの千社札のほかに、ステッカーの千社札も多く出回るようになり、趣味として収集している人も多くいるようです。
千社札は禁止されているの?
近年は、ルールを守らない人が多いため、千社札を禁止している神社仏閣も増えているようです。
勝手に貼らずに、まずは許可をもらいましょう。
千社札を貼る時に気を付けることは?
千社札を貼る際は以下のことに気をつけましょう。
人の千社札の上に貼ってはいけない
ご利益をいただく目的もあるため、上から貼ることはマナー違反とされています。
墨の単色刷りのみを貼る
さまざまな色を使った派手なものや、必要以上に個人情報を書いているもの、なにかの宣伝になるようなものは避けましょう。
植物性の糊を使用して貼る
昔は続飯(そくい)というご飯粒をつぶして作った糊で貼っていました。
しかし近年、ステッカーが普及したことや、合成糊を使ったものが多く、神社仏閣の木造建築を痛めているそうです。
千社札は神社仏閣がはがすこともあるため、そのときにはがしやすく木造建築を傷つけない糊を使いましょう。
違法行為になっていないか確認
多くの神社仏閣は、その建物自体が国や地域の重要文化財や、指定文化財になっています。
そこに千社札を貼るのは、文化財保護法違反にあたります。
しっかり確認しましょう。
いかがでしたでしょうか?
江戸時代に庶民の間で流行った千社札ですが、現在は多くの神社仏閣では好ましくない行為ととらえられているようです。
文化財保護法違反で、
「史跡名勝天然記念物・重要文化財の場合は、5年以下の懲役もしくは禁錮または30万円以下の罰金」
となっていますが・・・それでも、貼る人が後を絶たないそうです。
しかし、千社札を収集したり、交換会に参加することはなんの問題もありません。
自分の千社札を作ったら自分の持ち物に貼って楽しむといいですね!
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コメント
コメント一覧 (1件)
千社札は寺院としては迷惑行為として捉えています。
寺院に確認もとらずに貼る方は本当にやめてほしいですね