日本庭園でよくみかける「ししおどし」
水の流れる音と共に、時々「コーン」という音が聞こえてきますが、その音は、驚いたり不快感を抱くものではなく、心地よく感じたり、リラックスできる音です。
ではそのししおどしの音にはどんな意味や効果があるのでしょうか?
ししおどしの歴史や由来、その仕組みについてわかりやすく解説します。
「ししおどし」とは?
「ししおどし」は正式には漢字で「鹿威し」と書きます。
ほかに、
「鹿脅し」
「獅子脅し」
「獅子威し」
と書くこともあります。
竹筒の中央付近を支点として支え、竹筒の片側の先端を斜めに切りそこに水を引き入れます。
竹筒の水が満杯になると、水の重みで竹筒が頭を下げ水がこぼれ、軽くなった竹筒が元に戻る際に、逆側の先端が下に置かれた石などを勢いよく叩き、音が鳴る仕組みになっています。
この仕組みのことを「添水(ぞうず)」といいます。
「ししおどし」の歴史は?
ししおどしの起源は京都の「詩仙堂(しせんどう)」というお寺だといわれています。
詩仙堂は江戸時代(1603年~1868年)の1641年に、徳川家の家臣だった「石川丈山(いしかわじょうざん)」が隠居生活をするために建てた山荘で、現在は曹洞宗のお寺になっています。
詩仙堂は山のふもとにあったため、夜中に鹿や猪が頻繁に出没していました。
その鹿や猪を追い払うために「ししおどし」が考案され、農作物が荒らされたりする被害が減ったといわれています。
「鹿を威して追い払う」ことが「鹿威し」という名前の由来です。
もともとは鹿や猪を追い払うために作られた「ししおどし」ですが、竹が石を叩く音は隠居生活を送る石川丈山の慰めになりました。
石川丈山は庭園設計に精通しており、京都府京都市の「渉成園(しょうせいえん)」や京都府京田辺市の「酬恩庵(しゅうおんあん)」など、丈山が手掛けた庭には「ししおどし」が設置されるようになり、いつしか全国に広まったといわれています。
どんな意味や効果があるの?
もともと「ししおどし」は、田畑を荒らす鹿や猪などを追い払う意味がありました。
しかし、音に驚いていた動物たちも次第に慣れますし、学習能力があるため「音がするだけで人間はやってこない」ということを学んでしまいます。
しかし、その音は、人にとっては、驚いたり、不快感を抱くものではなく、むしろ、心地よく感じる音であることから、鹿や猪を追い払う目的ではなく、風流を楽しむという意味で各地の庭園で取り入れられるようになりました。
普段、様々なことを考え、休み暇もなく働いている現代人が、ししおどしの音に耳を傾け、流れる水の音、竹が石を叩く音を聞くことで、疲れを癒やし、リラックスしたり、リフレッシュする効果が期待できるといわれています。
ししおどしの音で、鹿や猪を追い払っていた時代もあったのですね。
昔は、現在のように騒がしい音がしている時代ではなかったでしょうから、静かな野山で「コーン」と竹が石を打つ音が聞こえたら、びっくりしていたのかもしれません。
ししおどしの音は、疲れを癒し、リラックス効果が期待できるそうですから、もし聞く機会があったら、ぜひ耳を傾けてみてくださいね!
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