
「野球」と「ベースボール」は同じスポーツのことですが、漢字で表記する「野球」が一般的ですよね。
では、他のスポーツはどうでしょう?
サッカーやバレーボール、ハンドボールなど、多くのスポーツはカタカナ表記が一般的ですが、漢字で表すとどう書くのでしょうか?
今回は、スポーツの漢字表記をご紹介します。
なぜ漢字表記になったのか?
スポーツの名前を漢字表記にするようになったのは明治時代(1868年~1912年)~大正時代(1912年~1926年)に西洋のスポーツが日本に伝わって来たときです。
英語のままだと理解しずらいので、英語を日本語に言い換える必要がありました。
また、当時の新聞の限られたスペースで情報を詰め込む際、英語をカタカナ表記するよりも漢字にしたほうが文字数が少なく済みました。
「ベースボール=野球」
「テニス=庭球」
という風に訳されたのです。
ほかにも漢字表記になったスポーツがありますので、後ほどご紹介します。
また、昭和になると、戦時中に敵国の言葉を使うことが禁止され、漢字表記をするようになったスポーツもあります。
敵国の言葉は「敵性語(てきせいご)」といいます。
たとえば、サッカーやラグビーなどがその例ですが、後ほどご紹介します。
野球については、戦前から「野球」と漢字表記されていたスポーツです。
しかし、野球は敵国アメリカの国技とされていたこともあり、野球そのものを禁止されるのを避けるために競技団体自らが英語を排除し、競技中の言葉を以下のように日本語に言い換えていました。
- プレイボール=始め
- ストライク=よし1本
- ストライク2(ツー)=よし2本
- ストライク3(スリー)=よし3本
- セーフ=よし・安全
- アウト=ひけ・無為(ぶい・むい)
- ボール=だめ1つ・悪球(あっきゅう)
- フォアボール=一塁へ
- ファウル=圏外
- デッドボール=死球(しきゅう)
- タイム=停止
- ホームラン=生還
- グローブ・ミット=手袋
- バント=軽打
- バッテリー:対打機関
- ホームチーム=迎戦組(げいせんぐみ)
- ビジターチーム=往戦組(おうせんぐみ)
- ゲームセット=試合終了
など
中でも、選手、コーチ、監督は戦争の影響を大きく受けて以下のように言い換えられました。
●選手=戦士・選士
野球を「戦争」と結び付け、「戦士」として戦場に送り出す意味合いがありました。
「選士」は戦時中の戦意高揚を目的に作られた言葉です。
●コーチ=監督
●監督=総監督・主将
コーチを「監督」に変更し、従来の監督は全体の指揮官ということで「総監督・主将」となりました。
これは、選手を戦士にしたのと同じく野球を「戦争」と結び付け、「戦い」に見立てたからです。
また、プロ野球の球団名も以下のように言い換えていました。
●大阪タイガース=阪神軍
現在の阪神タイガースです。
●東京セネタース=翼軍(つばさぐん)⇒大洋軍(たいようぐん)⇒西鉄軍
戦時中に経営母体が変わったため、球団名も変更されました。
現在の北海道日本ハムファイターズです。
大洋軍は、大洋ホエールズ(現在の横浜ベイスターズ)とは無関係です。
●イーグルス=黒鷲軍(くろわしぐん)⇒大和軍(やまとぐん)
戦時中に経営母体が変わったため、球団名も変更されました。
1943年に解散しており、現在の東北楽天ゴールデンイーグルスとは無関係です。
漢字表記がないスポーツ
敵性語については法律などで禁止されたわけではなかったので、すべてのスポーツが漢字表記になったわけではありません。
また、世界中にスポーツの数は200以上あるといわれており、そのほとんどはカタカナ表記です。
漢字表記のないスポーツは数えきれないほどありますので、一部だけご紹介します。
●マラソン
●レスリング
●スキー
●フィギュアスケート
●フットサル
●サーフィン
●ボブスレー
●カーリング
●リュージュ
●スケートボード
●セーリング
●カバディ などなど
漢字で表記が一般的なスポーツ
国際的なスポーツとなった日本発祥の剣道や柔道は、外国でもそのままで通じるので漢字表記です。
●剣道・・・kendo
●柔道・・・judo
●相撲・・・sumo
●空手・・・karate
●柔術・・・jujitsu
このように、日本発祥のスポーツは漢字表記が一般的です。
しかし、ゲートボールは1947年(昭和22年)に日本で考案された日本発祥のスポーツなのですが一般的にはカタカナ表記です。
ゲートボールの漢字表記については後ほど紹介します。
また、野球、卓球、水球のように、外国発祥のスポーツでも、日本では漢字表記のほうが認知度が高いものもあります。
野球
国際的には「ベースボール」といいます。
野球の「野」は自然のままの広い平らな地を、「球」はボールを意味しています。
「野」でボールを使って競技をするので「野球」と書きます。
卓球
国際的には「テーブルテニス」といいます。
卓上でボールを使って競技をするので「卓球」と書きます。
強豪国である中国が発祥と思ってしまいますが実はインド発祥です。
水球
国際的には「ウォーターポロ」といいます。
水中でボールを使って競技をするので「水球」と書きます。
戦後になると敵性語という考え方が無くなり、国際化が進んだことや呼びやすさなどを理由に「サッカー」や「テニス」のようにカタカナ表記が定着しました。
現在は、カタカナ表記が一般的なスポーツでも、部活動などでTシャツや旗に「○○高校排球部」や「△△高校送球部」のように漢字表記で書くこともあります。
排球・送球についてはこのあとクイズ形式でご紹介しています。
カタカナ表記のスポーツの漢字表記!
それではカタカナ表記の人気スポーツの漢字表記を見ていきましょう!
戦前から漢字表記のスポーツと、戦時中に漢字表記になったスポーツ、戦後に日本に広まって漢字表記があるスポーツを分けて紹介します。
漢字表記から何というスポーツなのか名称を考えてみましょう!
その後、少しスペースを空けて答えを書いています。
戦前から漢字表記のスポーツ
先ほどご紹介した「野球」「卓球」「水球」も、戦前から漢字表記です。
蹴球(しゅうきゅう)
答え:サッカー
ボールを足で蹴って競技をするので「蹴球」と書きます。
庭球(ていきゅう)
答え:テニス
テニスはもともと庭で行われていたそうです。
庭でボールを使って競技をするので「庭球」と書きます。
排球(はいきゅう)
答え:バレーボール
漢字の「排」には手で押し出すという意味があります。
相手のコートにボールを手で打ち返すことから「排球」書くという説や、他にも「排」には列をなすという意味もあり、選手が列を作って並んでいる姿を表しているという説もあります。
籠球(ろうきゅう)
答え:バスケットボール
籠球の籠はかごと読みます。
昔、バスケットボールは籠にボールを入れて点数を競う競技だったことから「籠球」と書きます。
羽球(うきゅう)
答え:バドミントン
羽のついたシャトルという球を打ち合う競技なので「羽球」と書きます。
拳闘(けんとう)
答え:ボクシング
拳(こぶし)を使って闘う(たたかう)競技なので「拳闘」と書きます。
送球(そうきゅう)
答え:ハンドボール
現在のハンドボールは7人制でスピーディにゴールを決める競技ですが、昔は11人制で戦術的なパス回しを連続してゴールを目指していたので「送球」と書きます。
足ではなく手で行うサッカーだと想像するとわかりやすいですね。
塁球(るいきゅう)
答え:ソフトボール
語源ははっきりしませんが中国語が由来だそうです。
野球はベースボールなので、直訳すると、塁球と書くはずですがソフトボールが塁球なのはおもしろいですよね。
避球(ひきゅう)
答え:ドッジボール
ボールが当たるのを避ける競技なので「避球」と書きます。
英語でdodgeballと表記し、dodgeには「避ける、かわす」という意味があります。
撞球(どうきゅう)
答え:ビリヤード
「撞」という漢字は「突く」を意味があり、ボールを突く競技なので「撞球」と書きます。
氷球(ひょうきゅう)
答え:アイスホッケー
氷の上でボールを使った競技をするので「氷球」と書きます。
杖球(じょうきゅう)
答え:ホッケー
杖(スティック)を使ってボールをゴールに入れる競技なので「杖球」と書きます。
アイスホッケーとの大きな違いは競技をする場所が、ホッケーは芝生、アイスホッケーは氷上というところで、他に人数や競技場の広さ、ルールなども違います。
芝生で行うホッケーなので「グラスホッケー」や「フィールドホッケー」と呼ぶこともあります。
ホッケーのあとに、ホッケーとラグビーのルールを元にして、アイスホッケーが誕生しました。
ホッケーはアイスホッケーより歴史が古いのですね!

十柱戯(じゅっちゅうぎ)
答え:ボウリング
10本のピンを倒す競技なので「十柱戯」と書きます。
板球(ばんきゅう)
答え:クリケット
野球の原型となったスポーツといわれており、板状のバットでボールを打つので「板球」と書きます。
1チーム11人で、2チームが攻撃と守備にわかれて得点を競う競技で、ボールを板状のバットで打って走るなど、野球に似ている部分があります。
クリケットは、イギリス発祥のスポーツで、日本では知名度は低いですが、世界の競技人口は1億人以上で、バスケットボール、サッカーに次ぐ人気のスポーツです。

戦時中に漢字表記になったスポーツ
以下のスポーツは、戦時中に外国語が敵性語として禁止されていたことからこれらの漢字が当てられたそうです。
闘球(とうきゅう)
答え:ラグビー
闘っているように見える激しい競技なので「闘球」と書きます。
打球(だきゅう)
答え:ゴルフ
「孔球」と書くこともあります。
「打球」も「孔球」も「だきゅう」と読みます。
戦時中に外国語が敵性語として禁止されていたことからこれらの漢字が当てられたそうです。
クラブでボールを打って競技をするので「打球」
穴(孔)にボールを入れることから「孔球」と書きます。
洋弓(ようきゅう)
答え:アーチェリー
弓を使う競技として弓道(きゅうどう)が日本にはあるので、弓道と区別するために、西洋から伝わった弓を使う競技ということで「洋弓」と書きます。
鎧球(がいきゅう)
答え:アメリカンフットボール
鎧(よろい)のようなプロテクターをつけて競技をするので「鎧球」と書きます。
戦後に広まった漢字表記があるスポーツ
門球(もんきゅう)
答え:ゲートボール
先ほども説明したように、ゲートボールは戦後の日本発祥のスポーツです。
門(ゲート)に球(ボール)を通す競技なのでカタカナの「ゲートボール」の方が簡単で覚えやすく、定着しました。

棒網球(ぼうもうきゅう) または 袋球(たいきゅう)
答え:ラクロス
網のついた特殊な棒を使ってボールをゴールに入れる競技なので「棒網球」、または、網の部分が袋のように見えるので「袋球」と表記されます。
ラクロスは、男子と女子でルールや道具が異なります。
男子は1チーム10人、女子は1チーム12人で、棒の先に網のついた「クロス」と呼ばれるスティックでボールを奪い合い、ゴール入れた得点を競います。
男子は相手選手をクロスで叩いても良いため、ヘルメットの着用が義務付けられていますが、女子は相手選手への接触は認められていません。

籐球(とうきゅう)
答え:セパタクロー
漢字の由来は「籐(とう)」というヤシ科の植物から作ったボールを用いるからという説が有力です。
セパタクローは別名「足のバレーボール」といわれており、競技の様子はバレーボールを足で行うと想像するとわかりやすいです。
バレーボールのようにネットを境にボールを打ち合うのですが、腕や手を使うことは禁止されています。

スポーツの漢字表記、いかがでしたか?
ゲートボールは日本発祥のスポーツなのにカタカナ表記が一般的で、「門球」と書くなんて知らなかった人も多いのではないでしょうか。
漢字を見るだけでなんとなく想像できるスポーツもあれば、なぜその漢字が使われているのかわからないものもあって面白いですね!
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コメント
コメント一覧 (1件)
スポーツの名前を漢字表記する理由が敵性語だからという理由が悲しいですね。
しかし例外もあって、昔の海軍はむしろ英国かぶれなくらい英語を日常使っていたそうです。
「ネイビーはスマートネスをモットーとする」などと言う訳の解らない訓示があったそうですからw