東国三社参りというものがあります。
関東の有名な神社をお参りするものですが、どのようなものなのでしょうか?
初めてでも安心してお参りできるよう、東国三社参りのルールや正しい順番とルート、ご利益やお守りをご紹介します。
東国三社参りとは?
読み方は「とうごくさんしゃまいり」です。
ほかに、
- 東国三社詣(とうごくさんしゃもうで)
- 東国三社巡り(とうごくさんしゃめぐり)
などの呼び方もあります。
東国三社とは、以下の三社のことです。
- 茨城県鹿嶋市の「鹿島神宮(かしまじんぐう)」
- 茨城県神栖市の「息栖神社(いきすじんじゃ)」
- 千葉県香取市の「香取神宮(かとりじんぐう)」
「東国三社参り」はこれら三社を参拝することです。
東国三社参りの由来とは?
江戸時代(1603年~1868年)に三重県の伊勢神宮を参拝する「お伊勢参り」が流行しました。
関東以北の人々がお伊勢参りの禊(みそぎ)のために東国三社をお参りするようになりました。
禊とは、穢れを落とし、体を洗い清めることです。
お伊勢参りの帰りに東国三社をお参りすることで、心身の穢れを最後にしっかり落とし、清められた心身で日常に戻る意味合いがあり、東国三社をお参りすることを「お伊勢参りのみそぎ参り」や「下三宮参り(しもさんのみやまいり)」と呼んで親しまれていたそうです。
現在、東国三社参りは、お伊勢参りと同じご利益があるといわれており、関東屈指のパワースポットとして知られています。
東国三社参りは「国譲り神話」が由来です。
古事記(こじき・712年)や日本書紀(にほんしょき・720年)に次のように記されています。
天照大御神(あまてらすおおみかみ)は、神々が住んでいる天上の国「高天原(たかまがはら)」を治めていました。
また、地上の国「葦原中国(あしはらのなかつくに)」は、大国主命(おおくにぬしのみこと)が治めていました。
ある時、天照大御神は「地上の国は、自分の子孫が治めるべきだ」と考え、交渉のために大国主命のところへ何柱(神様の数え方は柱(はしら))もの神を派遣しましたが、大国主命は派遣された神々を巧みにかわし、交渉は成立しませんでした。
そして、最後に派遣された神々が大国主との交渉に成功しました。
(※最後に派遣された神々については後ほど説明します。)
大国主命は「国を譲る代わりに立派な宮殿を立てて、そこに住むことを許してほしい」と条件を出し、出雲の国(現在の島根県出雲市)の海岸に立派な宮殿が立てられました。これが出雲大社の起源といわれています。
こうして、大国主命から地上の国が譲り受けた天照大御神は、地上を治めるため孫の瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)を地上に送りました。
瓊瓊杵尊が高天原から地上へ降り立ったことを「天孫降臨(てんそんこうりん)」といいます。
最後に派遣された神々は古事記と日本書紀では異なります。
古事記では、
- 武甕槌大神(たけみかづちのかみ)
- 天鳥船神(あめのとりふねのかみ)
日本書紀では、
- 武甕槌大神(たけみかづちのかみ)
- 経津主大神(ふつぬしのかみ)
が派遣されたことになっています。
武甕槌大神は共通していますね。
そして、これらの神々が、東国三社の御祭神(ごさいじん・祀られている神様)になっています。
- 武甕槌大神・・・鹿島神宮の御祭神
- 天鳥船神・・・息栖神社の御祭神
- 経津主大神・・・香取神宮の御祭神
このように、東国三社は神話に深く関わりのある神様が祀られており、古来より特別な神社として信仰されているのです。
また、武甕槌大神と経津主大神は同一視されることもあります。
【初めてでも安心】東国三社参りのルール、東国三社参りの正しい順番とルート
東国三社参りには特別なルールはありません。
一日で三社を巡っても良いですし、別々の日に巡っても良いです。
また、3つの神社を巡る順番も特に決まりがなく、どこの神社から巡っても問題ありません。
ですが、最初に鹿島神宮を参拝するのが良いといわれています。
その理由は、「鹿島立ち」という言葉が関係しています。
「鹿島立ち」という言葉は、鹿島神宮の御祭神である武甕槌大神が国譲りを成功させたことにあやかり、防人(さきもり)や武士が鹿島神宮に旅の無事を祈願してから旅立ったことが由来といわれています。
国譲り神話では、大国主命との交渉は主に武甕槌大神が行っていたため、武甕槌大神は国譲りの中心的な神とされています。
防人とは、異国からの防衛のために主に九州地方へ行くことになった兵士のことです。
「鹿島立ち」には「旅立つこと」「門出」「新しいことへの挑戦」などの意味があります。
このことから鹿島神宮を「物事を始めるのに良い場所」と考え、最初に参拝する人が多いのです。
二番目、三番目をどちらの神社にするかの決まりはありませんが、神話を考慮して鹿島神宮→息栖神社→香取神宮の順で巡る人が多いです。
まず、鹿島神宮に最初に参拝するのは、国譲りを成功させた中心的神の「武甕槌大神」が御祭神であることや、「鹿島立ち」という言葉が由来です。
そして、三社はそれぞれ
- 鹿島神宮=出発
- 息栖神社=中継点
- 香取神宮=締めくくり
という意味合いがあります。
二番目に息栖神社を参拝するのは、国譲りの際に先導役をしたとされている「天鳥船神」が御祭神なので、中継点とされているからです。
また、三社の位置関係から鹿島神宮と香取神宮の途中で参拝するとスムーズに回れます。
香取神宮を三番目に参拝するのは、鹿島神宮と対をなす重要な神社なので、三社の締めくくりとしてふさわしいからです。
「対をなす」と言われている理由は以下の通りです。
●鹿島神宮の武甕槌大神と香取神宮の経津主大神が一緒に派遣されたこと
●鹿島神宮の武甕槌大神と香取神宮の経津主大神が同一視されることがあること
●どちらも神武天皇の時代に創建された古い歴史を持つ
●どちらも地震を起こす大鯰(おおなまず)を鎮めるとされる「要石(かなめいし)」があり、鹿島神宮は大鯰の頭を押さえ、香取神宮は尻尾を抑える。

要石(鹿島神宮)

要石(香取神宮)
東国三社のご利益は?
それぞれの神社のご利益は以下の通りです。
鹿島神宮
由緒:
神武天皇(じんむてんのう・初代天皇)が東征の途中で窮地に陥った時、武甕槌大神の韴霊剣(ふつのみたまのつるぎ)によって救われたことに感謝し、武甕槌大神を祀るために創建されたといわれています。
日本全国に約600社ある鹿島神社の総本社です。
御祭神:
戦いや勝利、武道の神様である武甕槌大神です。
ご利益:
勝負運、決断力、厄除け、必勝祈願など
息栖神社
由緒:
天鳥船神は国譲りの後に息栖神社のある海辺の日川(現在の茨城県神栖市)に留まり、応神天皇(おうじんてんのう・第15代天皇)の時代に神社が創建され祀られたといわれています。
御祭神:
主祭神(しゅさいじん)は、境界や道の神様である久那戸神(くなどのかみ)です。
主祭神とは、祀られている複数の神の中で、最も重要な神のことです。
今回の国譲りに縁のある天鳥船神は主祭神に次ぐ神として祀られています。
ほかの御祭神として、交通や航海の神様である、航海の安全や漁業の守り神である住吉三神(すみよしさんじん)も祀られています。
ご利益:
厄除け、招福、交通安全、海上守護など
香取神宮
由緒:
神武天皇(じんむてんのう・初代天皇)の時代に、香取連(かとりのむらじ)という一族が創建したといわれています。
香取連は経津主大神の子である「天苗加命(あめのなえますのみこと)」の子孫であり、香取神宮に経津主大神を祀りました。
全国約400社の香取神社の総本社です。
御祭神:
武道の神様である経津主大神です。
武甕槌大神と同一視されることもあるため、古事記には名前が登場しません。
ご利益:
勝運、家内安全、良縁など
東国三社のお守り
東国三社はそれぞれの神社で「学業」「交通安全」「厄除け」などいろいろなお守りを取り扱っていますが、特別なお守りとして「東国三社お守り」というものがあります。
「東国三社お守り」は、三社をお参りすることで完成するお守りで、最初にお参りした神社で授与していただきます。
※お守りは神様から授かるものと考えますので、「授与」といいます。

東国三社お守り
東国三社お守りは三角柱の形をしており、三角柱の三面のうち、最初の神社の面にはすでに社紋(神社の紋章)シールが貼られています。
その後お参りする二つ目、三つ目の神社で社紋シールを授与して貼ったらお守りの完成です。
「東国三社お守り」が完成すると東国三社のご利益すべてを受けられると信じられており、「大願成就」のご利益があるといわれています。
「大願成就」は、大きな願いが叶うという意味です。
「大きな願い」は具体的には「人生をかけるような夢や目標」を指し、
- 受験や資格試験の合格
- 就職や転職の成功
- 起業や開業の成功
- 大きなプロジェクトの成功
- 長期間にわたって取り組んできた夢を叶えること
- 病気や怪我が治ること
などです。
東国三社参りのルート
ここでは、巡る人が多い鹿島神宮→息栖神社→香取神宮のルートをご紹介します。
1.徒歩で行く場合
鹿島神宮から息栖神社までは約10㎞、徒歩で約2時間です。
息栖神社から香取神宮までは約15㎞、徒歩で約3時間です。
徒歩だと時間がかかりますし、長い距離を歩くことになって大変です。
車(レンタカー)や公共交通機関を利用したほうが良いでしょう。
2.車(レンタカー)で行く場合
鹿島神宮から息栖神社までは、車で約25分です。
息栖神社から香取神宮までは、車で約30分です。
いずれの神社も無料の駐車場があります。
3.公共交通機関を利用する場合
公共交通機関での移動方法は複数ありますが、一般的なものをご紹介します。
鹿島神宮に行くには?
以下の交通機関を利用できます。
順番 | 公共交通機関 |
① | JR鹿島線に乗車 |
② | JR鹿島線「鹿島神宮駅」で下車 |
③ | 徒歩約10分で鹿島神宮に到着 |
鹿島神宮は365日24時間参拝が可能です。
お守りやお札などをいただく授与所の営業時間は8:30~16:30です。
御朱印をいただく祈祷殿・御朱印所の営業時間は8:30~16:30です。
所用時間は、参拝するだけなら15分程度ですが、境内を巡ったりお守りや御朱印をいただく場合は1時間~2時間程度かかります。
鹿島神宮から息栖神社への移動
公共交通機関での移動方法は主に2通りあります。
●関東鉄道バスを利用する場合
順番 | 公共交通機関 |
① | 鹿島神宮から関東鉄道バス「鹿島神宮駅」バス停まで徒歩約10分 |
② | 「鹿島神宮駅」バス停で乗車して、「息栖小学校前」バス停まで約30分 |
③ | 「息栖小学校前」バス停で下車 |
④ | 息栖神社まで徒歩約30分 |
●コミュニティバスを利用する場合
順番 | 公共交通機関 |
① | 鹿島神宮から神栖市コミュニティバス「鹿島神宮駅」バス停まで徒歩約10分 |
② | 「鹿島神宮駅」バス停で乗車して「息栖神社」バス停まで約35分 |
③ | 「息栖神社」バス停で下車 |
④ | 息栖神社まで徒歩約1分 |
息栖神社は365日24時間参拝が可能です。
お守りやお札などをいただく社務所の営業時間は8:30~16:00です。
御朱印をいただく社務所の営業時間は9:00~15:30です。
所用時間は、参拝だけなら10分程度ですが、境内を巡ったり、お守りや御朱印をいただく場合は30分~45分程度かかります。
息栖神社から香取神宮への移動
順番 | 公共交通機関 |
① | 息栖神社からJR成田線「小見川駅」まで徒歩約1時間 |
② | 「小見川駅」で乗車して「佐原駅」まで電車で約15分 |
③ | 「佐原駅」で下車 ※香取神宮の最寄り駅は、「香取駅」ですが、香取駅から香取神宮まではバスがなく、徒歩で約30分かかります。 隣の佐原駅で下車すればバスが出ているため、佐原駅で下車しましょう |
④ | 佐原循環バス「佐原駅」バス停から乗車して「香取神宮」バス停まで約15分 |
⑤ | 「香取神宮」バス停で下車 |
⑥ | 「香取神宮バス停」から香取神宮まで徒歩約3分 |
香取神宮は365日24時間参拝が可能です。
お守りやお札などをいただく授与所の営業時間は8:30~17:00です。
御朱印をいただく授与所の営業時間は8:30~17:00です。
所用時間は、参拝だけなら20分程度ですが、境内を巡ったりお守りや御朱印をいただく場合は1時間~1時間半程度かかります。
時刻表
電車やバスは本数が少ないですし、運行ルートや日時の変更が行われることがありますので、最新の情報をご確認ください。
鹿島神宮駅から息栖神社までのバス乗換案内 – NAVITIME
小見川駅(JR成田線 千葉・成田方面)の時刻表 – Yahoo!路線情報
循環バス、コミュニティバスを利用すると神社のすぐ近くまで行くことができますが、本数が少ないので最新の情報をご確認ください。
香取市循環バス【佐原市街地(東側)ルート】:香取市ウェブサイト
公共交通機関だけで巡るのは不便なため、東国三社巡りのバスツアーを利用するのも良いですね。
【関東随一のパワースポット】東国三社巡り日帰りバスツアー|四季の旅
東国三社参り バスツアーに関する一覧 | バスツアーならクラブツーリズム
横浜発 東国三社巡り 鹿島神宮・香取神宮・息栖神社東国三社巡り
東国三社参りがどのようなものかわかりましたね。
特別なルールや正しい順番などはありませんので、初めてだからと気負うことなく安心してお参りしてくださいね。
ひとつだけ気を付けておきたいのは、「東国三社お守り」を最初の神社で授かった後、二つ目、三つ目の神社でも社紋シールを授かるのを忘れないようにということですね!
お参りするときは他の神社と同じようにお参りの作法を守りましょう。
作法についての詳細はこちらをご覧ください。
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