日本人であれば一度はやったことがある「万歳」ですが、意味や由来をご存知ですか?
万歳には正しいやり方があるそうなのですが、どうやればいいのでしょうか?
また、似たようなものに一本締めや三本締めがありますが、どのような違いがあるのでしょうか?
今回は、万歳についてわかりやすく解説します。
万歳の意味や由来とは?
「万歳」は、 おめでたい時や嬉しい時に喜びを表現するため「万歳」を唱えつつ、威勢よく両腕を上に上げること動作のことを言います。
また、「万歳」という言葉の起源は、中国で使用されていた「千秋万歳(せんしゅうばんぜい・せんしゅうまんざい)」からきています。
「千秋」の「秋」という字は季節ではなく「年」という意味があり、千秋は「千年」という意味になります。
「万歳」の「歳」という字も「年」という意味があり、万歳は「万年」という意味になります。
このことから「千秋万歳」には「永遠」や「長寿」という意味になります。
万歳は千秋万歳の後半部分を取ったもので、中国皇帝の長寿を願ったり、祝う言葉でした。
「万歳」が日本に伝わってきたのは、奈良時代(710年~794年)ごろといわれています。
当時は「まんざい」や「ばんぜい」と発音し、天皇の長寿をお祝いする言葉として使われていました。
現在と同様におめでたい時に歓呼(かんこ・喜んで大きな声をあげること)する「万歳(ばんざい)」が使われるようになったのは、明治22年(1889年)2月11日だと言われています。
明治22年2月11日は、大日本帝国憲法が発布された日です。
それまで、日本では天皇に向かって歓呼する言葉はなく、最敬礼するだけでしたが、日本で初めて憲法が発表されるおめでたい日に、明治天皇をお迎えするときに「国民全員でお祝いをしたい。全員で声を揃えて気持ちを表す言葉はないか?」と考えました。
最初は当時の文部大臣が「奉賀(ほうが)」という言葉を提案しました。
しかし「奉賀」を連続で発すると「ほうが~ほうがぁ~ぁほうがぁ~あほうがぁ~=阿呆が!」と聞こえてしまう可能性があるので却下されたそうです。
次に候補に挙がったのが「万歳」でした。
「万歳」という言葉は、先ほど説明したように天皇の長寿をお祝いする言葉でした。
しかし「まんざい」や「ばんぜい」は発音しにくい・・・ということで、東京帝国大学の外山正和(とやままさかず)学長の「読み方を変えて『ばんざい』にしてみてはどうか?」という提案によって決定したそうです。
万歳三唱とは?
万歳三唱とは、おめでたい席で万歳を三回唱えることです。
「万歳」と一度だけ言うのではなく、三回唱えることになったのは、イギリスの皇帝を称えたり、誰かに感謝の意を表す時ときに使う英語の掛け声である「Hip Hip Hooray!」(Hoorayは応援の時の掛け声「フレー」のことです。)のように3回続けると良いのではないかという提案があったためといわれています。
しかし、当初は「万歳、万歳、万々歳」と、最後が違っていたそうです。
「万歳、万歳、万々歳」は帝国大学の和田垣健三(わだがきけんぞう)博士が提案し、明治22年2月11日に、明治天皇をお迎えするときに行うことになりました。
しかし、実際にやってみると、最初の「万歳」の声が大きかったことで馬車の馬が驚いて立ち止まってしまいました。
そのため二度目の「万歳」は小声となり、「万々歳」は言えずに終わったそうです。
その後、理由はわかりせんが、三度目に「万々歳」と言わなくなり、万歳を三回繰り返すようになったそうです。
万歳の正しいやり方とは?
万歳の正式なやり方は一般的に、 両手の手の平を内側にした状態で真上に上げるのが正しいといわれています。
手の平を前に向け、真上に上げると「降参」や「降伏」「お手上げ」の意味になってしまうからです。
しかし、実際には手の平を前に向ける所作でも間違いではないようですよ。
万歳三唱と一本締め、三本締めの違いとは?
一本締めとは、「問題なく丸くおさまる」ということを意味しており、会や行事が丸くおさまったことへの感謝として行われます。
一般的な一本締めは次のように行います。
「お手を拝借」と声かけがあり、
「いよーお」と音頭を取ったら全員で「パパパン パパパン パパパンパン」と手拍子をし、
「ありがとうございました」と唱和して拍手をして終了。
一本締めは、三本締めを簡略化したもので、上に説明した一本締めの手拍子を3回続けたものを三本締めといいます。
万歳三唱と一本締めや三本締めとの違いは、
一本締めや三本締めは「会や行事が丸くおさまったことへの感謝として」行う
万歳は「おめでたい時や嬉しいとき、喜びを表現するため」に行う
ということでしょう。
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万歳はいつの季語?
「万歳」は新年の季語です。
但し、この場合、読み方は「ばんざい」ではなく「まんざい」になり、意味も新年を祝うための祝福芸能を指します。
有名な俳句には次のものがあります。
●松尾芭蕉
『やまざとは まんざい遅し 梅の花』
「辺鄙(へんぴ)な山里には、万歳がやってくるのが遅い。今年も正月が過ぎて、梅の花が咲く頃になってようやくやってきた」という意味です。
この万歳は現在の「漫才」の語源といわれています。
平安時代(794年~1185年)に始まった祝福芸能、またはそれに従事する者を「千秋万歳(せんずまんざい)」と呼称したのが由来で、江戸時代には単に「万歳(まんざい)」と呼ぶようになりました。
そして、新年を祝うため、二人組が各家をまわってお祝いを述べ、歌ったり、舞を踊ったり、滑稽な掛け合いなどをして、正月の風物詩となっていたそうです。
もともと「まんざい」とはお正月にやってくる二人一組の芸能のことをいっていたのですね。
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