「大仏」と聞くと、「奈良の大仏」と「鎌倉の大仏」を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか?
どちらも日本の代表的な大仏ですよね。
「どっちの方が大きいんだろう?」「何が違うんだろう?」そんな疑問を抱いたことはありませんか?
今回は、奈良の大仏と鎌倉の大仏の違いを比較してみました。
奈良の大仏とは?
一般に「奈良の大仏」として知られていますが、正式には「東大寺盧舎那仏像(とうだいじるしゃなぶつぞう)」といいます。
奈良県奈良市の東大寺大仏殿のご本尊(ごほんぞん・そのお寺の信仰の対象となる仏様)です。
745年に聖武(しょうむ)天皇の発願(ほつがん・神仏に願をかけること)によって制作が開始され、752年に開眼供養会(かいげんくようえ・魂入れの儀式)が行われました。
その後、1180年と1567年に2回焼失しましたが、その都度再興され補修されていますが、一部建立当時の部分も残っています。
昭和33年(1958年)に国宝に指定されています。
鎌倉の大仏とは?
一般に「鎌倉の大仏」として知られていますが、正式には「銅造阿弥陀如来坐像(どうぞうあみだにょらいざぞう)」といいます。
神奈川県鎌倉市長谷にある高徳院(こうとくいん)のご本尊で、別名「長谷の大仏」としても知られますが、いつごろどういう目的で作られたのか史料が乏しく不明な点が多いそうです。
「吾妻鏡(あづまかがみ)」という鎌倉時代(1185年~1333年)に成立した歴史書には、1238年に大仏殿の建立が始まり、1243年に開眼供養が行われたという記述がありますが、高徳院の草創(そうそう・寺院などを初めて建てること)などははっきりとはわかっていません。
平成16年(2004年)に境内一帯が国の史跡に指定されています。
奈良の大仏と鎌倉の大仏の違い
奈良の大仏と鎌倉の大仏は以下のとおりです。
大きさ
●奈良の大仏
高さ:14.98m 台座:3.05m
●鎌倉の大仏
高さ:11.31m 台座:2.05m
重さ
●奈良の大仏
重さ:約250t
●鎌倉の大仏
重さ:約124t
材質(材料)
●奈良の大仏
奈良の大仏は何度か再興されており、その時代ごとに使った材料が異なっています。
最初に作られた時は、金メッキを施すために水銀や金が大量に使われました。
その後鎌倉時代に修復されたときには、銅が多く使われ、江戸時代(1603年~1868年)には鉛が多く使われたそうです。
●鎌倉の大仏
最初は、木造でしたがすぐに壊れてしまい、青銅で造り替えられました。
この青銅は最近の研究によって、中国銭(銅貨)が使用されたのではないかと推測されているそうです。
平安時代後期~鎌倉時代、日本では銅が不足しており、中国銭は貨幣として使うのではなく、銅製品の原料として輸入されていました。
多量に輸入できる銅は中国銭のほかにはなく、化学分析も一致することから、鎌倉の大仏は中国銭で造ったものと推測されているそうです。
宗派
●奈良の大仏
東大寺は華厳宗です。
●鎌倉の大仏
高徳院は浄土宗です。
モデルとなった仏様
●奈良の大仏
奈良の大仏は阿弥陀如来です。
阿弥陀如来とは、無限の寿命を持つことから「無量寿如来(むりょうじゅにょらい)」ともいい、限りない智慧(ちえ・正しく物事を認識し判断する能力)と、限りない命を持って、すべてのものを極楽浄土へ導くといわれています。
●鎌倉の大仏
鎌倉の大仏は廬舎那仏です。
正式には毘盧遮那如来(びるしゃなにょらい)で、一般的に「廬舎那仏(るしゃなぶつ)」と略して呼ばれています。
毘盧遮那はサンスクリット語で太陽を意味する「vairocana(ヴァイローチャナ」の音訳で、密教では大日如来(だいにちにょらい)のことを指しています。
胎内拝観ができるかどうか
胎内拝観(たいないはいかん)とは、仏像の内部・内側を見学することです。
●奈良の大仏
胎内拝観はできません。
●鎌倉の大仏
ひとり20円で胎内拝観ができます。
手の形
仏様の手の位置や形のことを仏教用語で「印相(いんそう)」といいます。
●奈良の大仏
右手は手のひらを見せるようにしており、これを「施無畏(せむい)」といいます。
人々に力を与え、畏れることのない状態を表しています。
左手は手のひらを上に向け膝の上に乗せており、これを「与願印(よがんいん)」といいます。
人々のいろいろな願いを叶えるという意味があります。
●鎌倉の大仏
脚を組み、その上に両手を組み合わせており、これを「上品上生印(じょうぼんじょうしょういん)」または「弥陀定印(みだじょういん)」といいます。
最高の悟りの状態を表しています。
螺髪(らほつ)の数
螺髪の「螺」は巻貝のことです。
知恵と徳の高さを表現していて、悟りを開いた位の高い仏様の特徴の一つでもあります。
螺髪は、昔のインドの階級の高い人たちの髪型が由来ともいわれています。
●奈良の大仏
966個(右巻き)
●鎌倉の大仏
656個(左巻き)
螺髪はひとつひとつ造られ、大仏の頭につけられたといわれ、奈良の大仏は966個を付け終わるまでに3年の月日がかかったそうです。
また、一般的に螺髪は右巻きですが、鎌倉の大仏の螺髪は左巻きになっています。
なぜ左巻きなのかは不明です。
奈良の大仏と鎌倉の大仏、比べてみるといろいろと違う部分がありますね。
調べてみないとわからないこともありますが、一目見てわかる違いがあります。
それは、大仏殿の中にあるか、屋外にあるかということです。
鎌倉の大仏も、最初は大仏殿の中に造られていましたが、なんらかの出来事によって大仏殿が失われたようです。
その出来事がなんだったのか、いつごろのことなのかは明確になっていません。
人の手によって壊されたとか、大地震や津波によって壊れてしまい、現在のように屋外になったという説があるそうですよ。
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