みなさんは、「引っ越しうどん」という風習があるのをご存知ですか?
「引っ越しそばなら知っているけど・・・」という方は多いと思いますが、引っ越しの時にお風呂でうどんを食べる風習のようです。
なぜそのようなことをするのでしょうか?今回は「引っ越しうどん」にについてくわしく解説します。
引っ越しうどんとは?
引っ越しうどんは、主に香川県西部に残る風習です。
どのような風習かというと、
家を新築して引っ越した後、年長者から順番に新しいお風呂に入って浴槽につかりながらうどんを食べてお祝いをする風習です。
冷たいうどんではなく、温かいうどんを食べます。(理由は後ほどご紹介します)
新築した時だけではなく、お風呂を新しくした時や、修理・改築した時にも、浴槽につかり、うどんを食べます。
また、その家の人だけではなく、ご近所さんを招いてお風呂でうどんを食べることもあるそうです。
基本的に新築、修理、改築の時にうどんを食べますが、特に決まりはなくご家庭によってさまざまなようです。
お風呂でうどんを食べるのはなぜ?
いつごろ始まった風習なのか、なぜお風呂でうどんを食べるのか定かではありませんが、諸説あります。
中風予防の願掛けと縁起かつぎのため
温かいお湯に浸かりながら、温かいうどんを食べることによって、「中風にならないで、太く長く生きられるように」という願掛けの意味があります。
中風の読み方は「ちゅうふう」「ちゅうぶう」「ちゅうぶ」「ちゅうふ」などです。
中風とは、脳梗塞や脳出血など、脳の血管が詰まったり、破れて出血することによって起こる後遺症で、手足のしびれや麻痺などのことをいい、脳梗塞や脳出血などそのものを指すこともあります。
食事をすると胃腸へ血液が集中し、脳や心臓への血液が減って血圧が低下します。
そのため、食事の直後に入浴すると血圧が上昇に体がついていけず、脳や心臓に負担がかかり、脳梗塞や脳卒中などになりやすいそうです。
脳梗塞や脳卒中などを防止するには入浴の直前に食事をしないほうが良いので、入浴中に食事をすれば中風防止になると考えたのではないでしょうか。
また、うどんは「太く長く生きる」という意味があり縁起が良く、新築のお風呂でうどんを食べることで縁起かつぎをし、中風予防と長生きの願いを込めたようです。
お祝いで食べるようになった
「引っ越しうどん」は具体的にいつごろ始まったのか定かではありませんが、お風呂が貴重な時代に広まった風習だといわれています。
現在は家の中にお風呂があっていつでも入浴できますが、昔はお風呂のない家や、お風呂があっても毎日湯船にお湯を張ることはなく、お風呂はたいへん貴重なものでした。
昭和40年代後半ごろまで、「家でお風呂を焚いたから入りにいらっしゃい」とご近所さんに声をかけ、よその家のお風呂に入れてもらう「もらい湯」という風習が日本各地にありました。
そんな、お風呂が貴重な時代に、お風呂が新築・修理・改築されたりすることはとてもおめでたいことです。
そしてさらに、香川県はうどんが有名な土地で、昔からお祝い事などでうどんが振舞われてきました。
そのため「もらい湯」をしているご近所の人たちにとってもお祝い事なので、ご近所さんも招いてお風呂でお祝いの意味でうどんを食べるようになったのではないかといわれています。
引っ越しうどんは、香川県だけの風習?
「引っ越しうどん」は主に香川県西部に残る風習で、他の地域にはないようです。
香川県は別名「うどん県」といわれるほど、うどんが盛んに食べられています。
気候的にも米の栽培より、うどんの原料となる小麦の栽培に向いており、瀬戸内海に面していることや遠浅の海が続くことなどから昔から塩作りも盛んでした。
さらに、香川県の小豆島では醤油が作られており、うどんを作るために必要な小麦と塩、食べる時に必要な醤油が揃っていたため、うどんが多く食べられるようになったようです。
香川県では、普段の食事でうどんを食べたり、おやつとしてうどんを食べる人が多いのですが、結婚式や新年、引っ越しなどのお祝い事でもうどんは縁起物として欠かせないものでした。
しかし現在は、香川県の若い世代では「引っ越しうどん」の風習は知っていても実際には行わない人が増えているようです。
引っ越しうどんは廃れて行っているようですが、結婚式や新年のうどんはまだ多くの人が続けているそうですよ。
お風呂に入ってうどんを食べるなんてとても不思議な風習ですね!
現在は日本各地での「もらい湯」という風習もありませんし、香川県でもご近所さんを招いてお風呂でうどんを食べることはほとんどないそうです。
時代の変化とはいえ昔ながらの風習が消えてしまうのは残念ですね。
香川県で新築の予定がある人は、ぜひ「引っ越しうどん」を試してみてみてはいかがでしょうか?
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