自分たちが子どものころに教科書で学んだ内容が、今は変わってしまった・・・というものがいくつもあります。
有名なものでは鎌倉幕府の成立年ですが、みなさんは1192年と1185年どちらで覚えましたか?
今回は、そんな昔と今の教科書で変更された点をまとめてご紹介します!
教科書の内容が変更される理由
教科書は学習指導要領をもとに作成されます。
学習指導要領とは、全国どこの地域で教育を受けても一定水準の教育を受けられるようにするためのものです。
学習指導要領は10年ごとに変更されており、教科書の内容は、小学校、中学校、高校ごとに学習指導要領を踏まえて決められています。
教科書は一般的に4年に一度新しいものが出版されるため、そのタイミングで最新の学習指導要領の内容が教科書に反映されることになっています。
教科書の変更点
常識や考え方、定義の変更、新しい発見などによって、学習指導要領が変わり、昔の教科書で教えていた内容が、今は変わってしまったものがいくつもあります。
以下にご紹介していきます。
昔:鎌倉幕府の成立は1192年
今:鎌倉幕府の成立は1185年
変わったもので有名なのは鎌倉幕府の成立年です。
昔は「鎌倉幕府ができたのは1192年なので1192(いいくに)つくろう鎌倉幕府」と覚えました。
今は「鎌倉幕府ができたのは1185年なので1185(いいはこ)つくろう鎌倉幕府」と覚えるようになりました。
1192年というのは源頼朝が征夷大将軍となった年ですが、実際に権力を握って政治を行い始めたのが1185年であり、その年を鎌倉幕府が成立した年と定義しました。
昔:踏み絵
今:絵踏み
キリスト教が禁止されていた時、キリシタンを発見するために人々にイエスキリストの絵を踏ませました。
「イエスキリストの絵を踏ませること」なので「絵踏み(えふみ)」という表現になりました。
「踏み絵(ふみえ)」という表現だと、「踏むためのイエスキリストの絵」となってしまうからです。
昔:和同開珎
今:富本銭
日本最古の貨幣は708年製造の和同開珎(わどうかいちん・わどうかいほう)といわれていましたが、687年製造の富本銭が発見されたため、現在の教科書では「富本銭(ふほんせん)」が日本最古の貨幣と書かれています。
富本銭は、平成11年(1999年)に奈良県明日香村にある飛鳥池遺跡で、作成途中の硬貨や硬貨を作る道具など富本銭に関する33点の品とともに発見されました。
昔:聖徳太子
今:厩戸王
昔の一万円札の肖像にもなった聖徳太子(しょうとくたいし)ですが、現在は厩戸王(うまやとおう)または厩戸皇子(うまやどのみこ)という名前で教科書に載っています。
「聖徳太子」というのは本名ではなく、厩戸皇子の死後に彼の功績をたたえるために付けられた名前だといわれているため、教科書では生前の名前が載るようになりました。
昔:冥王星は太陽系の惑星
今:冥王星は惑星ではない
太陽系の惑星は9つあり「水金地火木土天海冥」という語呂合わせで覚えていましたよね。
現在、太陽系の惑星は「水金地火木土天海」の8つで、「冥王星(めいおうせい)」は入っていません。
これは、平成18年(2006年)の国際天文学連合総会で「冥王星は惑星とはいえない」と決定されたためで、それ以降の教科書では太陽系の惑星は8つになりました。
しかし、冥王星が惑星かそうでないかは現在も議論されており、研究が進めば太陽系の惑星として再認定される可能性もあるようです。
昔:応仁の乱
今:応仁・文明の乱
「応仁の乱(おうにんのらん)」は、応仁元年(1467年)に起こりましたが、その3年後に「応仁」から「文明」へと年号が変わりました。
応仁の乱は、応仁元年(1467年)~文明9年(1477年)までおよそ11年間続いたことから、現在は応仁・文明の乱(おうにん・ぶんめいのらん)と呼ぶようになっています。
昔:元寇
今:蒙古襲来
文永11年(1274年)の「文永の役(ぶんえいのえき)」と、弘安4年(1281年)の「弘安の役(こうあんのえき)」を合わせて昔は「元寇(げんこう)」と呼んでいました。
現在は「蒙古襲来(もうこしゅうらい)」といいます。
「元寇」というのは明治時代以降に定着した言葉だといわれており、当時の文献には「蒙古襲来」「蒙古合戦」「異国合戦」と書かれていたためです。
昔:リアス式海岸
今:リアス海岸
「リアス(rias)」はスペイン語で「深い入り江」という意味があり、浸食によってできた多くの谷が、地盤の沈降や海面の上昇によって沈水し、複雑に入り組んだ海岸地形を指します。
昔は「リアス式海岸」としていましたが、「リアス」そのものが特徴的な地形を意味していることから「式」は不要で「リアス海岸」が適切な表現なのではないかといわれるようになり、平成18年(2006年)ごろから「リアス海岸」と表記するようになりました。
昔:リンカーン
今:リンカン
第16代アメリカ合衆国大統領であるエイブラハム・リンカーンは、英語で「Abraham Lincoln」です。
昔は「Lincoln」を「リンカーン」と表記していましたが、グローバル化が進む中でより現地の発音に近い表現にしようということで、平成に入ってから「リンカン」と表記するようになりました。
ただ、新聞や一般書籍などでは「リンカーン」と表記されることが多いため、試験などでは「リンカーン」と「リンカン」どちらも正解にしているそうです。
昔:「ルーズベルト」
今:「ローズベルト」
第26代アメリカ合衆国大統領セオドア ・ルーズベルト(Theodore Roosevelt)
第32代アメリカ合衆国大統領フランクリン・ルーズベルト(Franklin Delano Roosevelt)
は、昔の教科書では「ルーズベルト」と表記していましたが、現在は「ローズベルト」と表記されます。
理由は、
ルーズベルトはオランダ系移民の姓であったことからオランダの発音に近い表現にしたこと
世界史の研究書や辞典で「ローズヴェルト」という表記が多いこと
などから、平成12年(2000年)ごろから「ローズベルト」と表記するようになりました。
義務教育では「ヴェ」の表記を使わないため、小中学校では「ローズベルト」ですが、高校では「ローズヴェルト」と表記します。
また、新聞や一般書籍などでは「ルーズベルト」と表記されることが多いため、試験などでは「ルーズベルト」と「ローズベルト」どちらも正解にしているそうです。
昔:奥の細道
今:おくのほそ道
昔は「奥の細道」でしたが、松尾芭蕉(まつおばしょう・1644年~1694年)が直筆で「おくのほそ道」と書いていることから、現在の教科書では「おくのほそ道」と表記されています。
一般書籍には「奥の細道」「おくの細道」などの表記もありが、間違いというわけではありません。
昔:一番長い川はミシシッピ川
今:一番長い川はナイル川
昔は世界一長い川はミシシッピ川でしたが、ナイル川やアマゾン川などで新たな水源が発見されて長さが伸びたため、現在は世界一長い川はナイル川です。
一番長い川=ナイル川
二番目に長い川=アマゾン川
三番目に長い川=長江
四番目に長い川=ミシシッピ川
となっています。
しかし、川の地形や水源などすべてが解明されているわけではないため、今後も順位が入れ替わる可能性があります。
昔:ℓ
今:L
昔はリットルという単位は「ℓ」で小文字表記でしたが、平成23年度(2011年度)から国際基準(SI単位)に合わせて大文字の「L」に変更されました。
昔:㎏重
今:N
昔は力の単位は「㎏重」または「kgw」でした。
平成14年度(2002年度)から国際基準(SI単位)に合わせて「N(ニュートン)」に変更されました。
昔:㎞/時
今:㎞/h
昔は速さの単位は「㎞/時」でした。
平成24年度(2012年度)から国際基準(SI単位)に合わせて「㎞/h」に変更されました。
同じように「m/秒」は「m/s」に変更されています。
昔:大和朝廷
今:ヤマト王権
「大和朝廷(やまとちょうてい)」は現在の奈良県にあった3世紀後半以降の勢力を指す言葉ですが、
「朝廷は天皇や貴族による中央集権政治という意味合いが強いこと」
「当時はまだ「朝廷」という政治制度がなかったこと」
「王が豪族や民をまとめ権力を持っていたこと」
などを踏まえて「王権」という言葉に変更されました。
また「ヤマト」というカタカナ表記については、当時は「大和」「倭」「大倭」など様々な漢字表記(いずれも「やまと」と読みます)があり、現在の奈良県周辺地域を指しています。
8世紀ごろから「大和」という漢字表記の国名が使われるようになりました。
そのため、国名と混同することを避けるためにカタカナ表記になりました。
昔:天領
今:幕府領または幕領
幕府の直轄地を江戸時代は単に「御領(ごりょう)」「御領所」と呼んでいました。
直轄地とは、その時代の権力者が家来に治めさせるのではなく、権力者が直接治めた地域のことです。
江戸時代の場合、大名が治めていた地域を「藩(はん)」、江戸幕府(将軍)が治めていた地域を「直轄地」といいます。
幕府直轄地が明治政府に返還され天皇の御領となり「天朝の御領」と呼ばれるようになりました。
「天朝の御領」の略語として「天領(てんりょう)」という呼び方が生まれたことで、江戸時代までさかのぼって幕府の直轄地を「天領」と呼ぶようになり定着したため、昔の教科書では「天領」と表記されていました。
しかし、「天領」のままだと幕府直轄地なのに「天皇の御領」と勘違いしてしまうことから「幕府領(ばくふりょう)」や「幕領(ばくりょう)」という表記になりました。
昔:島原の乱
今:島原・天草一揆
肥前国島原(現在の長崎県)と肥後国天草(現在の熊本県)の領民が起こした大規模な反乱を「島原の乱(しまばらのらん)」と表記していました。
しかし、島原だけで一揆が起こったような印象を与えるため「島原・天草一揆(しまばら・あまくさいっき)」という表記に変更されました。
また、キリスト教徒による反乱という印象が強かったのですが、百姓一揆としての性質もあるため「乱」ではなく「一揆」という表記になっています。
昔:「仁徳天皇陵」
今:「大仙陵古墳または大仙古墳」
大阪府堺市堺区大仙町の仁徳天皇陵古墳を含む「百舌鳥・古市古墳群」は、令和元年(2019年)に世界文化遺産に登録されました。
昔は「仁徳天皇陵(にんとくてんのうりょう)」でしたが、平成12年(2000年)ごろから「仁徳天皇が埋葬されているかどうか確認できていない」ということで地名を使って「大仙陵古墳」または「大仙陵古墳(だいせんりょうこふん)または大仙古墳(だいせんこふん)」という表記にした教科書が増えています。
現時点では実際に誰が埋葬されているのかはわかりませんが、宮内庁は「仁徳天皇陵」と定めており、地図上でも「仁徳天皇陵」と書かれているため、「仁徳天皇陵」と載せている教科書もあります。
教科書の変わってしまった内容についてご紹介しましたが、いかがでしたか?
自分が子どものころに学んだものと違う!と驚いている人もいるかもしれません。
常識や考え方・定義が変わったり、新しい発見によって教科書の内容が更新されていくので、自分が子どものころと現在で内容が違っていても不思議ではありません。
今の教科書の内容も、数年後、数十年後には変わっているかもしれませんよ!
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