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「三密」とは密教用語だった!密教の意味とは?顕教との違いをかんたんに解説

      2020/05/28

新型コロナウイルの感染拡大を防ぐために「三密」を心がけるよう、政府や自治体が呼び掛けていますよね。

「密閉、密集、密接という三つの密を避けましょう」ということなのですが、実は「三密」とは密教用語なのをご存知ですか?

今回は「三密」や密教について調べてみました。

 


感染拡大を防ぐための「三密(さんみつ)」とは?

1.換気の悪い密閉空間

2.多数の人が集まる密集場所

3.間近で会話や発声をする密接場面

以上の「3つの密」のことを「三密」といい、新型コロナウイルスが集団(クラスター)で発生することや、感染が拡大することを防ぐ目的で呼びかけられており、3つがそろう場所は感染リスクがとても高いといわれています。

 

「三密」とは密教用語

密教用語の「三密(さんみつ)」は

1.手に諸尊(しょそん)の印相(いんそう)を結ぶ「身密(しんみつ)」

2.口に真言(しんごん)を読誦(どくじゅ)する「口密(くみつ)」、

3.心に曼荼羅(まんだら)の諸尊を観想(かんそう)する「意密(いみつ)」

の三つのことで、修行をしている人は日常生活でも三密を実践することを心がけます。

 

 

「諸尊」とは、如来(にょらい)や菩薩(ぼさつ)などの仏教上、崇めるべき存在のことです。

関連:仏の名前「如来」「菩薩」「明王」「天部」「観音」「阿修羅」「阿弥陀」の違いとは?

 

「印相」とは、一般的には「印(いん)」といい、手の指で様々な形を作ることです。

仏像などを見ると手の位置や指の形など違うことに気づくと思いますが、それぞれの印は諸尊の意思や役割、ご利益などを象徴的に表したものといわれており、印の種類は数百以上あるといわれています。

 


 

「真言」とは、仏が説く真実の言葉で、呪文のようなものと考えていいでしょう。

 

「読誦」とは、声に出して読むことです。

 

「曼荼羅」とは、密教の世界観を図で表したもので、サンスクリット語で「凝縮したもの」「完全にまとまったもの」などの意味があります。

曼荼羅を簡単に説明すると、神仏が集まっている様子や悟りの境地をビジュアル化したものです。

 


 

「観想」とは、特定の対象に向けて心を集中し、観察することです。

 

三密「身密」「口密」「意密」を簡単に説明すると

日常生活で実践する「身密」「口密」「意密」を簡単に説明すると以下の通りになります。

 

■身密

「身密」は「身体や行動についての教え」のことで、具体的には以下のような教えのことです。

 

●自分の行動を見直し、大事なものを見極める

●みんなの命を守る行動をする

●できる範囲で身体を動かす

●手を洗い身を清める

●自分勝手な行動はしない

●自分さえよければ良いという気持ちで行動しない

 

 

■口密

「口密」は「言葉や発言についての教え」のことで、具体的には以下のような教えのことです。

 

●自分の言動を見直し、正す

●感謝の気持ちを口にする

●うがいをして口を清める

●人の揚げ足を取らない

●人の悪口ばかりを言わない

 

■意密

「意密」は「心や考え方についての教えのこと」で、具体的には以下のような教えのことです。

 

●自分の心の揺れ動きを観察する

●心をありのままに見て、自分に気づく

●一度立ち止まって心を見つめる

●自分だけでなくほかの人への気配りをする

●深呼吸をして心を落ち着かせる

●心を惑わされないようにする

 

密教の意味とは?

「密教(みっきょう)」とは、秘密の教えという意味があり、信者だけに伝えられる仏教の教えのことで、真言宗や天台宗などが密教の伝統的な宗派です。

真言宗と天台宗はどちらも「密教」ですが宗派が異なり、真言宗を「東密(とうみつ)」天台宗を「台密(たいみつ)」と呼んで区別しています。

 

空海


真言宗の開祖「空海(くうかい・774年~835年)」と天台宗の開祖「最澄(さいちょう・766年または767年~822年)」は中国から密教を持ち帰り、その際、数多くの経典や法具(ほうぐ・仏教の儀式で使用する道具)が日本に持ち込まれたといわれています。

 

 

真言宗は大日如来(だいにちにょらい)をご本尊とし、基本となる経典は「大日経(だいにちきょう)」と「金剛頂経(こんごうちょうぎょう)」です。

 

大日如来


天台宗は釈迦如来(しゃかにょらい)をご本尊とすることが多いようですが特に指定されておらず、基本となる経典は「妙法蓮華経(みょうほうれんげきょう)」です。

 

如来とは「真理を悟ったもの」のことで、仏教の目標である「悟りを開いた状態」にあり、仏の中で最も位が高いとされています。

関連:仏の名前「如来」「菩薩」「明王」「天部」「観音」「阿修羅」「阿弥陀」の違いとは?

 

「大日如来」とは、宇宙の真理そのものを指し、すべての命あるものは大日如来から生まれたと考えられています。

ちなみに奈良の大仏(東大寺大仏・盧遮那仏(るしゃなぶつ))は大日如来です。

 


 

「釈迦如来」とは、仏教の開祖である仏陀(ブッダ)のことです。

 

(岐阜大仏:釈迦如来像)


密教の特徴として、「加持祈祷(かじきとう)」「灌頂(かんじょう)」などの儀式があり、これらの儀式を行うことで仏と一体になれると考えられています。

●加持祈祷・・・仏の加護を求める儀式のことで、災いの除去や病気平癒など、現世での利益を祈ります。

●灌頂・・・香水や水を頭にそそぐ儀式のことで、上の位を目指して修行をしている人が、位が上がるときや、悟りを開いたことの証として行います。

 


 

仏教の目的は簡単にいうと「成仏すること」です。

成仏とは仏教の究極の目的である悟りの境地に達すること・仏になることです。

そして、仏教の中でも密教は「人は修行をすれば生きているうちに成仏できる」と考えられています。

 


密教と顕教との違いとは?

「顕教(けんきょう・けんぎょう)」とは、仏教の教えを秘密にすることなく説き顕(あらわ)した教えのことで、密教の反対語になります。

「顕す」の意味は、「見えるようにすること」や「広く世間に知らせること」です。

 

仏教は長い時間の中で、経典の解釈や考え方の違いから宗派が数多く分かれたのですが、真言宗の開祖である空海が、密教と対比するものという意図をもって作った言葉が「顕教」だといわれています。

 

密教では、「人は修行することで生きている間に仏になれる」という教えであることはすでに説明しましたが、その境地はそこに到達した人以外はうかがい知ることのできない世界といわれています。

一方、顕教では、輪廻転生(りんねてんしょう・何度も生死を繰り返す)をしながら長い時間をかけて悟りを開いて仏になれると考えられています。

 


 

 

「密教」と「顕教」を簡単に説明すると・・・

密教・・・真理そのものである大日如来が説いた教えで、奥深い教えであるため容易に明らかにできず、厳格なルールを持って教えや作法が師匠から弟子へ伝えられるもので、非公開の部分が多く神秘的な要素が多い教えです。

顕教・・・聞く人の能力に応じて、その人に分かりやすい言葉で、釈迦如来の教えを秘密にすることなく説き顕した教えです。

 

密教のひとつである天台宗は多くの場合釈迦如来をご本尊としますので、顕教なのではないか?と思う人もいると思いますが、釈迦如来と大日如来が一体であると考えるため、顕教には含まれません。

また、天台宗では「妙法蓮華経」と同じように「大日経(真言宗の基本となる経典)」も重要だと考えているため「顕教」ではなく「密教」に分類されます。

 


 

「三密」といえば新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために心がけることですが、密教の用語でもあったのですね。

感染拡大を防ぐための「三密」と密教用語の「三密」は、全く違うものではあるのですが、普段の生活で心がけるという点では共通しているような気がしませんか?

たくさんの情報に心を乱されることなく、心の平穏を保ちながら日常生活を送るために必要なことが、密教の教えにはあるのではないでしょうか?

 

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