「二の腕のたるみが気になる」
「二の腕の筋肉がステキ!」
日常会話でよく見聞きする「二の腕」という言葉ですが、腕のどこからどこまでのことを指すのでしょうか?
また、「二」があるのなら、「一の腕」や「三の腕」があってもよさそうですが、聞きませんよね?
今回は「二の腕」の由来や「一の腕」や「三の腕」についてわかりやすく解説します。
「二の腕」は腕のどこ?
「二の腕」の読み方は「にのうで」です。
「腕」とは、肩から手の指先までのことをいい、正式には「上肢(じょうし)」と呼びます。
上肢は折り曲げられる関節を境にして以下のように呼びます。
●肩から肘まで・・・「上腕(じょうわん)」
●肘から手首まで・・・「前腕(ぜんわん)」
●手首から先・・・「手(て)」
そして、上腕(肩から肘まで)のことを「二の腕」といいます。
二の腕の由来とは?
では、なぜ「二の腕」というようになったのでしょうか?
奈良時代(710年~784年)ごろ、「腕(うで)」は手首辺りを指していました。
そして、肩から肘までを「かいな」、肘から手までを「ただむき」と呼んでいました。
しかし、いつの間にか「ただむき」のことを「うで」と呼ぶようになったそうです。
そのため、その上にある「かいな(肩から肘まで)」は「二番目のうで」ということで「二の腕」と呼ぶようになったといわれています。
ちなみに「かいな」と「ただむき」は漢字で以下のように書きます。
●「かいな」・・・「腕」または「肱」
●「ただむき」・・・「腕」または「臂」
このように「うで」「かいな」「ただむき」はすべて「腕」という漢字を使うのですね。
非常にややこしいですね。
また、「かいな」という呼び方は、「腕捻り(かいなひねり)」という相撲の技の名前で現在も残っています。
腕捻りは、相手の片腕を自分の両腕で抱え、外側に捻って倒す技のことです。
※以下のリンク先の画像をご参照ください。
外部リンク:日本相撲協会 決まり手八十二手「腕捻り」
一の腕や三の腕がないのはなぜ?
それでは「一の腕」や「三の腕」はないのでしょうか?
実は、「一の腕」と呼ばれていたことがあったそうです。
「一の腕」のことが資料として残っているのは「日葡辞書(にっぽじしょ)」です。
日葡辞書とは、安土桃山時代(1573年~1603年)にポルトガル人が作った辞書のことで、宣教師のために日本語をポルトガル語で解説したものです。
その中で「一の腕=肩から肘まで」「二の腕=肘から手首まで」と説明されており、二の腕が先ほどの説明(二の腕=肩から肘まで=かいな)と違っていたようです。
そして、さらに日葡辞書には「肘から手先までの腕=かいな」という説明もあるそうです。
先ほどの説明で「かいな」は、肩から肘まででしたのでこれも違っていますね。
まとめると以下のようになります。
●奈良時代ごろ
肘から手首まで=ただむき=腕(うで)
肩から肘まで=かいな=二の腕
●日葡辞書
肩から肘まで=一の腕
肘から手首まで=二の腕
肘から手先までの腕=かいな
この話を聞くと、日葡辞書を作る際「肘から手首まで=二の腕」としてしまったため、「二の腕があるのなら一の腕もあるだろう」と考え「肩から肘まで=一の腕」と記述したのではないか?
日葡辞書は間違えているのではないか?と思ってしまいますよね。
しかし、「日葡辞書は正しい」と考えらており、
「肩から肘までの腕=一の腕とするのが正しく、二の腕というのは誤用である」
という説が一般的になっています。
つまり、現在「二の腕」と呼んでいるところは本来は「一の腕」であり、「二の腕」は誤用として広まったというわけですね。
ちなみに、日葡辞書以外では「一の腕」と書いている資料や記述を見つけることができないそうです。
また、「三の腕」については、そういう言葉は存在せず、資料などもありません。
日葡辞書の説が正しいかどうかは不明ですが、いずれにしても「二の腕」は「肩から肘まで」を指します。
年齢を重ねると特に女性は二の腕が気になりますよね。
二の腕のたるみや筋肉の付き具合を気にする時は、「もしかしたらここは一の腕だったかもしれない」と考えると、ちょっぴり楽しくなるかもしれませんよ!
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