仏教には数多くの仏様がおられ、「如来」も仏様の一種です。
どういう意味があるのでしょうか?
如来の種類、役割、見分け方などをご紹介します。
また、如来の中で一番偉い如来は誰なのでしょうか?
今回は、如来についてわかりやすく解説します。
如来とは?
読み方は「にょらい」です。
サンスクリット語で「真理に到ったもの」「修行を完成した者」という意味の「tathāgata(タターガタ)」が語源です。
- 「タター」は「そのように」「ありのまま」
- 「ガタ」は「行った者」
という意味があります。
もともと意味は 「そのように行った者」、つまり「悟りを開き真理に到達した人」を指します。
ここで、「タター」に「如」という漢字が当てられたのは、「如」が「~のように」「そのまま」という意味を持ち、サンスクリット語の「タター」が表すニュアンスと一致するからです。
また、「ガタ」に「来」という漢字が当てられたのは、中国に伝わった際、仏は「悟りの世界に到達した者」という意味だけでなく、「衆生を救うためにこの世に来た者」としても考えられるようになったためです。
如来は、仏教の目標である悟りを開いた状態にあることを意味しているため、仏の中で最も位が高く、多くの人を救うと考えられています。
そのため、仏教徒は、如来を目標・お手本として修業をします。
如来の特徴
如来は悟りを開いているので欲がなく、衣をまとっただけの質素な姿をしています。
基本的に装飾品はなく、「螺髪(らほつ)」と「白毫(びゃくごう)」があるのが特徴です。

螺髪と白毫
螺髪の「螺」は巻貝のことで、巻貝のように渦巻状をした髪のことです。
螺髪は知恵の象徴とされています。
白毫の「毫」とは細い毛・細長い毛のことで、「白毫」は白く細長い毛という意味です。
眉間の少し上にあるほくろのようなものが白毫で、長くて白い毛が丸まったものです。
その毛を伸ばすと一丈五尺(いちじょうごしゃく・昔の長さの単位)あるといわれており、現在の単位に直すと約4.5mです。
白毫は光を放って世界を照らすといわれています。
如来の種類、役割、見分け方とは?
代表的な如来の種類と、それぞれの役割、見分け方、ご本尊となっている有名な寺社ご紹介します。
ご本尊とは、そのお寺の信仰の対象となる物(仏像や絵、掛け軸など)のことです。
今回ご紹介している寺社は、仏像をご本尊としています。
大日如来(だいにちにょらい)
大日如来はサンスクリット語で「mahvairocana(マハーヴァイローチャナ)」といいます。
- 「マハー」は「偉大な」「大いなる」
- 「ヴァイローチャナ」は「光り輝く太陽」
という意味があります。
「大いなる日(太陽)」ということで、中国で「大日」という漢字が当てられました。
「マハーヴァイローチャナ」という発音に漢字を当てたものが「摩訶毘盧遮那(まかびるしゃな)」です。
大日如来は「摩訶毘盧遮那如来」や「大光明遍照(だいこうみょうへんじょう)」などの別名もあります。
如来は基本的に衣をまとっただけの質素な姿なのですが、大日如来は装飾品をたくさんつけています。
その理由は定かではありませんが、
- 「如来はすべての仏の王だから」
- 「古代インドの王族がモデルだから」
- 「宇宙そのものを装飾品として身にまとっている」
などの説があるようです。
大日如来は、宇宙の真理そのものを指し、すべての命あるものは大日如来から生まれたと考えられており、密教の中心的存在という役割があります。
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見分け方は、胸の前で左手の人差し指を立て、その人差し指を右手で握る形にしています。
簡単に言うと、忍者の代表的なポーズのような手をしています。
この指の形を「印相(いんそう)」または「印」といいます。
仏それぞれに印相があり、手の指で様々な形を作ることで仏の意志や役割、ご利益などを表しているといわれ、種類は数百種以上あります。
大日如来をご本尊としている有名な寺社は、
- 奈良県「円成寺」
- 大阪府「金剛寺」
などです。
毘盧遮那如来(びるしゃなにょらい)
毘盧遮那如来はサンスクリット語で「vairocana(ヴァイローチャナ)」といいます。
「ヴァイローチャナ」という発音に漢字を当てたものが「毘盧遮那(びるしゃな)」です。
「ヴァイローチャナ」は「光り輝く太陽」という意味があります。
毘盧遮那如来は略して「盧遮那」や「盧遮那仏」、「遮那」などと呼ぶこともあります。
密教では大日如来(だいにちにょらい)と同一視されることもあります。
宇宙全体の真理そのもので、宇宙の中心から太陽のように世界を照らす役割があります。
毘盧遮那如来の見分け方ですが、このあとご紹介する釈迦如来とほぼ同じで、両手が広がっていて、右手の手の平を前に向け、左手の手の平を上に向けています。
毘盧遮那如来と釈迦如来を見た目だけでは見分けることは困難ですが、毘盧遮那如来は数が少なく巨大仏像として祀られています。
毘盧遮那如来をご本尊としている有名な寺社は、
- 奈良県「東大寺」
- 奈良県「唐招提寺」
などです。
釈迦如来(しゃかにょらい)
釈迦如来はサンスクリット語で「Sākya-muni(シャカムニ)」といいます。
シャカムニという発音に漢字を当てたのが「釈迦牟尼(しゃかむに)」です。
シャカムニは「釈迦族の聖人」という意味があり、仏教の開祖であるゴータマ・シッダルータを指します。
そのため、釈迦如来は「釈迦牟尼如来」「釈迦牟尼仏」「釈迦牟尼世尊」などと呼ぶこともあります。
ゴータマ・シッダルータは、インドの釈迦族の王子でした。
29歳の時に王族としての暮らしを捨てて修行をし、悟りを開いて「釈迦如来」となりました。
ゴータマ・シッダルータは、仏陀(ぶっだ・悟りを開いた人という意味)、お釈迦様、釈尊(しゃくそん)などの呼び方もあります。
仏教の起源と教えの象徴であり、人々を悟りに導く役割があります。
見分け方は、両手が広がっていて、右手の手の平を前に向け、左手の手の平を上に向けています。
仏像や絵の釈迦如来は人々を救うために説法をしている姿が一般的です。
釈迦如来をご本尊としている有名な寺社は、
- 東京都「深大寺」
- 京都府「清涼寺」
などです。
薬師如来(やくしにょらい)
薬師如来はサンスクリット語で「bhaisaiyaguru(バイシャジヤグル)」といいます。
- 「バイシャジヤ」は医薬や医療
- 「グル」は指導者や導師
という意味があります。
「医薬や医療の導師」ということで、中国で「薬師」の漢字が当てられました。
正式名称は「薬師瑠璃光如来(やくしるりこうにょらい)」といいます。
これは、薬師如来が私たちが住む世界のはるか東に位置する「東方浄瑠璃世界(とうほうじょうるりせかい)」に住んでいるからです。
東方浄瑠璃世界は、宝石の瑠璃(るり)が放つ青い光に満ちているそうです。
病気を治す仏として有名で、医療と健康の守護をする役割があります。
見分け方は、左手に薬壷(やっこ・薬を入れた壷)を持っています。
薬師如来をご本尊としている有名な寺社は、
- 滋賀県「比叡山延暦寺」
- 京都府「醍醐寺」
- 神奈川県「日向薬師宝城坊」
などです。
阿弥陀如来(あみだにょらい)
阿弥陀如来はサンスクリット語で「Amitabha(アミターバ)」や「Amitayus(アミターユス)」といいます。
アミターバ、アミターユスという発音に漢字を当てたのが「阿弥陀仏」です。
アミターバは「はかりしれない光を持つ者」「無限の光を持つ者」という意味があります。
アミターユスは「はかりしれない寿命を持つ者」「無限の寿命を持つ者」という意味があります。
無限の光を持つことから「無量光仏(むりょうこうぶつ)」
無限の寿命を持つことから「無量寿如来(むりょうじゅにょらい)」「無量寿仏(むりょうじゅぶつ)」
などの別名もあります。
阿弥陀如来は、限りない智慧(ちえ・正しく物事を認識し判断する能力)と、限りない命を持って、すべてのものを極楽浄土へ導き、人々を救済する役割があります。
見分け方は、両手の人差し指・中指・薬指のうちどれかと親指で輪を作っています。
阿弥陀如来をご本尊としている有名な寺社は、
- 京都府「平等院」
- 神奈川県「高徳院」
などです。
一番偉い如来は?
まず、仏様には、如来、菩薩、観音、阿弥陀がいますが、その中で如来が最もランクが高いといわれています。
仏様の意味やランクについての詳細はこちらをご覧ください。
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そして、如来の中でもっともランクが高いのは、宗派によって異なります。
宗派によってご本尊が異なるためで、以下のようになっています。
- 真言宗など密教系では、ご本尊である大日如来が一番ランクが高いです。
- 浄土真宗や浄土宗などでは、ご本尊である阿弥陀如来を一番ランクが高いです。
- 曹洞宗や臨済宗などでは、ご本尊である釈迦如来が一番ランクが高いです。
「如来」がどのような仏様なのか、見分け方や役割がわかりましたね。
寺社にはいろいろな仏様が描かれた絵や、仏像が祀られています。
手の形や持ち物などでそれがどの仏様なのかわかるようになると、仏教にますます興味が湧くのではないでしょうか。
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