お正月やお祭り、おめでたい日など色々なところで目にする「獅子舞」
獅子舞は、周りにいる人たちの頭を噛んでいきます。それが怖くて泣いてしまう子どもも多いようですが・・・
獅子舞が頭を噛むのは一体どうしてなのでしょうか?
今回は獅子舞の意味や由来についてご紹介します。
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獅子舞の意味とは?
獅子舞の読み方は「ししまい」です。
お正月やお祭りなど、縁起が良い日やおめでたい日に獅子頭(ししがしら)と呼ばれる被り物をかぶって舞う民族芸能です。
もともと悪魔祓い、飢饉や疫病を追い払う目的で舞っていたころから、厄払いや無病息災を願ったりする他、五穀豊穣を願ったり、祝う意味があります。
獅子舞の由来とは?
「獅子(しし)」とはライオンをもとにした伝説上の生物のことです。
紀元前3世紀にはインドのアショカ王(在位・紀元前268年頃~紀元前232年頃)が仏教を広めるために建てた石柱にライオンが刻まれており、強い霊力を持つ霊獣であり、王の権力の象徴だったといわれています。
そして、いつしかインドの遊牧民族が力の強いライオンを霊獣・神として崇めるようになり、ライオンを模した舞を踊るようになったものが獅子舞の原型と考えられています。
その後、インドから中国へ伝わり、5世紀に楊衒之(ようげんし・生没年不詳)が記した「洛陽伽藍記(らくようがらんき)」という書物には、獅子舞が演じられたという記述が残っています。
これが獅子舞の最古の記述といわれており、中国では5世紀に獅子舞が存在していたと考えられています。
獅子舞は中国から周辺各国へ伝わり、現在も東アジアや東南アジアでみられます。
日本での歴史は?
獅子舞は中国から朝鮮半島へ伝わり、日本へは612年に伝わったといわれています。
「日本書紀(にほんしょき・720年)には、612年に朝鮮半島の百済(くだら)から味摩之(みまじ)という人物がやってきて仏教とともに「伎楽(ぎがく)」を伝えたと記されています。
伎楽とは、伝統演劇のひとつで、大きな仮面をつけて演じられる無言劇です。
その演目はじめに、舞台の邪気を払う目的で「唐獅子の舞」が演じられました。
これが日本の獅子舞の由来だといわれています。
伎楽は仏教に根付いていたため、舞台だけではなく、お寺でも場を清めるために獅子舞が舞われました。

聖徳太子(しょうとくたいし・574年~622年)は仏教を広めるために伎楽にも力を入れており、奈良時代までお寺の法会(ほうえ・供養や仏教の教えを説くための集まり)で多く上演されていました。
そして、これがきっかけとなり、獅子舞が広まったっていったと言われています。

お正月に舞うようになったのは、16世紀の初めです。
起源は諸説ありますが、室町時代(1338年~1573年ごろ)後期に伊勢の国(現在の三重県)で神楽(かぐら・神様に捧げる歌や踊りのこと)の流れをくむ伊勢太神楽(いせだいかぐら)が誕生します。
伊勢太神楽は、伊勢神宮の御札を配布してまわる人たちのことで、獅子舞を舞いながら日本各地を巡っていました。
そして、お正月になると伊勢の集落を回って飢饉や疫病除けを願って獅子舞を舞ったそうです。
そのため、現在でもお正月の時期に獅子舞を舞う理由が「疫病退散や悪魔祓い」なのです。
その後、伊勢から江戸(現在の東京)へ伝わり、お正月だけではなく縁起物として祝い事や祭り事で獅子舞が定着しました。
江戸時代(1603年~1868年)の初期になると「江戸大神楽師(えどだいかぐらし)」「伊勢大神楽師(いせだいかぐらし)」といわれる団体が獅子舞を舞いながら全国をまわり悪魔祓いをしたことで、日本各地へ広まっていきました。
獅子舞の種類は?
獅子舞は、日本各地でさまざまな種類がありますが、大きく分けて二つの系統があります。

西日本を中心に全国へ広まった獅子舞は、基本的には2人以上で一匹の獅子を演じ「伎楽系(ぎがくけい)」といわれています。お正月に見られるのはこの伎楽系が多いそうです。
関東、東北地方などで主に見られる獅子舞は、基本的に1人で1匹を演じ「風流系(ふうりゅうけい)」といわれています。1人で舞い、お腹に太鼓をくくりつけて打ちながら踊るものもあります。

また、風流系では頭にかぶる動物が獅子だけではないことも特徴のひとつです。
各地域で信仰するものによって変化し、獅子以外には、鹿や牛、中国の霊獣「麒麟(きりん)」など、さまざまな動物に扮する舞が存在します。
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頭を噛むのはなぜ?
それではどうして獅子舞は頭を噛むのでしょうか?
それは獅子舞には悪魔祓いや疫病退治の意味があるので、人の頭を噛むことによって、その人についた邪気を食べてくれると考えられており、悪いことから守ってくれ、ご利益があると考えられているのです。

特に子どもの場合は、厄除けの効果が強くなるともいわれており、学力向上や無病息災、健やかな成長にご利益があるといわれています。
そして、初詣で獅子舞に頭を噛まれると、魔除けになり、一年をより良く過ごすことができると信じられています。
また、語呂合わせで「獅子が噛みつくと神が付く」という縁起かつぎの意味もあるということです。
獅子舞が有名な県はどこ?
獅子舞が有名な県をいくつかご紹介します。
香川県
香川県は「獅子舞王国」ともいわれており、およそ800の獅子舞グループがあるそうです。
香川県では秋が獅子舞のシーズンで、9月・10月は収穫や五穀豊穣のお祭りで各地の神社で獅子舞が奉納され、11月には県内の獅子舞が集う「獅子舞王国さぬき」という国内最大級のイベントも開催されています。
外部リンク:獅子舞王国さぬき2022 | 古典の日制定記念
外部リンク:獅子舞王国さぬき | Facebook
石川県加賀市
加賀市は「獅子舞の宝庫」ともいわれており、昔から伝わる100以上の獅子舞が現存しています。
獅子頭と笛や太鼓、三味線などを弾く人たち全員が中にすっぽり入ってしまう大きな獅子、おみこしで担ぐ巨大な獅子頭、地面を引きずられる獅子など、地域によって特徴のある獅子舞が見られます。
富山県
富山県は「獅子舞大国」ともいわれており、獅子舞の伝承数は1000を超え、現在活動中の獅子舞は850ほどあるそうです。
富山県では春と秋が獅子舞のシーズンで、春には豊作を祈って賑やかな獅子が集落を廻り、秋には五穀豊穣に感謝して獅子舞が奉納されます。
獅子舞は室町時代から続いています。
悪魔祓いや疫病退治はもちろんのこと、より良い一年を過ごしたいという願いは今も昔も変わりませんね。
獅子舞が近づいてくると怖がって泣いてしまう子どももいますが、その子の健やかな成長を願う親としては・・・泣いていても獅子舞に頭を噛んでもらいたいと思うのでしょうね。
初詣で獅子舞をみかけたら、ぜひ、家族全員で頭を噛まれに行きましょう!
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