怪談話によく出てくる「草木も眠る丑三つ時」という言葉。
「草木も眠るほどの遅い時間」を意味しているのですが、何時から何時までのことを指すのでしょうか?
また、なぜ幽霊が出るといわれているのでしょうか?
今回は「丑三つ時」についてわかりやすく解説します。
丑三つ時とは?何時から何時まで?
丑三つ時の読み方は「うしみつどき」です。
丑三つ時の「丑」とは、十二支の「丑(うし)」のことです。
十二支は一番目から順番に次にようになっています。
・子(ね)
・丑(うし)
・寅(とら)
・卯(う)
・辰(たつ)
・巳(み)
・午(うま)
・未(ひつじ)
・申(さる)
・酉(とり)
・戌(いぬ)
・亥(い)
十二支は「年」を表すものとして年賀状などで用いられることが一般的ですが、「時間」や「方角」などを表すためにも用いられます。
江戸時代(1603年~1868年)までは、現在のように正確に時間を計ることはなく、日の出と日の入りを基準に昼と夜を区別する「不定時法(ふていじほう)」が用いられていました。
不定時法では、
日の出から日の入りまでを「昼」
日の入りから日の出までを「夜」
として、「昼」と「夜」をそれぞれ6等分して、1日を12の時間に分けていました.
しかし、夏の間は昼間が長く、冬の間は昼間が短くなるので、一定ではありませんでした。
現在の時間に当てはめてみると、夏はおよそ5時~20時までが昼間で、冬はおよそ6時~17時までが昼間ということになります。
時間の間隔は一定ではありませんが、それぞれの時間に十二支を当てはめて表していたのです。
現在は、1日24時間なので12等分して、それぞれに十二支を当てはめています。
そして、「子の刻」「丑の刻」のように「〇の刻」と表現していました。
・子の刻・・・23時~1時
・丑の刻・・・1時~3時
・寅の刻・・・3時~5時
・卯の刻・・・5時~7時
・辰の刻・・・7時~9時
・巳の刻・・・9時~11時
・午の刻・・・11時~13時
・未の刻・・・13時~15時
・申の刻・・・15時~17時
・酉の刻・・・17時~19時
・戌の刻・・・19時~21時
・亥の刻・・・21時~23時
そしてさらに、それぞれの刻(2時間)を4等分していました。
例えば、子(ね)の場合
23時~23時半=子ひとつ
23時半~0時=子ふたつ
0時~0時半=子みっつ
0時半~1時=子よっつ
となります。
丑(うし)も同様に
1時~1時半=丑ひとつ
1時半~2時=丑ふたつ
2時~2時半=丑みっつ
2時半~3時=丑よっつ
このように、「丑三つ時」とは2時~2時半のことを意味します。
幽霊が出るといわれているのはなぜ?
「丑三つ時」に幽霊が出るといわれているのは、陰陽五行説が由来といわれています。
陰陽五行説(いんようごぎょうせつ)とは、自然界のあらゆるものを「陰」と「陽」に分け、さらに「自然界は木、火、土、金、水の5つの要素から成っている」という五行思想の考え方が結びついたものです。
陰陽五行説では、鬼が出入りする方角は北東とされ「鬼門(きもん)」と呼ばれています。
十二支は方角を表すために使用するということはすでに説明しましたが、当てはめた場合、以下のようになります。
子(陽)の方角(北・0度)
丑(陰)の方角(北北東微東・30度)
寅(陽)の方角(東北東微北・60度)
卯(陰)の方角(東・90度)
辰(陽)の方角(東南東微南・120度)
巳(陰)の方角(南南東微東・150度)
午(陽)の方角(南・180度)
未(陰)の方角(南南西微西・210度)
申(陽)の方角(西南西微南・240度)
酉(陰)の方角(西・270度)
戌の(陽)方角(西北西微北・300度)
亥(陰)の方角(北北西微西・330度)
そして、鬼門である北東は「丑(陰)」と「寅(陽)」の境目にあたり、時間でいうと3時ちょうどになります。
そのため、3時頃は鬼門が開いて死後の世界と通じ、鬼や死者などが現れる時間とされ、不吉なことや良くないことが起きたりすると考えられていました。
3時をまたぐ丑の刻と寅の刻全体(1時~5時)が良くないといわれており、陰陽五行説で「陰」である丑の刻(1時~3時)は特に良くない時間帯といわれています。
さらに江戸時代には「丑三つ時」を語呂合わせで「丑満つ時」という字に当て、言葉遊びをしていたそうです。
「丑満つ時」は「丑の方角(鬼門)の力が満ちてくる時間」という意味になり、鬼門の力が満ちて鬼や死者などが活発に動き回ると考えたのではないかといわれています。
それと合わせて、「丑三つ時」は深夜で、草や木なども寝静まるほど静かだったため、不吉で不気味なイメージが重なり、「幽霊が出る」と連想したといわれています。
丑の刻参りとは?
「丑三つ時」といえば「丑の刻参り(丑の時参り)」という呪いの儀式を連想する人も多いかもしれません。
丑の刻参りとは呪いを成就するための儀式で、丑の刻(1時~3時)に、呪いたい相手に見立てた藁人形(わらにんぎょう)を、神社の樹木に五寸釘で打ち付けるものです。
藁人形の五寸釘を打った場所と、呪いたい相手の体の同じ場所が病気になったり、怪我をしたりするといわれています。
例えば、藁人形の右手に五寸釘を打ったら、呪いたい相手の右手が病気や怪我に見舞われるということです。
丑の刻参りは、京都市の貴船(きふね)神社の伝承が由来していると考えられています。
貴船神社では、「丑の年の、丑の月の、丑の日の、丑の刻に貴船明神が降臨した」といわれており、この日時に参拝をすると心願成就するという伝承があります。
もともとは心願成就のためのものでしたが、いつの間にか陰陽五行説の「鬼門の方角は鬼が出入りする。不吉で良くない方角。」という考え方と結びついて「丑の刻は呪いの儀式をする時間」になり、「丑の刻参り」という風習が広まっていったと考えられています。
現在は、丑の刻(1時~3時)でも電気があるので明るく過ごすことができますし、深夜に活動している人もたくさんいます。
しかし、昔は夜になれば真っ暗なのが当たり前で、人間はみんな眠っていて、草や木が眠るほど静かでひっそりとしていたのです。
昔の人が鬼や幽霊が出ると思っても不思議ではなかったのかもしれませんね。
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コメント
コメント一覧 (2件)
昔の暦 時間や方角 習慣 童話 などを、昨今の頻繁に発生する地震等によって、恥ずかしながら この歳で気づいた次第です。
困難な時程スピリチュアル カルチャーでしょう。大変でした、又いつ何時災難災害が起こるやも知れません。
コメントありがとうございます!