昔は卒業式といえば「仰げば尊し」が定番ソングでしたが、最近は歌わない学校が多くなっているそうです。
どのような理由で歌われなくなってしまったのでしょうか?
また「仰げば尊し」の歌詞には、
「分かれ目」
「いととし」
「やよ」
「蛍の灯火 積む白雪」
など、馴染みのない言葉が出てきますが、どういう意味があるのでしょうか?
「仰げば尊し」の歌詞の意味(現代語訳)をご紹介します。
「仰げば尊し」とは?
読み方は「あおげばとうとし」です。
明治17年(1884年)に発表された日本の唱歌で、作詞者、作曲者はどちらも不詳です。
現在も「作詞作曲者は不詳」とされていますが、平成23年(2011年)に「仰げば尊し」の原曲と思われる曲が発見されました。
1871年にアメリカで発表された「Song for the Close of School」という曲です。
作詞はT・H・ブロスナン
作曲はH・N・D
です。
作詞のT・H・ブロスナンは、当時は学校の校長をしており、その後保険会社で活躍したといわれていますが詳細は不明です。
また、作曲のH・N・Dもどのような人物なのかは不明です。
タイトルを直訳すると「学校教育の終わりのための歌」や「終業式の歌」となり、教室や友人との別れを歌った内容の歌詞になっています。
英語の歌詞は以下のとおりです。
【1番】
We part today to meet, perchance,
Till God shall call us home;
And from this room we wander forth,
Alone, alone to roam.
And friends we’ve known in childhood’s days
May live but in the past,
But in the realms of light and love
May we all meet at last.
【2番】
Farewell old room, within thy walls
No more with joy we’ll meet;
Nor voices join in morning song,
Nor ev’ning hymn repeat.
But when in future years we dream
Of scenes of love and truth,
Our fondest tho’ts will be of thee,
The school-room of our youth.
【3番】
Farewell to thee we loved so well,
Farewell our schoolmates dear;
The tie is rent that linked our souls
In happy union here.
Our hands are clasped, our hearts are full,
And tears bedew each eye;
Ah, ‘tis a time for fond regrets,
When school-mates say “Good Bye”
和訳すると・・・
【1番】
私たちは今日別れ、また巡り合う
神の家に召されるとき、また巡り合う
この教室から私たちは旅立ち、それぞれが自らの道を行くことになるだろう
幼いころの友は記憶の中で生き続けるだろう
しかし、光と愛の御国で、人生の最後の時に私たちは再会できるだろう
【2番】
さらば古き教室、その壁の内側で私たちが集うことは二度とない
懐かしい朝の歌声、午後の讃美歌を繰り返すことも二度とない
しかし、何年もの未来にも私たちはこの愛と真実の場を思い出す
私たちの最も大切な思い出は、私たちが若き日を過ごした教室の中に
【3番】
さらば愛しい教室よ、さらば親愛なる学友たちよ
私たちの魂が仲間としてここで繋いできた絆は解き放たれた
私たちの握手で心は満たされ、目には涙があふれている
ああ、今こそ別れの時、いざ学友たちよ「さらば」と言おう
アメリカ国内では知られていない曲であり、作詞者や作曲者の経歴の詳細も不明ということで「仰げば尊し」との繋がりは現時点ではわかっていません。
今後も研究が続けられるそうです。
「仰げば尊し」の歌詞の意味(現代語訳)
「仰げば尊し」の歌詞は以下の通りです。
【1番】
仰げば尊し わが師の恩
(あおげばとうとし わがしのおん)
教えの庭にも はや幾年
(おしえのにわにも はやいくとせ)
思えば いと疾し この年月
(おもえば いととし このとしつき)
今こそ別れめ いざさらば
(いまこそわかれめ いざさらば)
【2番】
(※歌わないことが多いです)互いに 睦し 日頃の恩
(たがいに むつみし ひごろのおん)
別れるる後にも やよ忘るな
(わかれるるあとにも やよわするな)
身を立て 名をあげ やよ励めよ
(みをたて なをあげ やよはげめよ)
今こそ別れめ いざさらば
(いまこそわかれめ いざさらば)
【3番】
朝夕慣れにし 学びの窓
(あさゆうなれにし まなびのまど)
蛍の灯火 積む白雪
(ほたるのともしび つむしらゆき)
忘るる間ぞなき ゆく年月
(わするるまぞなき ゆくとしつき)
今こそ別れめ いざさらば
(いまこそわかれめ いざさらば)
歌詞には現在は使われていない言葉が含まれています。
いと疾し(いととし)
「いと」は「とても」という意味があり、「疾し」は「速い」や「早い」を意味する古語です。
つまり「いと疾し」は「とてもはやい」という意味です。
分かれ目
正しくは「別れめ」と書きます。
「~め」は「~しよう」と、決意を表す言葉です。
「今こそ別れめ」は「今別れよう!」という意味になります。
やよ
呼びかけるときの言葉で、現代語にすると「やあ」「さあ」「おい」という意味になります。
蛍の灯火 積む白雪
「蛍雪の功(けいせつのこう)」という中国の故事が由来となっています。
家が貧しかった青年が灯り用の油を買うこともできず、夏は蛍の光で本を読み、冬は雪の明かりで勉強をしたという故事で、苦労して勉強に励むことという意味があります。
「蛍雪の功」については、以下の記事をご覧ください。
関連:「蛍の光」を大晦日に歌うのはなぜ?歌詞の意味とは?海外ではなぜ新年に歌うの?
歌詞の意味を現代語すると、以下のようになります。
【1番】
仰ぎ見るほどに尊い 先生への恩
この学校に通い始めてから 早いものでもう何年も経った
思い起こせば とても早く感じた 学校での年月
今こそ別れよう! さあ、さようなら
【2番】
互いに仲良く過ごした 友への日頃の恩
卒業した後も 忘れない
自立して 世に認められ さあ励もう
今こそ別れよう! さあ、さようなら
【3番】
朝から夕方まで 慣れ親しんだ学校
苦労して勉学に励んだ(蛍のともしび 積もる白雪)
忘れることなどない これまでの年月
今こそ別れよう! さあ、さようなら
卒業式に歌わないのはなぜ?
「仰げば尊し」は明治時代から平成初期にかけては卒業式の定番の歌でしたが、現在は歌われなくなっているそうです。
そのため「仰げば尊しを歌うことは禁止されている」と思っている人もいるようですが、歌うことが禁止されているわけではなく、現在も卒業式で歌っている学校もあります。
歌われなくなった理由はいくつかあります。
歌詞が古い、難しい
歌詞に古語が含まれており、古い言葉も多く難しいです。
高校生以上になれば古文の授業で学ぶこともありますが、現代人にとっては馴染みがない言葉が多く意味が伝わりづらいためです。
歌詞が時代に合わない
2番に「身を立て 名をあげ やよ励めよ」という歌詞があります。
現代語にすると「自立して 世に認められ さあ励もう」の部分が、
・立身出世を奨励している
・軍国主義をイメージさせる
などとされ時代に合わないといわれています。
そのため、戦後は2番を歌わず、1番と3番だけを歌うことが多かったようです。
先生だけを賛美している
1番の「仰げば尊し わが師の恩」という部分が、教え子が先生を尊敬するのが当たり前で、先生だけを賛美しているような歌詞が現代の価値観とは合わないといわれています。
学校で学ぶことができるのは先生の存在だけではなく、親や友達、教育に携わる人たち、子どもを見守る地域のみなさんなど多くの存在があるので「先生にだけ恩を感じなければならないのか!」という反発もあったようです。
卒業ソングが定番になった
昔は卒業式といえば「仰げば尊し」や「蛍の光」でしたが、1980年代になると卒業をテーマにしたヒット曲が卒業ソングとして定番化していきます。
歌詞が難しい唱歌よりもヒット曲の方が卒業生たちの胸に響くため、学校によっては卒業生たちに選曲してもらうこともあるようです。
関連:卒業式の流れとは?何時から何時まで?卒業式の定番の歌ランキング!
「仰げば尊し」が、なぜ歌われなくなったのかがわかりましたね。
卒業式で歌うことが禁止されているわけではありませんが、古い歌ですから時代に合わなかったり、理解が難しいことが理由のようですね。
時代とともに卒業式のスタイルは変化していきますが、卒業生にとって思い出に残る卒業式になるといいですね。
関連:2025年(令和6年度)の卒業式はいつ?小学校・中学校・高校・大学・幼稚園
関連:卒業式の流れとは?何時から何時まで?卒業式の定番の歌ランキング!
関連:卒業式 学生服の第二ボタンの意味と由来とは?第一、第三ボタンの意味は?
コメント