「えびす講」という行事があるのをご存知ですか?
日本各地で行われている行事で、もしかしたらあなたがお住いの地域でも行われているかもしれません。
「えびす講」の意味や由来、どのような行事なのか、今年はいつ行われるのか、などについてわかりやすく解説します。
えびす講の意味や由来とは?
えびす講とは、えびす様を祀(まつ)る行事です。
えびす講(こう)の「講」は、宗教行事を行う結社のことで、行事や会合のことをいいます。
「えびす」は七福神のえびす様のことです。
七福神とは、福徳(ふくどく・幸せや財産に恵まれること)の神様として古くから信仰されている七柱の神様です。
えびす様以外の七福神は次の神様です。
●大黒天(だいこくてん)
●毘沙門天(びしゃもんてん)
●弁財天(弁才天・べんざいてん)
●福禄寿(ふくろくじゅ)
●寿老人(じゅろうじん)
●布袋(ほてい)
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えびす様は右手で釣竿を持ち、左手には大きな鯛を持っています。
「えびす」は、「恵比寿」「恵比須」「胡」「蛭子」「戎」「ゑびす」などさまざまな表記があります。
また「えびすさま」のほかに「えべっさん」「えびっさん」「おべっさん」などの呼び方があります。
えびす様は七福神の中で唯一、日本の土着の神様です。
日本神話のイザナミ(女神)とイザナギ(男神)の間に生まれた子供とされ、大漁追福(たいりょうついふく)や商売繁盛、五穀豊穣をもたらす神様です。
漁業、商業、農業の神様として信仰され、知恵を働かせて体に汗を流して働けば、えびす様が福を授けてくださると考えられています。
えびす講は多くの地域で10月20日ですが、この日になった理由は神無月が関係しているという説が有力です。
神無月には日本中の神様が島根県の出雲大社に集まるといわれているのはご存知だと思います。
しかし、日本中の神様が出雲大社へ集まると、その間、神様が不在の土地ばかりになってしまいますよね。
それでは困るということで、留守番をする神様がいて、その代表的な神様が「えびす様」なのです。
そして、留守番をしているえびす様に感謝し、五穀豊穣、商売繁盛などを祈願するのが「えびす講」の由来です。
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主に関西では1月10日に行われており「十日戎(とおかえびす)」と呼ばれています。
十日戎は、えびす講の一種です。
10月20日のえびす講は神無月が日付の由来という説が有力ですが、十日戎の場合は「えびす様が生まれた日が由来」や「御狩神事(みかがりしんじ)が由来」など諸説あります。
十日戎の詳細については以下をご覧ください。
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えびす様をご祭神(ごさいじん・祀られている神様)とする神社のことを「えびす神社」といい、総本社は兵庫県西宮市の西宮神社です。
「戎神社」「胡神社」「恵比寿神社」などさまざまな表記がありますが、「西宮神社」のように神社名に「えびす」が入らないところもあります。
西宮神社の起源は、神戸市にある和田岬(わだみさき)の沖にえびす様の御神像が出現し、それを漁師が自宅で祀っていたところ、御神託(ごしんたく・神様が自分の意志を人や物などを通じて伝えること)があり、自宅から西の方に遷して(うつして)改めてお祀りしたのが西宮神社の始まりといわれています。
西宮神社の創建は不明ですが、平安時代後期の文献に「戎(えびす)」という表記がたびたび登場していることから、それ以前に創建されたと考えられています。
2024年のえびす講はいつ?
えびす講は、旧暦の10月20日に行われていたので、俗に「二十日えびす(はつかえびす)」といいます。
そのため、
●旧暦10月20日をそのまま新暦に当てはめて10月20日に行う地域
●旧暦と新暦の一ヶ月のズレを考慮して新暦11月20日に行う地域
●10月20日や11月20日が平日の時は前後の土日に行う地域
などがあります。
ほかにも
●関西のように主に1月10日に行う地域(十日戎)
●歳の市と結びつけて新暦12月20日に行う地域
●11月23日(勤労感謝の日)に行う地域
●年に2回、10月20日と1月20日に行う地域
●4月に行う地域
など地域によってさまざまです。
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えびす講とはどんな行事なの?
えびす講では、家内安全や商売繁盛を願って、大判小判、鯛やだるまなど、たくさんの縁起物を飾った「熊手(くまで)」や「福笹(ふくざさ)」が販売されます。
「熊手」は、農作業や掃除のときの道具で、ものを掃き集めることから「福や金運を掃き込む」「福や金運を集める」として招福の縁起物となりました。
「福笹」は、笹・竹が使われており、えびす様が持っている釣り竿を見立てているといわれています。
また、竹はまっすぐに伸びるので商売繁盛にご利益があるといわれています。
熊手や福笹のほかに「福箕(ふくみ)」も販売されます。
箕(み)は、米など穀物を選別する際にゴミや殻を取り除くための農具で、「福箕」には「福をすくいとる」という意味があり、箕の中にえびす様の顔や、縁起物が入っています。
えびす講には、特別な行事食、食べ物はありません。
しかし、えびす講のお供え物をみんなで食べることがあります。
お供え物は講によって様々で、えびす様が鯛を持っているから鯛を調理したものを供えたり、旬の野菜を使ってご馳走を作って供えたり、採れたての果物を供えたりします。
えびす講は、熊手の販売や開催時期などで「酉の市(とりのいち)」と混同されてしまうこともあるようですが、「酉の市」は大鳥神社の祭礼として行われるもので、えびす講とは無関係です。
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また、えびす講と同じ日に行われるため、よく混同されるのが「誓文払い(せいもんばらい)」という行事です。
「誓文払い」は、江戸時代の風習で、京都の商人や遊女などが京都市の八坂神社の摂社(せっしゃ・神社本社に縁の深い神を祀る神社)である「冠者殿社(かんじゃでんしゃ)」をお参りし、身を祓い清めるものです。
「誓文」とは、神に誓う言葉のことで、仕事上やむを得ず嘘をついたり、騙したりした罪を払い、神の罰を免れようとするのが誓文払いです。
そして、呉服店が商売上の嘘で罰が当たらないようにと年末大売り出しをはじめたといわれており、現在、西日本では「誓文払い」は年末のバーゲンセールとして定着しています。
えびす講と同じ日で、商人が関わっている行事なので混同されやすいですが、こちらも、えびす講とは無関係です。
全国各地のえびす講
各地のえびす講は以下のとおりです。
栃木県
足利えびす講
栃木県足利市の西宮神社で、毎年11月19日、20日に行われます。
神楽が奉納され、屋台で縁起物などが販売されます。
外部リンク:足利西宮神社
桐生えびす講
群馬県桐生市の桐生西宮神社で、毎年11月19日、20日に行われます。
神楽や太鼓が奉納され、数百の屋台が境内に並び縁起物が販売されます。
高崎えびす講市
群馬県高崎市で高崎神社と高崎市内で、毎年11月第3土・日に行われます。
商店街の大売り出しや、抽選会、ウォークラリーなどが開催されます。
関連:高崎えびす講市 | 高崎市
東京都
日本橋べったら市
東京都中央区日本橋本町にある寳田恵比寿神社と周辺で、毎年10月19日、20日に行われます。
屋台が400~500軒並び、名物のべったら漬けをはじめ、飴細工や七味などが販売されます。
外部リンク:日本橋恵比寿講べったら市
山梨県
甲府えびす講祭り
山梨県甲府市の中心商店街や舞鶴城公園で、毎年11月23日に行われます。
お神輿が担がれたり、パレード、フリーマーケットなどが開催されます。
外部リンク:甲府えびす講祭り
長野県
えびす講祭・長野えびす講煙火大会
長野市岩石町の西宮神社のえびす講祭は毎年11月18日~20日に行われます。
神楽が奉納され縁起物の販売もあります。
長野えびす講煙火大会は毎年11月23日に長野県長野市の犀川河川敷で行われます。
もともとはえびす講祭にあわせて開催されたのがはじまりの花火大会で、以前は11月20日に開催されていました。
外部リンク:長野えびす講煙火大会
広島県
胡子講(えびすこう)
正式名称「胡子大祭(えびすたいさい)」は広島市中区の胡子神社で、毎年11月第3金・土・日に行われます。
福引や、縁起物の販売のほか、周辺商店街ではセールが開催されます。
外部リンク:胡子大祭(えびす講・えべっさん)
山口県
牛島恵比須祭
山口県光市牛島の恵比寿神社で、毎年4月第4日曜日に行われます。
海上保安と豊漁を祈願して行われます。
外部リンク:牛島恵比須祭
兵庫県
十日戎
兵庫県西宮市の越木岩神社で、毎年1月9日、10日、11日に行われます。
外部リンク:十日戎(商売繁盛)
京都府
十日ゑびす大祭
京都府京都市の京都ゑびす神社で、毎年1月8日~12日に行われます。
外部リンク:京都ゑびす神社【十日ゑびす大祭(通称 初ゑびす)】
いかがでしたでしょうか?
神無月に、出雲大社へ行かれた神様の代わりに留守番をするのがえびす様で、そのえびす様に感謝するのがえびす講なのですね。
「神無月は神様がお留守だから参拝しても意味ないわ~」と思っていた人たちも、えびす様が留守番をしてくださっているとわかれば、普段通りにお参りに行けますね。
そのときは「お留守番ありがとうございます」と、感謝の気持ちを伝えるといいかもしれませんよ。
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