風に揺られて「チリンチリン」と心地よい音を出す風鈴は、日本の夏の風物詩のひとつですよね。
風鈴の音を聞くだけで涼しく感じた経験が、みなさんにもあるのではないでしょうか。
一年中飾っておいても良いような気がしますが、なぜ夏だけ飾るのでしょうか?
今回は、風鈴を夏に飾る意味や風鈴の音を聞くとなぜ涼しく感じるのかその効果や理由についてわかりやすく解説します。
風鈴とは
読み方は「ふうりん」です。
家の軒下などに吊り下げて、風に揺られて鳴る音を楽しむ道具です。
ガラス、陶器、金属などさまざまな素材で作られており、以下の3つのパーツを組み合わせるのが一般的です。
外見(そとみ)
「鐘(かね)」ともいいます。
お椀のような形をしたもの、風船のように丸いもの、クラゲや魚の形をしたものなど形はさまざまで、中は空洞です。
舌(ぜつ)
「振り管(ふりくだ)」ともいいます。
外見からつり下がっている部分で、舌が外見に当たることで音が鳴るようになっています。
短冊(たんざく)
舌の先につり下がっている部分で、短冊が風を受けることで揺れて、舌が外見に当たるようになっています。
風鈴の歴史
風鈴は、約2000年前の中国で吉凶を占うために使用されていた「占風鐸(せんぷうたく)」という道具が起源だといわれています。
占風鐸を竹林に吊り下げて音の鳴り方や風の向きで吉凶を占ったそうです。
奈良時代(710年~794年)に遣唐使(けんとうし)が仏教とともに日本に持ち帰り、「風鐸(ふうたく)」と呼ばれるようになります。
日本では古くから、強い風が疫病や邪気を運んでくると考えられていました。
そして、疫病や邪気を避けるために魔除けとして「風鐸」を飾る習慣が生まれ、風鐸の音が聞こえる範囲に住む人たちは災いが起こらないと信じられていました。
平安時代(794年~1185年)になると、貴族の間でも魔除けとして軒下に飾るようになり、このころに「風鐸」が「風鈴(ふうりん)」と呼ばれるようになったといわれています。
このころの風鈴は青銅製でした。
江戸時代(1603年~1868年)中期ごろになると、西洋からガラスの文化が伝わり、ガラス製の風鈴が作られるようになりました。
ガラス製の風鈴はとても高価だったので庶民の間に広がるのは江戸時代の終わりから明治時代ごろだといわれており、夏に風鈴を飾るようになったのもこのころだと考えられています。
風鈴を夏に飾るのはなぜ?意味や理由とは?
風鈴はもともと疫病や邪気を避けるための魔除として飾っていましたが、特に気温や湿度が高くて疫病が流行りやすい夏に飾られるようになったといわれています。
また他にも、ガラスの風鈴が庶民の手に入るようになったころ、もともと庶民の間で鈴虫を飼って鳴き声を楽しむ習慣があったことから、風鈴を鈴虫の音色に見立て風情を感じるため飾るようになり、透明感のあるガラスの見た目や音によって涼しさを感じることから夏の定番アイテムとして流行しました。
現在は、魔除けの意味で飾る人はいなくなりましたが、夏に涼しさを感じるために飾ったり、風鈴の音に心地よさや癒し効果を求めて飾る人が多いようです。
風鈴の種類
風鈴にはたくさんの種類がありますので、いくつかご紹介します。
江戸風鈴(えどふうりん)
江戸時代から伝わる製法で作られているガラス製の風鈴です。
篠原風鈴本舗の二代目・篠原儀治(しのはらよしのぶ・1924年~ガラス工芸家)さんが昭和40年(1965年)ごろに江戸時代からの製法を受け継いだ伝統的なガラス製の風鈴を「江戸風鈴」と名付け、自身のブランドにしました。
現在「江戸風鈴」を名乗れるのは、篠原さんの技術を受け継いでいる「篠原風鈴本舗」と「篠原まるよし風鈴」だけです。
すべて手作業で作られているので、一つとして同じものはないといわれています。
江戸風鈴以外にもガラス製の風鈴はありますが、製法が異なるので「江戸風鈴」と名乗ることはできません。
南部風鈴(なんぶふうりん)
音が鳴る部分に南部鉄器(岩手県で作られている鉄器)を使用した風鈴です。
高く澄んだ音が長く響くのが特徴です。
平安時代(794年~1185年)末頃には南部鉄器で仏具などを作っていた記録があるそうですが、まだ「南部鉄器」という名称はありませんでした。
昭和34年(1959年)に「南部鉄器」という名称で統一され、このころから南部鉄器で風鈴や鍋などが作られるようになったそうです。
小田原鋳物風鈴(おだわらいものふうりん)
神奈川県小田原市で作られている鋳物(いもの)の風鈴です。
鋳物とは、加熱して溶かした金属を型に流し込み、冷えて固まった後に型から取り出して作った金属製品です。
室町時代(1336年~1573年)の末頃から続く伝統的な風鈴です。
松虫の鳴き声のような「松虫風鈴」、鈴虫の鳴き声のような「鈴虫風鈴」など、かわいらしく涼やかな音の風鈴があります。
明珍火箸風鈴(みょうちんひばしふうりん)
平安時代より続く甲冑師(かっちゅうし・甲冑を作る職人)の家系である明珍家が作る風鈴です。
明治時代(1863年~1912年)になって甲冑の需要がなくなり、廃業の危機に陥ったときに火箸を作るようになり「明珍火箸」と名付けます。
昭和40年(1965年)に、4本の火箸の触れ合う音を生かして作ったのが「明珍火箸風鈴」です。
有田焼風鈴(ありたやきふうりん)
佐賀県有田町で作られる有田焼の風鈴です。
有田焼は陶器ではなく、磁器(じき)です。
陶器とは、粘土で作る焼き物で、粘土は黄土色や茶色、灰色など色がついています。
磁器とは、磁土(じど)で作る焼き物で、磁土は白色のものがほとんどです。
陶器はざらざらとした触り心地に仕上がり、叩くと低く鈍い音が鳴ります。
一方、磁気は硬くて滑らかな半ガラス質に仕上がり、叩くと高く澄んだ音が鳴り、風鈴に適しています。
別府竹風鈴(べっぷたけふうりん)
岩手県の南部風鈴を、手作りの竹かごで包み込んだ風鈴です。
竹細工の技術が伝わる大分県別府市で作られており、南部風鈴の高く澄んだ音を竹細工が優しく包み込みます。
なぜ涼しく感じさせる効果あるの?涼しく感じるのは日本人だけ?
風鈴の音を聞くとなぜ涼しく感じるのでしょうか?
実際に気温が下がったわけではないので、音を聞くだけで「涼しい」と感じるのは「脳が勘違いをしているから」だといわれています。
「風鈴が鳴る⇒風が吹いているという証拠⇒涼しい!」
と体が条件反射を起こして体の表面温度が下がる効果があるそうです。
そして、日本人の脳は「風鈴の音=涼しい」という風に刷り込まれているで、風鈴の音を聞くことで体の表面温度が下がるのだそうです。
この条件反射が起こるのは、夏になると風鈴の音を聞く機会が多い日本人だけだといわれています。
風鈴に馴染みのない外国人は、風鈴の音を聞いても涼しさとは結び付かないので、涼しさを感じることはないそうです。
逆に外国人に風鈴の音を聞いてもらうと、リラックス効果で血行が良くなって体温が上がり、暑く感じる人もいるそうですよ。
もともとは魔除けのためで、現在は涼しさを感じるために風鈴を飾るのですね。
昨今は軒下が無いとか、高層階で窓が開けられないなど住宅事情もあり、風鈴を飾ることができない家もあるようですが、家の中に飾るタイプの風鈴も販売されています。
家の中に吊るすのではなく、置き型タイプの風鈴なので、涼しさや癒しだけではなくインテリアとして飾っても良いかもしれませんね。
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コメント
コメント一覧 (2件)
確かに見てるだけで涼しさを…。
ソウイウコトカ