囲碁には「七大タイトル」というものがあります。
毎回多くの棋士が挑戦していますが、七大タイトルで一番格付けが高いのはどれなのでしょうか?
序列や賞金などをあわせて解説いたします!
囲碁のタイトルとは?
囲碁の最も権威があり、主要なタイトルを「七大タイトル」といいます。
また、七大タイトルを争う大会を「七大棋戦(ななだいきせん・七大タイトル戦)」と呼びます。
棋戦とは、囲碁や将棋の対局のことです。
七大タイトルは以下のとおりです。
●棋聖(きせい)
●名人(めいじん)
●王座(おうざ)
●天元(てんげん)
●本因坊(ほんいんぼう)
●碁聖(ごせい)
●十段(じゅうだん)
七大タイトルの序列は賞金額で決まっています。
囲碁の棋士は普段は「〇〇九段」のように名前の後に段位をつけて呼びますが、タイトルを取ると「〇〇王座」のように名前のあとにタイトルをつけて呼びます。
また、複数のタイトルを保持することもでき、その場合、保持しているタイトルの数で「二冠」や「三冠」と呼びます。
これまでの最高は、「七冠」です。
井山裕太(いやまゆうた・1989年~)さんが、平成28年(2016年)に26歳で囲碁史上初の七冠を達成しました。
翌年の平成29年(2017年)にも七冠を保持し、平成30年(2018年)に国民栄誉賞を受賞しています。
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令和5年(2023年)までは、七大タイトルの中でも賞金が高く序列が上位だったのが「棋聖」「名人」「本因坊」です。
「三大タイトル」や「三大棋戦」と呼ばれており、三大タイトルを同時に獲得すると「大三冠(だいさんかん)」と呼ばれていました。
「大三冠」を達成したのは趙治勲(ちょうちくん・1956年~)さんと井山裕太さんの二人だけです。
その後、令和6年(2024年)に七大タイトルの中で最も長い歴史を持つ「本因坊」が賞金額を大幅に減らしたことで、序列が3位から5位に降格となり、他の4タイトルと同列になってしまいました。
そのため、「三大タイトル」とは呼ばれなくなってしまいました。
三大タイトルが無くなった今、三大タイトルから二大タイトルという呼び方に変わるのかどうかはわかりません。
囲碁のタイトルで一番格付けが高いのは?序列や賞金とは?
すでに説明したとおり、七大タイトルの序列は賞金額で決まっています。
一番格付けが高いのは賞金額が一番高い「棋聖」です。
タイトル戦は、名前をとって「棋聖戦」や「王座戦」と呼びます。
七大タイトルの挑戦者は、棋聖戦と名人戦はリーグ戦、その他はトーナメント戦で決められます。
それでは、七大タイトルを格付けの高い順にご紹介します。
① 棋聖戦(きせいせん)
開催期間:1~3月
賞金額:4300万円
挑戦手合:七番勝負
主催:読売新聞社、サントリーホールディングス(特別協賛)、日本棋院、関西棋院
現在のタイトル保持者:一力遼(いちりきりょう)
② 名人戦(めいじんせん)
開催期間:9~11月
賞金額:3000万円
挑戦手合:七番勝負
主催:朝日新聞社、明治(協賛)、日本棋院、関西棋院
現在のタイトル保持者:芝野虎丸(しばのとらまる)
③ 王座戦(おうざせん)
開催期間:10~12月
賞金額:1400万円
挑戦手合:五番勝負
主催:日本経済新聞社、日本棋院、関西棋院
現在のタイトル保持者:井山裕太
④ 天元戦(てんげんせん)
開催期間:10~12月
賞金額:1200万円
挑戦手合:五番勝負
主催:新聞三社連合、日本棋院、関西棋院
現在のタイトル保持者:一力遼
⑤ 本因坊戦(ほんいんぼうせん)
開催期間:5~7月
賞金額:850万円(2023年までは2800万円)
挑戦手合:五番勝負(2023年までは七番勝負)
主催:毎日新聞社、大和証券グループ(特別協賛)、日本棋院、関西棋院
現在のタイトル保持者:一力遼
⑥ 碁聖戦(ごせいせん)
開催期間:6~8月
賞金額:800万円
挑戦手合:五番勝負
主催:新聞囲碁連盟、日本棋院、関西棋院
現在のタイトル保持者:井山裕太
⑦ 十段戦(じゅうだんせん)
開催期間:3~4月
賞金額:700万円
挑戦手合:五番勝負
主催:産経新聞社、大和ハウス工業(特別協賛)、日本棋院、関西棋院
現在のタイトル保持者:井山裕太
七大タイトルのすべてを主催しているのが日本棋院と関西棋院です。
日本棋院は、囲碁の棋士を統括し棋戦を行うための公益財団法人で、東京都千代田区に本部があります。
正式には「公益財団法人日本棋院」といいます。
日本棋院は以下の三つで構成されています。
- 東京本院(東京都)
- 関西総本部(大阪府)
- 中部総本部(愛知県)
関西棋院は、囲碁の棋士を統括し、近畿地方を中心とした棋戦や囲碁普及などの活動を行う一般財団法人で、大阪府大阪市に本部があります。
正式には「一般財団法人関西棋院」といいます。
日本棋院と関西棋院はまったく別の組織ですが、協力関係にあります。
どちらの棋院に所属していても同じ棋戦に参加することができます。
名誉称号とは?
名誉称号とは、特定の条件を満たした者に贈られる称号です。
棋戦で5連覇もしくは通算10期タイトルを獲得した棋士が名誉称号を名乗る資格を得ます。
資格を得た後、現役で60歳以上に達したとき、もしくは引退時に名誉称号を名乗ることができます。
七大タイトルの名誉称号は「名誉〇〇」のように、タイトルの前に「名誉」がつきます。
しかし、「本因坊」は呼び方が異なりますので、最後に説明いたします。
七大タイトルの名誉称号と該当者をそれぞれご紹介します。
名誉棋聖
藤沢秀行(ふじさわひでゆき、ふじさわしゅうこう・1925~ 2009年)
小林光一(こばやしこういち・1952年~)
井山裕太さんは9連覇を達成して資格を得ていますが、まだ名乗ることはできません。
名誉名人
趙治勲
小林光一
名誉王座
加藤正夫(かとうまさお・1947年~2004年)
名誉天元
林海峰(りんかいほう、リンハイフォン ・1942年~)
井山裕太さんは5連覇を達成して資格を得ていますが、まだ名乗ることはできません。
名誉碁聖
大竹英雄(おおたけひでお・1942年~)
小林光一
井山裕太さんは6連覇を達成して資格を得ていますが、まだ名乗ることはできません。
名誉十段
現在、七大タイトルでは「十段」のみ名誉称号者がいません。
永世本因坊
「本因坊」もかつては「名誉本因坊」という称号でしたが、平成10年(1998年)以降「〇〇世本因坊」「永世本因坊」という称号に変更されました。
「本因坊」とは安土桃山から続く囲碁の家元(いえもと)の名前です。
家元とは、その家に伝わる芸の精神や技術を受け継ぎ、伝える人や家のことです。
本因坊は、昭和13年(1938年)に本因坊秀哉(ほんいんぼうしゅうさい・1874年~1940年)が引退した際、家元制を廃止しました。
本因坊秀哉は二十一世(にじゅういっせい)の本因坊ですが、これは21代目の本因坊ということです。
また、本因坊のタイトルを取ると雅号(がごう)を名乗ることができます。
雅号とは、本名以外につける名前のことです。
たとえば、「本因坊秀哉」は雅号で、本名は田村保寿(たむらやすひさ)です。
雅号は、本名から一文字をとり、本因坊家ゆかりの「秀」の文字を組み合わせるのが主流ですが、どのような雅号にするかは個人の意思が尊重されています。
永世本因坊の称号は、二十一世本因坊である本因坊秀哉に続く形で1代ずつ加算していき、「〇〇世+雅号」となります。
現在、永世本因坊の該当者は以下の通りです。
称号 | 本名 |
二十二世本因坊秀格(しゅうかく) | 高川格(たかがわかく・1915年~1986年) |
二十三世本因坊栄寿(えいじゅ) | 坂田栄男(さかたえいお・1920年~2010年) |
二十四世本因坊秀芳(しゅうほう) | 石田芳夫(いしだよしお・1948年~) |
二十五世本因坊治勲(ちくん) | 趙治勲 |
二十六世本因坊文裕(もんゆう) | 井山裕太 |
本因坊戦を5連覇もしくは通算10期タイトルを獲得した棋士は、現役で60歳以上に達したとき、もしくは引退時に永世本因坊を名乗ることができます。
また、9連覇を達成した棋士は年齢不問で永世本因坊を名乗ることができます。
囲碁のタイトルがどのようなものかわかりましたね。
日本には約450人のプロ棋士がいます。
多くの棋士の中でトップになったひとりが挑戦者となり、タイトル保持者と対戦することができるのです。
七大タイトルはどれも賞金が高額です。
大きな賞金を手にすることができるだけではなく、棋士としての名誉も手に入れることができるのですね。
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