
食事の時に毎回言う「いただきます」と「ごちそうさま」という言葉。
私たちはなぜ「いただきます」「ごちそうさま」と言うのでしょうか?
その意味と由来をわかりやすく解説します。
「いただきます」の意味と由来
「いただきます」は、食事を始める時の挨拶です。
「いただきます」は「いただく」という言葉に丁寧語の「ます」がついています。
漢字で「頂きます」や「戴きます」と書きます。
「頂く」と「戴く」はどちらも「物を頭の上に載せる」という意味があり、「もらう」の謙譲語です。

意味は同じですが、
- 「頂く」は、敬意をこめて受け取る(もらう)という意味合いが強く、日常的に使われています。
- 「戴く」は、かしこまって受け取る(もらう)という意味合いが強く、身分の高い人からというニュアンスが含まれ、あまり使いません。
敬意を表してその物を頭の上に押し載せる動作から「受け取る」「もらう」の謙譲語「いただく」が使われるようになりました。
神道では、神様へのお供え物(神饌:しんせん)を食べる「直会(なおらい)」という習慣があり、神様の力をいただくという考え方がありました。
このことから「食べる」という意味で「いただく」を使う場合もあります。
一般的には「頂く」が使われます。
また、食事を始める時の挨拶の際は漢字は使わず「いただきます」とひらがなで表記するのが一般的です。
「ごちそうさま」の意味と由来
「ごちそうさま」は、食事を終える時の挨拶です。
漢字で「御馳走様」と書きます。

「馳走(ちそう)」はもともと中国の言葉で、走り回るという意味があります。
昔は今と違って食材を揃えるのはとても大変なことで、大切な客人を迎える準備の際は、あちこち駆け回って食材を集めていました。
そのことから「馳走」という言葉ができました。
日本に伝わった後、「馳走」は「もてなし」を意味するようになりました。
やがて丁寧語の「御」をつけて「御馳走」となり、もてなしのための贅沢な料理を指すようになりました。
その後、大変な思いをして食事を準備してくれた人への感謝を込めて「様」が付き、食事を終えたときに「御馳走様」や「御馳走様でした」と挨拶するようになりました。
「ごちそうさま」と「ごちそうさまでした」の違いは
- 「ごちそうさま」は、カジュアルでくだけた表現です。
- 「ごちそうさまでした」は、フォーマルで丁寧な表現です。
また、使い分けは、
- 「ごちそうさま」は、家族や友人など親しい間柄の場合に使います。
- 「ごちそうさまでした」は、年長者や目上の人、仕事関係の人などに使います。
なぜ「いただきます」「ごちそうさま」と言うの?
「いただきます」と言う理由
「いただきます」と言う背景には江戸時代の仏教の影響があります。
仏教には「食事は命をいただくこと」という考え方があり、食事に対する心構えとして「五観の偈(ごかんのげ)」というものがあります。
五観の偈は以下の通りです。
①一つには功の多少を計り、彼の来処を量る
(こうのたしょうをはかり、かのらいしょをはかる)
意味:この食事がどのようにしてできたのか、どのようにしてここに来たのかを考える。
②二つには己が徳行の全欠を忖って、供に応ず
(おのれがとくぎょうの、ぜんけつをはかってくにおうず)
意味:自分の行いはこの食事をいただくに相応しいのか反省する。
③三つには心を防ぎ、過を離るることは、貪等を宗とす
(しんをふせぎとがをはなるることは、とんとうをしゅうとす)
意味:心を正しく保ち、貪り(むさぼり)、怒り、愚痴などの過ちを持たないよう、謙虚な心で食事をいただく。
④四つには正に良薬を事とするは、形枯を療ぜんがためなり
(まさにりょうやくをこととするは、ぎょうこをりょうぜんがためなり)
意味:食事は良薬であり、健康を得るために好き嫌いせずにいただく。
⑤五つには成道のための故に、今この食を受く
(じょうどうのためのゆえに、いまこのじきをうく)
意味:仏になれるよう精進するために、今この食事をいただく。
特に五観の偈の一つ目では、食事がどのようにしてできたのかを考えさせます。
たとえば、お米や野菜を育て、収穫し、流通・加工し、調理し、完成した料理を提供するまでには、たくさんの人が関わっています。
また、土や水、虫など自然の恵みがないとお米や野菜は育ちません。
お米や野菜を口にするまでにどれだけの命の関わりがあったのか考え、命の繋がりを認識します。
さらに、お米や野菜など植物にも命があると考えるため、「食事は命をいただくこと」という考え方が生まれました。
このような仏教の考え方が「いただきます」の精神的な背景になっています。
「いただきます」という言葉は、
- 神仏にお供えしたものを食べるときに「いただく」という言葉が使われた
- 仏教の影響で「食事は命をいただくこと」という考え方が広まった
ということからもわかるように、仏教や神道が関係しています。
現在は宗教儀礼ではなく、食材や、食事を作ってくれた人に感謝や敬意を表す、日本独特の文化として根付いています。
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「ごちそうさま」と言う理由
江戸時代には特別な料理やもてなしの「御馳走」が庶民にも広まっていました。
そして、江戸時代後半ごろから、普段の食事を終えたときにも「ごちそうさま」と言うようになったという説があります。
「いただきます」と「ごちそうさま」には、たくさんの感謝の気持ちが込められています。
- 生き物や植物など食材への感謝
- 食材を育てた人、獲った人への感謝
- 流通や加工に関わった人への感謝
- 料理した人への感謝
- 食事ができる環境への感謝
- 神仏への感謝 など
いつ頃から広まった?
明治時代(1868年~1912年)になると、「いただきます」と「ごちそうさま」は食事の挨拶として指導されるようになりました。
現存する最古の記録では、明治24年(1891年)に発行された「子供のをしえ」に箸を取る前に「戴きます」と言うことが書かれています。
その後、「いただきます」「ごちそうさま」は教科書にも載るようになり、戦後は学校給食や食育を通じて全国に広まりました。
なお、民俗学者の柳田國男(やなぎたくにお・1875年~1962年)が昭和21年(1946年)に「近頃普及したものだ」と言及していることから、戦前までは定着していなかったことの裏付けになります。
英語で何と言う
「いただきます」と「ごちそうさま」は日本独特の文化のため、英語に訳すことができません。
しかし、外国にはそれぞれ食事の挨拶や掛け声がありますのでいくつかご紹介します。
アメリカなど英語圏
食前(いただきます)
●Let’s say grace.(食前のお祈りをしましょう)
キリスト教では、食事の前に神への感謝のお祈りをします。その掛け声です。
●Let’s eat!(さぁ、食事をしよう!)
キリスト教ではない家庭やカジュアルな間柄での声掛けです。
食後(ごちそうさま)
●That was delicious.(美味しかったです)
●Thank you for the meal.(食事を用意してくれてありがとう)
食事を作ってくれた人への感謝の言葉です。
フランス
食前(いただきます)
●Bon appétit(召し上がれ・食事を楽しんでください)
一緒に食事をする人同士で言います。
食後(ごちそうさま)
●Merci, c’était bon.(ありがとう、美味しかったです)
食事を作ってくれた人への感謝の言葉です。
ドイツ
食前(いただきます)
●Guten Appetit(召し上がれ・食事を楽しんでください)
一緒に食事をする人同士で言います。
食後(ごちそうさま)
●Danke, es hat geschmeckt.(ありがとう、美味しかったです)
食事を作ってくれた人への感謝の言葉です。
韓国
食前(いただきます)
●잘 먹겠습니다(よく食べます・ありがたくいただきます)
食事を作ってくれた人への感謝の言葉です。
食後(ごちそうさま)
●잘 먹었습니다(よく食べました・ありがたくいただきました)
食事を作ってくれた人への感謝の言葉です。

「いただきます」と「ごちそうさま」がどのような言葉なのかわかりましたね。
食事の挨拶として深い意味を考えずに「いただきます」「ごちそうさま」と言っている人も多いと思いますが、それだけ生活に根付いているということでしょう。
私たちが今日こうして食事をいただけるのは、たくさんの命や人が関わってくれているからです。
ぜひ、そのことへの感謝を込めて「いただきます」「ごちそうさま」を言ってみてください。
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