
歴注(れきちゅう)とは、カレンダーに書かれた日時や方位などの吉凶、大安や仏滅などその日の運勢が書かれた注意事項のようなもののことです。
その暦注のひとつに「十方暮」というものがあるのですが、どのようなものかご存知ですか?
今回は「十方暮」の意味や、今年の十方暮の始まりと終わりの日はいつなのかについてわかりやすく解説します。
「十方暮」の意味とは?
読み方は「じっぽうぐれ」です。
「十方闇」と書くこともあります。
「十方暮」の「十方」とは、あらゆる方向のことで、「暮」はもともと「闇」と書いたことから、全ての方向が闇に閉ざされたという意味があります。
また、「十方暮」は「途方(十方)に暮れる」という語呂合わせから来ているともいわれています。
私たちが普段使うカレンダーは数字で日にちが書かれていますよね?
これを数字ではなく干支(えと)に当てはめたものを「日の干支」といいます。
「十方暮」は、日の干支が「甲申(きのえさる)~癸巳(みずのとみ)」までの10日間を指し、この期間は何をしてもうまくいかない、さまざまなことがよくない期間とされています。(後ほど詳しく説明します。)
カレンダーの暦注には、この10日間を「十方暮 一日目」「十方暮 二日目」のように書いているわけではなく、最初の日が「十方暮始まり」、最後の日が「十方暮終わり」と書かれていることが多いです。
「十方暮」と陰陽五行説
「十方暮」は、陰陽五行説(いんようごぎょうせつ)に基づいた考え方から来ています。
陰陽五行説とは「陰陽説(いんようせつ)」と「五行説(ごぎょうせつ)」が合わさった考え方でそれぞれの説は以下のような意味があります。
●陰陽説
この世のすべてのものを陰と陽に分類する思想
●五行説
万物は木、火、土、金、水の五種類の元素からなるという自然哲学の思想
先ほどカレンダーの日にちを数字ではなく干支(えと)に当てはめたものを「日の干支」と説明しました。
干支は別の言い方で「十干十二支(じっかんじゅうにし)」とも言うのですが、
十干(じっかん)とは、
- 甲(こう)
- 乙(おつ)
- 丙(へい)
- 丁(てい)
- 戊(ぼ)
- 己(き)
- 庚(こう)
- 辛(しん)
- 壬(じん)
- 癸(き)
のこと、
十二支(じゅうにし)とは、
- 子(ね)
- 丑(うし)
- 寅(とら)
- 卯(う)
- 辰(たつ)
- 巳(み)
- 午(うま)
- 未(ひつじ)
- 申(さる)
- 酉(とり)
- 戌(いぬ)
- 亥(い)
のことを言います。
五行説の考えから、十干にはそれぞれ「木」「火」「土」「金」「水」のどれかが割り当てられており、さらに、陰陽説の陽を表す「兄(え)」と陰を表す「弟(と)」が割り当てられ、以下のようになります。
- 甲(木(き)の兄(え))=「きのえ」
- 乙(木(き)の弟(と))=「きのと」
- 丙(火(ひ)の兄(え))=「ひのえ」
- 丁(火(ひ)の弟(と))=「ひのと」
- 戊(土(つち)の兄(え))=「つちのえ」
- 己(土(つち)の弟(と))=「つちのと」
- 庚(金(か)の兄(え))=「かのえ」
- 辛(金(か)の弟(と))=「かのと」
- 壬(水(みず)の兄(え))=「みずのえ」
- 癸(水(みず)の弟(と))=「みずのと」
十二支も同様に五行説の考えから「木」「火」「土」「金」「水」が割り当てられており、以下のようになります。
- 子(水)
- 丑(土)
- 寅(木)
- 卯(木)
- 辰(土)
- 巳(火)
- 午(火)
- 未(土)
- 申(金)
- 酉(金)
- 戌(土)
- 亥(水)
これらの十干と十二支を組み合わせると以下の様に60の組み合わせが出来上がります。

組み合わせの順番は、
1番目が「甲子(きのえね)」
2番目が「乙丑(きのとうし)」
3番目が「丙寅(ひのえとら)
4番目が「丁卯(ひのとう)」
5番目が「戊辰(つちのえたつ)」と続きます。
「十方暮」は、日の干支が21番目の「甲申(きのえさる)」~30番目の「癸巳(みずのとみ)」までの10日間を指します。
最初の日が「十方暮始まり」、最後の日が「十方暮終わり」となります。
最後が60番目の「癸亥(みずのとい)」になりますが、日に当てはめたのが日の干支なので、60日で一巡することがわかりますよね。
これら60の組み合わせを「六十干支」という場合もあります。

陰陽五行説には「相克関係(そうこくかんけい・良くない相性のこと)」というものがあります。
●「水」は「火」を消す。
●「火」は「金(金属)」を溶かす。
●「金(金属)」は「木」を切り倒す。
●「木」は「土」から養分を吸い取る。
●「土」は「水」を汚す。
そのため、これらの組み合わせの日は相性が良くないとされています。

例えば、十方暮始まりの日の、21番目「甲申(きのえさる)」の場合「甲」は「木」、「申」は「金」運気をもち、「金物は木を切る」と考えるため、相性が悪いのです。
十方暮は、陰陽五行説では相克関係にある日が続くため、何をしてもうまくいかない、さまざまなことがよくない期間といわれているのです。
「十方暮」はいつ?
十方暮は、日の干支が「甲申(21番目)」から「癸巳(30番目)」の間の10日間のことで、以下のとおりになります。
※赤文字は間日(まび)(後ほど説明いたします。)
| 日 | 番 | 干支 |
| 1日目 | 21番目 | 甲申(きのえさる) 甲=木 申=金 |
| 2日目 | 22番目 | 乙酉(きのとのとり) 乙=木 酉=金 |
| 3日目 | 23番目 | 丙戌(ひのえいぬ) 丙=火 戌=土 |
| 4日目 | 24番目 | 丁亥(ひのとのい) 丁=火 亥=水 |
| 5日目 | 25番目 | 戊子(つちのねえ) 戊=土 子=水 |
| 6日目 | 26番目 | 己丑(つちのとのうし) 己=水 丑=土 |
| 7日目 | 27番目 | 「庚寅(かのえとら) 庚=金 寅=木 |
| 8日目 | 28番目 | 辛卯(かのとのう) 辛=金 卯=木 |
| 9日目 | 29番目 | 壬辰(みずのえたつ) 壬=水 辰=土 |
| 10日目 | 30番目 | 癸巳(みずのとみ) 癸=水 巳=火 |
暦(こよみ)には「間日(まび)」というものがあり、特に何もない日、悪い影響を受けない日とされています。
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十方暮の間日(まび)は赤文字の「丙戌(ひのえいぬ)」と「己丑(つちのとのうし)」です。
この二つは相克関係にはなく相性は悪くないのですが、十方暮の間日は周りの日の影響を受けるため、両日も凶日になるといわれています。
つまり、十方暮の10日間はすべて凶日となります。
「十方暮れ」の期間にしてはいけないこと
「十方暮れ」の期間にしてはいけないことは以下の通りです。
●新しく何かを始める
●入籍や結婚など婚姻関係
●相談事
●訴訟
●旅行
●引っ越し
2025年十方暮はいつ?
2025年の十方暮の始まりと終わりの日は以下の通りです。
| 十方暮始まり | 十方暮終わり |
| 1月15日(水) | 1月24日(金) |
| 3月16日(日) | 3月25日(火) |
| 5月15日(木) | 5月24日(土) |
| 7月14日(月) | 7月23日(水) |
| 9月12日(金) | 9月21日(日) |
| 11月11日(火) | 11月20日(木) |

10日間も何事にも良くない日が続くというのは、考えるだけで憂鬱になってしまいますよね。
しかし、十方暮には科学的根拠はなにもないといわれています。
60日ごとにやってくる十方暮を「何事もうまくいかないから」と、いろいろなことを避けて生活するのは案外難しいことだと思いますので、気にしないのが一番なのではないでしょうか。
入籍や旅行、引っ越しなど、より良い日を選ぶための参考程度にしておくといいのかもしれませんね。
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