「じゅげむ じゅげむ ごこうのすりきれ・・・」誰もが一度は耳にしたことがあると思いますが、この歌の意味や全文をご存知ですか?
「聞いたことはあるけど、なんのことだかさっぱりわからない」「なにかの呪文なの?」と言う人が多いかもしれませんね。
今回は「じゅげむ」について調べてみました。
じゅげむ(寿限無)の歌の意味とは?
「じゅげむ」は古典落語の演目のひとつです。
生まれた男の子の名前を考える夫婦が、男の子が長生きできるように良い名前を付けてもらおうと、和尚に名づけをお願いします。
和尚は長生きできるよう、おめでたい言葉をいくつか紙に書き「この中から選びなさい」と夫婦に渡します。
夫婦は「どれかひとつを選んで、もしも何か悪いことが起こった時に別の名前にすればよかったと後悔するに決まっているから、全部名付けてしまおう!」ということで、長い名前になってしまいました。
ありがたい言葉が連なった名前がとにかく長いので、男の子の名前を呼ぶたびに長い名前を呼ばなければならず、名前の繰り返しが笑いを誘う内容になっています。

「じゅげむ」の起源は江戸時代の落語だといわれています。
「じゅげむ」のように長い名前の早口言葉や言葉遊びは、人々の間で古くから語られてきたようですが、落語になったのは江戸時代初期と考えられています。
しかし、この時の落語がそのまま現在まで伝えられているわけではなく、時の流れの中で新たな言葉や設定が加わっており、落語家によってさまざまなバージョンがあるようです。
例えば、現代の「入学式」や「夏休み」という設定が加わったものがあり「入学式の日に、とても寝坊助な息子の名前を呼んで起こそうとしているうちに、夏休みになっていた」という話もあります。
「じゅげむ」は暗記の練習や、人物の演じ分け方、会話の間の取り方など、落語家の基本練習のためにも使われており、広く知られている内容をいかに面白く聞かせるかということで、落語家の技術が試されるものでもあるようです。
「じゅげむ」の全文紹介
「じゅげむ」は江戸時代から現代までの間にいろいろと変化していますので、落語家によって細かいところが異なることがあります。
ここでは一般的によく知られているものをご紹介します。
「じゅげむ」の全文
寿限無 寿限無 五劫の擦り切れ 海砂利水魚の水行末 雲来末 風来末
食う寝るところに住むところ 藪ら柑子の藪柑子
パイポパイポパイポのシューリンガン シューリンガンのグーリンダイ
グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの 長久命の長助
ひらがなにすると・・・
では一言ずつ、意味を見て行きましょう。
●「寿限無 寿限無」(じゅげむ じゅげむ)
「寿が限り無い」ということで、限りない長寿を意味します。
●「五劫の擦り切れ」(ごこうのすりきれ)
天から下界に降りてきた天女が泉で水浴びをする時に、身にまとっている羽衣が泉の巨大な岩の表面に触れわずかに擦り減り、それを繰り返すうちに岩が擦り切れて無くなってしまうまでの期間が一劫で、五劫はその5倍ということで、永久に近いほど長い時間を表しています。
●「海砂利水魚」(かいじゃりすいぎょ)
海の砂利や、水中の魚のように数限りないことのたとえです。
●「水行末 雲来末 風来末」(すいぎょうまつ うんらいまつ ふうらいまつ)
水、雲、風がどこから来てどこへ行くのか、その方角や行く着く先には果てがないことのたとえです。
●「食う寝るところに住むところ」(くうねるところにすむところ)
人が生活をする上で大切な「衣食住」の「食」と「住」のことで、これに困らずに生きていけるようにという願った言葉です。
●「藪ら柑子の藪柑子」(やぶらこうじのやぶこうじ)
「やぶらこうじのぶらこうじ」と言うこともあります。
「藪ら柑子」は「藪柑子」のことで、藪柑子は生命力豊かな縁起物の木の名前です。
●「パイポパイポパイポのシューリンガン シューリンガンのグーリンダイ グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの 長久命の長助」
・「パイポ」
パイポ王国という、架空の世界の国名です。
・「シューリンガン」「グーリンダイ」「ポンポコピー」「ポンポコナー」
架空の世界にあるパイポ王国の歴代の王様の名前で、いずれも長生きしたといわれています。
また、グーリンダイは妃の名前、ポンポコピーとポンポコナーは子どもの名前という話もあります。
・「長久命の長助」(ちょうきゅうめいのちょうすけ)
「長久命」は、長く久しい命という意味で、「天地長久(てんちちょうきゅう)」という言葉からきています。
「天地長久」は、天地が永遠に不変であるように、物事がいつまでも変わらずに続くという意味です。
また、男の子の名づけをお願いした和尚が「自分に男の子が生まれたら、長助という名前にしたい」と言ったことで、最後に「長助」が追加されました。

ひらがなだけを読むと、なにかの呪文のようですよね。
しかし、これがたった一人の男の子の名前というのですから、驚きです!
こんなに長い名前は、呼ぶ方はとっても大変ですし、男の子も自分の名前を書くときにとても面倒な思いをしてしまいそうですよね。
親が我が子に長生きしてほしいと願う気持ちは今も昔もかわりませんが、名づけにその想いを全て込めてしまうと、お互い大変なことになってしまいますね。