緊急のときに使う電話番号110番と119番。
特に覚えるための語呂があるわけではありませんが一体どうして警察署に掛けるときは110番、消防署に掛けるときは119番という数字になったのでしょうか?
その理由について解説します。
消防車や救急車を呼ぶのはなぜ119番なの?
まず、最初に制定された119番から説明します。
日本には緊急通報用電話番号というものがあります。
警察に通報するための「110番」
消防車や救急車を呼ぶときの「119番」
海の事件事故の時に海上保安庁に連絡できる「118番」
のことです。
その先駆けとなったのは大正6年(1917年)ごろの有料の火災報知電話です。
当時電話を掛ける際は、最初に電話局につなぎ、交換手に相手の番号を告げて電話を相手につないでもらう手動交換でした。
ですから消防署に連絡する時には、最初に電話局に一旦連絡し、つないでもらってから消防署に「火事だ!」と通報していたわけです。
ところが大正12年(1923年)、関東大震災により電話線と電話局が壊滅的被害を受けました。
その復旧の際、新しく自動交換の導入が進められ、今と同様、ダイヤルすると直接消防に掛かるようになりました。
電話による直接通報は、火災の早期発見に絶大な効果があったため、昭和元年(1926年)、無料の火災報知電話番号が制定されました。
当時はダイヤル式の電話機を使用していたため、ダイヤルを回すとき一番短くて済む1と2を使用し最初は「112番」として運用されていました。
しかし、慌ててダイヤルしまう人や電話に慣れていない人たちが番号を間違えることが多くなってしまいました。
そこでダイヤルで回す時、1から遠い場所にある9が採用され、119番になったといわれています。
119番になった別の理由
また、消防の電話番号が「112番」から「119番」に変わったのには別の理由があると言われています。
手動交換の時代の電話は「デルビル電話機」といって、右手に小ぶりのハンドルがある電話機でした。
このハンドルは発電用で、回すことで電気を起こして加入者の電話と電話局をつなぎ、同時に電話局に合図を送り交換手を呼び出すために用いられました。
また、デルビル電話機と同時期に「共電式電話機」という電話機も使用されていました。
共電式電話機は、電話局が電話線を通じて加入者の電話機へ電気を供給していたので、発電用のハンドルがありませんでした。
そのため、電話局側に合図を送るために別の仕組みが取り入れられていました。
共電式電話機では受話器をぶら下げる留め金具がフックスイッチになっており、受話器を外してフックスイッチを上げることで電話局側のランプが点灯する仕組みになっていました。
フックスイッチを上下させることで電話局側のランプを点滅させることができるので、交換手の注意を引くために2回上下する、という使われ方がされたそうです。
その後、しばらくして手動交換から自動交換になり、ダイヤル式の電話機になったのでフックスイッチを上下する必要はなくなったのですが、共電式電話機の使い方に慣れた人たちの中には、フックスイッチを2回プッシュしてから使い始める人が少なからずいたようです。
しかし、このダイヤル式の電話機のフックスイッチは電話を切るだけでなく、電話番号をダイヤルするのと同様の電気信号を送ることができたため、2回プッシュすると「1」「1」を入力したことになり、そのあと20番台の局番(22:丸の内局、23:日本橋局、24:神田局、28:大手局)に掛けるために続けてダイヤルで「2」を回すと意図せずに「112番」となり、消防署につながってしまったそうです。
このような意図しない通報をなくすため、未使用だった90番台の局番の9を取り「119番」となったといわれています。
110番が制定された理由は?
110番が制定されたのは戦後の昭和23年(1948年)でGHQの要請により警察通報用電話番号が設置されました。
番号が決められた理由は119番と同様にダイヤルを回すとき一番短くて済む1を多くし、間違いを避けるために距離が長い0を採用したことで110番となりました。
制度ができてすぐは東京・大阪など大都市のみ110番が使われていましたが、他の地域は「1110番」や「118番」などバラバラでした。
その後、昭和29年(1954年)にようやく日本全国110番で統一されました。
また、海上保安庁の「118番」の運用は平成12年(2000年)5月1日からです。
すでにダイヤル式の電話機は使用されていませんでしたので「110番」や「119番」のような制定理由はありませんが、覚えやすい三桁の番号として選ばれたようですよ。
通信技術の変遷によって緊急通報用電話番号が制定されたのがわかりましたね。
最近ではいたずらで通報する人や、タクシーを呼ぶ感覚で救急車を呼ぶ人の話も耳にします。
いろいろな経緯があって生まれた生活を守る制度ですからこれからも大切にしたいですね。
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