童謡の「お正月」に「♪こまをまわして あそびましょう~♪」という歌詞があるように昔から独楽回しはお正月の風物詩でした。
それでは、なぜ、お正月に独楽回しをするのでしょうか?
今回は、独楽の起源や歴史、お正月に独楽回しをする理由について解説します。
独楽の起源や歴史とは?
独楽は世界各地にあり、それぞれその地域で自然発生的に誕生したと考えられています。
現存する世界最古のものは、エジプトで発見された紀元前2000年~1400年頃のもので、「ぶちゴマ(叩きゴマ、鞭ゴマ)」と考えられる木を削って作られた独楽です。
「ぶちゴマ」とは、独楽の側面を鞭のようなもので叩いて回す独楽です。回し始めの時にコマに紐を巻いて引っ張って回すものがあることから、これが「投げゴマ」のルーツだと考えられています。
日本最古の独楽は、滋賀県大津市の南滋賀遺跡から出土した6世紀後半から7世紀前半ごろの逆円錐の先端が細く削られた木製の独楽です。
外部リンク:大津で日本最古のこま 6世紀後半~7世紀前半
奈良時代(710年~794年)から平安時代(794年~1185年)ごろは、宮中で占い師が独楽を回して吉凶を占ったり、貴族階級が遊びとして独楽回しをしていたようです。
また、平安時代に中国から唐独楽(とうごま・鳴り独楽)が伝来したといわれています。
鳴り独楽は、胴体の一部に空洞を作ることで、回る時に音が出る独楽です。
「独楽」という漢字は、古代中国でコマを「獨楽」と記していたことが由来とされています。
また、コマという発音は中国から高麗(こうらい・現の朝鮮半島)を経て日本に伝わったため、当時の高麗の呼び名である「こま」が由来であるとの説が有力とされています。
文献上に初めて登場するのは平安時代中期に作られた辞書である「和名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)」に「古末都玖利(こまつぐり・こまつむぐり)」として出てきます。
もともと日本では独楽のことを「つぐり」や「つむぐり」と呼んでいたようです。
語源は貝殻を意味する「つぶり」だといわれており、独楽は貝殻から作られていたからです。
江戸時代(1603年~1868年)になると独楽は庶民の間に広まっていきました。
博多では心棒が鉄製で長く回る博多独楽が生まれ、掌や扇子に乗せたり、綱渡りさせるなど「曲独楽(きょくごま)」という演芸に発展し、後に江戸でも大流行しました。
ベーゴマは平安時代に関西地方で海螺(ばい)という巻貝に砂や粘土を入れて紐で回したものが起源で「バイゴマ」と呼ばれていました。
そして、関西から関東に伝わった時に「バイゴマ」が訛って「ベーゴマ」や「ベイゴマ」と呼ばれるようになったそうです。
明治時代になると鉄製のものが作られ、大正期から高度成長期にかけて子どもたちの定番の遊びでした。
大正10年(1921年)には、ジャイロ効果の原理を応用した「地球ゴマ」が誕生しました。
米国やヨーロッパ、東南アジアに輸出され、世界的に有名になり、日本でも1970年代に大ブームを巻き起こしました。
古くから存在していた「ぶちゴマ」は、江戸時代中期には「投げゴマ」に取って代わられ、明治以降には徐々に姿を消していき、投げゴマが独楽の標準となっていきました。
戦後、投げゴマは子どもたちが集まる駄菓子屋の定番商品として大量に販売され、昭和56年(1981年)にピークを迎えました。
しかしその後、小学生の数が減少しはじめ、子どもたちが遊べる空き地などの減少や新しい子どもの遊び(ファミコンやガンプラ、ビックリマン、キン肉マン消しゴム、チョロQ)の影響で廃れていきました。
投げゴマに代わって、室内で遊べる機械式の回転装置をもつコマが販売され人気を博し、平成11年(1999年)にベイブレードが子どもの間でブームになりました。
平成12年(2000年)に、木製独楽の生産量日本一の山形県米沢市で「独楽回しの楽しさを次世代に伝える」ことを目的として「全日本独楽回し大会」開催されました。
また、平成23年(2011年)から全国の中小製造業が自社の技術を注いで作成したコマを持ちより、一対一で戦う「全日本製造業コマ大戦」が日本各地で行われています。
平成24年(2012年)には、「第一回全日本製造業コマ大戦 全国大会G1」が開催され、平成27年(2015年)には世界大会である「全日本製造業 世界コマ大戦2015(G1)」が開催されました。
トーナメント方式で戦っていくコマ大戦は、毎回多くの会社が参加して盛り上がっています。
お正月に独楽回しをする意味とは?
なぜ、お正月に独楽回しをするのかというと、独楽は、まっすぐに芯が通っていてくるくると回ります。
その姿が、「お金が回る」「物事が円滑に回る」に通じることから縁起物と考えられているからです。
また、コマ同士をぶつけあったり、回る時間を競ったりすることから、男の子に強くたくましく育ってほしいという願いも込められているそうです。
一年の始まりであるおめでたいお正月に、縁起物であるコマを回すことで男の子の健やかな成長を願ったんですね。
英語で何ていうの?
独楽は英語で次のように表現されます。
「top」
「spinning top」
「teetotum(指で回す小さな独楽)」
「whirligig(回転するおもちゃ 独楽・風車)」
「独楽を回す」は「Spin a top」です。
また、「Top-Spinning」 で「独楽回し」という意味になります。
なぜお正月に独楽を回すんだろう?と思っていましたが、独楽が縁起物だったからなんですね。
独楽で遊ぶ人はめっきり減ってしまいましたが、伝統的な遊びを残したい人たちや、製造業に携わる人たちが独楽回しの大会を開いているので、もっと盛り上がるといいですね。
現在は、お正月の過ごし方も多様化していますが、ぜひ家族みんなで独楽回しをしてみませんか?
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コメント
コメント一覧 (2件)
ブチこま/他の解説記事やYouTubeなどを見ると、古来から直径3~5cmの
棒の下端を円錐状に削ったもののようですが、私が小学3年生の頃(S.26年.
広島市郊外在住)は、「ブリキ製で、縦にスリットがあり、叩いて回すと、
「ブーン」という音が出るようになっていました。鞭は、50~100cm長の
ぼろ切れを1~2cm幅に裂き、数本を束にして、水にぬらしていました。
地球こま/小学5年(S.28年)の時、父が買ってきてくれました。
ジャイロ効果で、倒れないことに驚きました。
(思い出話としてメモしようと、コマの記事を探していて、つい、
懐かしく、コメントをしました)
コメントありがとうございました!
貴重な体験談たいへん興味深く読ませていただきました。