「リラ冷え」は北海道だけで使われる季節を表す言葉なのだそうです。
「リラ」とは一体なんでしょうか?
「リラ冷え」はどういう意味で、いつの時期に使われる言葉なのでしょうか?
今回は「リラ冷え」についてわかりやすく解説します。
「リラ」とは?
「リラ」とは、「ライラック」のことです。
ライラックは、モクセイ科ハシドイ属の落葉樹で、和名は「ムラサキハシドイ」といいます。
日本では一般的に、英語で「lilac(ライラック)」と呼びますが、フランス語では「lilas(リラ)」と呼びます。
ライラックは北海道札幌市を代表する花で、札幌市を象徴する「市の木」にもなっています。
札幌市のライラックは、北星学園女子中学高等学校(現・学校法人北星学園)の創始者で札幌の女子教育の発展に貢献したサラ・クララ・スミス(1851年~1947年)がアメリカから持ってきたものが起源といわれています。
ライラックは札幌の気候と相性が良く、街中に広まりました。
「リラ冷え」の意味と語源とは?時期はいつ頃?
「リラ冷え」とは、リラ(ライラック)の花が咲く時期である5月中旬~6月上旬ごろに、一時的に寒くなることをいいます。
冷たい空気を持つオホーツク海高気圧が北海道に影響を与えて、20度台あった気温が10度台に下がる現象のことです。
「リラ冷え」は北海道以外では使われない言葉ですが、本州などにも「リラ冷え」と同じような現象があり、「寒の戻り」や「花冷え」といいます。
「寒の戻り」とは、立春(2月4日ごろ)から4月にかけて、春の暖かい日が続く中で一時的に寒さがぶり返すことをいいます。
「花冷え」は、桜の花が咲くころの寒さのことをいい「寒の戻り」の類義語になります。
「リラ冷え」「寒の戻り」「花冷え」は、いずれも春に起こる現象です。
しかし、
リラ冷え=5月中旬~6月上旬ごろ
寒の戻り=立春(2月上旬)~4月にかけて
花冷え=3月下旬~4月にかけて
と、時期にはずれがあります。
「リラ冷え」という言葉は北海道を代表する俳人である榛谷美枝子(はんがいみえこ・1916年~2013年)さんが、昭和35年(1960年)に発表した
「リラ冷えや すぐに甘えて この仔犬」
という俳句に用いたのが最初だといわれています。
昭和37年(1962年)には
「リラ冷えや 睡眠薬は まだきいて」
という俳句を発表しています。
これらの俳句によって「リラ冷え」がリラの花が咲く頃である「春の季語」として定着しました。
その後、作家の渡辺淳一(わたなべじゅんいち・1933年~2014年)さんが昭和46年(1971年)に「リラ冷えの街」という小説を出し、日本中に「リラ冷え」という言葉が広まったのです。
蝦夷梅雨とは?
「リラ冷え」と同じ時期に北海道で起こる気象現象として「蝦夷梅雨(えぞつゆ)」というものがあります。
北海道には本州のような梅雨はないとされていますが、蝦夷梅雨はオホーツク海高気圧の冷たく湿った空気の影響で、湿度が高くなり、雨の日やぐずついた天気が2週間ほど続くことをいいます。
そして、この時に急に冷え込み、肌寒くなるのがリラ冷えなのです。
本州の梅雨は「梅雨前線(ばいうぜんせん)」の影響で起こりますが、北海道まで梅雨前線は届きません。
梅雨前線の影響ではないため、気象庁では「蝦夷梅雨」のことを「梅雨」として定義していません。
「リラ」とはライラックの事だったのですね。
北海道はライラックの生育に適しており、北海道に初夏の訪れを告げる花として親しまれているそうです。
特に、ライラックを「市の木」にしている札幌市では、約400本ものライラックが咲き誇る大通公園などで、毎年5月中旬ごろに「さっぽろライラックまつり」が開催され、大勢の観光客でにぎわうそうですよ。
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