天気予報やニュースで、「朧月」または「朧月夜」という言葉を耳にすることがありませんか?
月という文字が使われていることで、空に浮かぶ月を思い浮かべたり、「おぼろ月夜」という歌を思い出す人もいらっしゃるかもしれませんね。
では、「朧月」「朧月夜」とは、いつ使う言葉なのでしょう?
歌詞を思い出した人は、なんとなくいつ使うか想像できたでしょうか。
今回は、「朧月」「朧月夜」について調べてみました。
Contents/目次
「朧月」「朧月夜」の意味とは?
読み方は「おぼろづき」、「おぼろづきよ」または「おぼろづくよ」です。
「朧月」は霧(きり)や靄(もや)などに包まれ、柔らかくほのかにかすんで見える春の夜の月のことで、「朧月夜」は朧月が出ている夜のことです。
「朧(おぼろ)」には、「はっきりしない」「不確かな様子」「ぼんやりとかすんでいる様子」という意味があります。
月がかすんで見えるだけではなく、空全体がかすんで見えるので、天体観測には向かない日といわれています。
また、黄砂やPM2.5なども朧月の原因のひとつとなっているそうです。
月齢は関係がなく、満月でも、三日月でも、ほのかにかすんで見える月のことを「朧月」といいます。
いつ使う言葉なの?
「朧月」「朧月夜」という言葉は、春の季語です。
例えば、江戸時代の俳人内藤丈草(ないとうじょうそう)が詠んだ次の俳句が有名ですね。
『大原や 蝶の出て舞う 朧月(おおはらや ちょうのでてまう おぼろづき)』
「朧月が出ている夜に、大原(京都の地名)の里を歩いていると、どこからか蝶が飛んできてひらひらと舞っている」
また、松尾芭蕉も次の俳句を詠んでいます。
『猫の恋 やむとき閨の 朧月(ねこのこい やむときねやの おぼろづき)』
「先ほどまで、恋をしたらしい猫の騒々しい声が聞こえていたが、ふとその声がやんでみると、朧月の光が部屋に差し込んでなんともいえない静寂が訪れた」
朧月は「かすんで見える春の夜の月」のことなので春の間に使いますが、正確に「この日からこの日まで」と決まっているわけではありません。文字通り、使う期間も「はっきりしない」のですね。
「朧月夜」といえば、とても有名な歌がありますね。
子どもたちに日本の美しい風景を伝えるために作られたとされる歌で、大正3年(1914年)に小学校の教科書に載ったのが最初です。
「おぼろ月夜」
作詞:高野辰之 作曲:岡野貞一
菜の花畠(ばたけ)に 入り日薄れ
見わたす山の端(は) 霞(かすみ)ふかし
春風そよふく 空を見れば
夕月(ゆうづき)かかりて におい淡し
里わの火影(ほかげ)も 森の色も
田中の小路(こみち)を たどる人も
蛙(かわず)のなくねも かねの音も
さながら霞(かす)める 朧月夜
菜の花畠に夕日が沈んだあと、空に浮かんでいるのは朧月なんですね。
美しい春の夕暮れの情景が、目に浮かんできませんか?
「朧月」「朧月夜」という言葉は、とても風情のある言葉ですね。
黄砂やPM2.5が原因のひとつと考えると、手放しで歓迎できるものではありませんが、昔の人たちは朧月を見て、歌や俳句をたくさん作っています。
昔のように月明かりで夜道を歩くことはほとんどない現在ですが、夜も明るい街中でも空を見上げたら月が浮かんでいます。
もしかしたら、今日、見上げた月が朧月かもしれませんよ。
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