
正座は日本の伝統的な座り方として知られています。
正座はなぜ「正しい座り方」なのでしょうか?
またいつから「正しい座り方」になったのでしょうか?
江戸時代までは正座ではなくあぐらだったそうですが、その理由はなんでしょう?
今回は正座について解説します。
正座とは?
読み方は「せいざ」です。
正座とは、膝を揃え(そろえ)足を折りたたみ、足の甲を床につけ、踵の上に腰を下ろす座り方です。
- 「正」は、正式な、礼にかなった、まっすぐ、などの意味があります。
- 「座」は、座るという意味があります。
つまり「正座」は、正しい姿勢で座ることという意味になります。
正座はいつから「正しい座り方」になったの?
正座がいつ誕生したのかについては定かではありません。
古代日本で独自に誕生した座り方という説や、正座の原型となる座り方が奈良時代(710年~794年)に中国から日本へ伝わったという説もあります。

跪坐
古代中国では床に直接座る生活をしており、「跪坐(きざ)」と呼ばれる、正座に近い座り方がありました。
この座り方が日本に伝わり、日本で独自の進化をして現在の正座になったといわれています。
現在の「正しい姿勢で座る」という意味で「正座」という言葉が定着したのは、明治時代(1868年~1912年)から昭和(1926年~1989年)初期にかけてです。
それ以前の日本では、胡座(あぐら)や立膝(たてひざ)が一般的でした。
- 胡座とは、両ひざを左右に開き、両足を組んで座ることです。
- 立膝とは、片方のひざを曲げ、もう片方のひざを立てて座ることです。「片膝立て」ともいいます。

立膝(片膝立て)
正座は神仏を拝む時や儀式、目上の人の前に座る時、敬意を表す時など、特別な座り方でした。

江戸時代以前の人物画や人々の様子を描いた絵巻物などでは、あぐらや立膝で座っている人が多く描かれており、正座をしている人は少ないです。
茶道では、現在は正座が作法とされていますが、昔は作法として定められていませんでした。
そのため、茶人たちは正座だけではなくあぐらや立膝で座ることもありました。
茶道は、室町時代(1336年~1573年)から安土桃山時代(1573年~1603年)に誕生しています。
関連:茶道の歴史、道具と作法とは?流派の違いをわかりやすく解説

江戸時代(1603年~1868年)初期、徳川幕府は参勤交代に小笠原流礼法(おがさわらりゅうれいほう)を取り入れ、大名が将軍に謁見するときは正座をするようになったといわれています。
小笠原流礼法とは、室町時代から続く武家の礼儀作法のひとつです。
日本の伝統的な立ち居振る舞い、お辞儀、箸使いなどの基盤となっており、「日本人の作法の原点」とも言われています。

大名が江戸から自分の領地へ戻り、領地で正座を広めたことで、武家の儀礼として正座が取り入れられるようになったといわれています。
正座は、将軍や主君など身分の高い人へ謁見するときに、相手を心から敬い、服従する気持ちを示すものとなります。
このころの「正座」は、
- かしこまる
- 端座(たんざ)
などと呼ばれていました。
江戸時代中期ごろになると、畳や座布団が普及し、正座が庶民の間でも広まっていきました。

江戸時代までの文献にも「正座」という言葉は登場しますが、使っていたのは主に僧侶や儒学者などで、一般の人が座り方を「正座」と呼ぶようになったのは、もっと後のことでした。
正座がなぜ「正しい座り方」になったのかというと、明治時代に学校で礼儀作法が教えられ、そこから広まっていったからです。
明治43年(1910年)の礼法の教科書『学生礼法』には、こう書かれています。
「座するには上体を真直にし、踵にて臀部を支へ、膝を張り下腹に力を入れ、手は指を揃へて膝の上に置くか又は組みて軽くべし、之を正座といふ。」
(訳:上体をまっすぐにし、踵の上に腰を下ろして、手は膝の上に置く。これを「正座」という)
出典:国立国会図書館デジタルコレクション『学生礼法』(広田一乗・加藤三雄著/明治43年)
いまの正座とまったく同じです。
ちなみに同じ本の中では、「正座」が「上座の中央にあるいちばん上の席」という意味でも使われています。
つまり当時の「正座」には、座り方と席の位置という二つの意味がありました。
その後、昭和初期にかけて家庭内でも正座をすることが一般的になり、正座は日本に定着しました。
出典:北陸大学紀要 第29号「『正坐』の語誌的研究」(南谷直利・北野与一/2005年)
関連:「上座」と「下座」の由来とは?会議室・宴会・和室・面接・飲み会・車
江戸時代まではあぐらだった理由は?
もともと正座ではなく、あぐらや立膝が一般的だった理由はいくつかあります。
畳ではなく板の間だったから
畳が庶民の家庭でも使われるようになるのは、江戸時代中期以降です。
それまでは、板の間や土間が一般的で、そこに正座をすると膝や足の甲が痛くなってしまうため、板の間や土間でも楽に座ることが出来るあぐらや立膝だったのです。
関連:畳の縁(へり)を踏んではいけない理由とは?畳縁の柄と色の意味とは?
服装の問題があるから
江戸時代までの服装は着物で、現在よりもゆったりと作られていました。
男性の場合、着物で座る時はあぐらが一番楽な座り方でした。
また、このころの女性は、立膝や横座り(よこすわり)で座るのが普通で、身分の高い女性の肖像画にも立膝で座る姿が描かれています。
横座りとは、正座の足を横に出す座り方です。

立ち上がりやすいから
正座を長時間すると、足がしびれてすぐに立ち上がることが難しくなります。
特に武士は敵に襲われたときに足がしびれて動けない状況は危険なため、すぐに立ち上がって対応できるあぐらや立膝で座っていました。
正座で足がしびれるのはなぜ?

正座をすると、ひざ下で血管が圧迫されて血液の流れが悪くなり、末梢神経(まっしょうしんけい)に必要な酸素が足りなくなります。
さらに、末梢神経は皮膚の近くを通っているため、体の重みで直接押されます。
これらの理由で末梢神経の働きが落ち、異常な電流が流れることで、しびれが発生します。
出典:エーザイ「正座でわかるしびれの原因」(いがらし整形外科スパインクリニック 五十嵐環医師監修)
しびれにくい正座の座り方
スポーツ医学が専門の法政大学・伊藤マモル教授によると、次の2つでしびれにくくなります。
- 足の親指を重ねる
- 体重を前に乗せる
親指を重ねると足の甲がわずかにねじれ、床との間にすき間ができて血行不良が起こりにくくなります。
体重を前に乗せると、ひざ裏の動脈への圧迫も軽くなります。
足を横にくずすのはやめましょう
しびれたときに足を横に流す座り方は、ひざを痛めるおそれがあります。
伊藤教授は、足を横にずらすとひざの関節がねじれ、靱帯(じんたい)が無理に伸ばされると指摘しています。
しびれたときは、ゆっくり足を伸ばして軽くさすると早く治ります。
強い痛みやしびれが続くときは、無理に動かず休みましょう。
出典:札幌ひざのセルクリニック「正座でひざがしびれる」(整形外科専門医 川上公誠院長監修)
正座椅子を使う方法もあります
法事やお稽古など、長く正座しなければならない場面もあります。
そのようなときは、正座椅子(せいざいす)を使う方法があります。
正座した足をまたぐように置き、お尻を乗せて使う小さな台です。
お尻の重みを台が受けるので、ひざ下にかかる体重が減り、血管が圧迫されにくくなります。
折りたためて持ち運べるものが多く、法事や茶道のお稽古で使われています。
近くのお店で見つからない場合は、通販でも購入できます。

正座が正しい座り方として定着したのは明治時代以降のことなのですね。
現在は、立膝はお行儀が悪いと注意されることもありますが、江戸時代以前ではごく普通の座り方だったことにも驚きですね。
正座を長時間すると足がしびれて動けなくなってしまいます。
しびれたときは、ゆっくり足を伸ばして軽くさすってあげてくださいね!

コメント