「先見の明」という言葉は褒め言葉として用いることが多いですが、どのような意味があるのかご存知ですか?
また、「先見の明」と似ている言葉で「先見の目」や「先見の妙」という言葉をどこかで聞いたことがあると思うのですが、「先見の明」との違いは何なのでしょう?
今回は「先見の明」「先見の目」「先見の妙」の読み方や違い、意味についてわかりやすく解説します。
「先見の明」の読み方と意味とは?
「先見の明」の読み方は「せんけんのめい」です。
「先見(せんけん)」とは、
「なにかが起こる前に見抜くこと」
「先を見通すこと」
という意味があります。
また、「明(めい)」には、
「物事の道理が明らかで疑いのないこと」
「道理を見分ける才能や能力」
という意味があります。
つまり、「先見の明」は、
「なにかが起こる前にそれを見抜く能力」
「先を見通し、それに対応する能力」
「先を見抜いて判断する能力、行動する能力」
という意味になります。
「先見の明」の由来とは?
「先見の明」という言葉は、中国の歴史書「後漢書(ごかんじょ・5世紀ごろ)」の楊彪伝(ようひょうでん)というお話が由来といわれています。
中国の後漢(25年~220年)~三国時代(220年~280年ごろ)に楊彪(ようひょう)という政治家がいました。
楊彪には息子がおり、曹操(そうそう・後漢末期の武将・政治家)に仕えていたのですが、ある日、曹操の機嫌を損ねてしまい処刑されてしまいました。
そして、後日、曹操は痩せ細ってしまった楊彪に会いました。
曹操が心配して楊彪になぜそんなに痩せたのか理由を尋ねたところ、
「私には、金日磾(きんじつてい)のような先見の明が無いことを恥じたからです。老牛が子牛を舐めて愛おしむようなものだ。」と答えました。
この意味は、
金日磾という政治家には子供がいたのですが、その子供は成長するにつれて女遊びが激しくなり、このままではいずれ周りに迷惑をかけてしまうと判断した金日磾は、自らの手で子供を殺してしまいました。
楊彪は「金日磾は先を見通して、我が子がいずれ世間に迷惑をかけることが分かっていたので、自らの手で子供を殺した。しかし、自分にはそれができずに曹操に迷惑をかけてしまった。私は老牛が子牛を舐めるように子どもを溺愛しただけだった。」と言っているのです。
このように楊彪が、未来のことを見通して判断・行動することを「先見の明」と表現したことが由来といわれています。
「先見の目(せんけんのめ)」「先見の妙(せんけんのみょう)」とは?
「先見の目(せんけんのめ)」と「先見の妙(せんけんのみょう)」は、「先見の明(せんけんのめい)」の誤用です。
「先見の目」は、「目(め)」と「明(めい)」の発音が似ていることや、先を見通すことを「先を見る」と考え、「先見の目」となったのではないかといわれています。
「先見の妙」は、先見の明(せんけんのめい)を(せんけんのみょう)と誤読してしまい、「明(みょう)」と同じ響きの「妙(みょう)」という漢字を当ててしまったといわれています。
「先見の明」の使い方
「先見の明」は、成功や失敗の理由を述べるときや、成功したときの誉め言葉として、以下のような使い方をします。
「みんなが反対したのに良い結果に終わったのは、彼に先見の明があったからだ」
「これ以上失敗を繰り返さないためにも、先見の明を養いたい」
「あなたに先見の明があったからこそ、このプロジェクトは成功しました」
「先見の明」の類語
「先見の明」の類語はいくつかあります。
先を見通す力を意味する「先見性(せんけんせい)」
これから起こることを予見する力を意味する「予見力(よけんりょく)」
これから起こることを予測する「先読み(さきよみ)」
物事の本質や人が持つ潜在能力、将来を見抜く力を意味する「慧眼(けいがん)」 など
「先見の明」と響きが似ているので間違えて覚えてしまった人がいても不思議ではありませんが、「先見の目」「先見の妙」は存在しない言葉で、ただの誤用だったのですね!
「先見の明」は、生まれ持った才能だけではなく、努力や経験で養うことができるといわれていますので、たくさんの経験と努力を積み重ね、未来を予測して行動できるような人物になりたいですね。
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