「黒南風」「荒南風」「白南風」という言葉を聞いたことがありますか?
ある気象現象を表す言葉で、俳句を作る時に欠かせない季語としても使われているのですが、普段の生活ではあまり耳にすることはないですよね。
どういうときに使う言葉なのしょうか?
今回は、「黒南風」「荒南風」「白南風」についてわかりやすく解説します。
黒南風の読み方と意味とは?
「黒南風」の読み方は、
「くろはえ」または「くろばえ」です。
「黒南風」の意味は、
「梅雨の始めの頃の雨を含んだ黒雲を連れて吹く南風」のことです。
荒南風の読み方と意味とは?
「荒南風」の読み方は、
「あらはえ」または「あらばえ」です。
「荒南風」の意味は、
「梅雨の最盛期に吹く激しい南風」のことです。
白南風の読み方と意味とは?
白南風の読み方は、
「しらはえ」または「しろばえ」です。
「白南風」の意味は、
「梅雨明けの頃の晴天の日に吹く南風」のことです。
「黒南風」「荒南風」「白南風」は季節風
「黒南風」「荒南風」「白南風」は、夏に吹く「季節風(きせつふう)」です。
季節風は、季節によって向きを変える風のことで、モンスーンとも呼ばれています。
季節風は、夏は南東方面(太平洋側)から日本列島へ向けて、冬は北西方面(日本海側)から日本列島へ向けて吹きます。
夏は太平洋側で雨が多く、冬は日本海側で雪が多くなります。
「黒南風」「荒南風」「白南風」のように夏に南から吹く季節風のことを「夏の南風(みなみかぜ・みなみ・はえ)」と呼び、日本列島に梅雨をもたらします。
同じ夏の季節風ですが、時期がによって名前が変わるのです。
●梅雨の始めごろ「黒南風」
●梅雨の半ばごろ「荒南風」
●梅雨の終わりごろ「白南風」
いつの季語?
「黒南風」「荒南風」「白南風」はいずれも夏の季語になります。
さらに細かくみてみると、歳時記(さいじき)では、
「黒南風」「荒南風」は、
仲夏(ちゅうか・夏の半ば頃のこと)の季語
「白南風」は、
晩夏(ばんか・夏の終わり頃のこと)の季語
に分類されています。
※歳時記(歳事記とも書きます)とは、四季の行事などをまとめた書物ですが、江戸時代以降は俳句の季語を集めて分類し、季節ごとに解説と例句を加えた書物のことをいいます。
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歳時記では春夏秋冬は以下のようにそれぞれ3つに分けられています。
春は「初春・仲春・晩春」
夏は「初夏・仲夏・晩夏」
秋は「初秋・仲秋・晩秋」
冬は「初冬・仲冬・晩冬」
これらは二十四節気(にじゅうしせっき・1年間を24等分したもの)によって区切られています。
「初夏・仲夏・晩夏」の期間は以下の通りです。
●初夏
5月6日ごろ~6月5日ごろ
(立夏~芒種の前日)
●仲夏
6月6日ごろ~7月6日ごろ
(芒種~小暑の前日)
●晩夏
7月7日ごろ~8月7日ごろ
(小暑~立秋の前日)
「黒南風」「荒南風」「白南風」が季語の俳句
「黒南風」「荒南風」「白南風」が季語となっている俳句には以下ものがあります。
「黒南風」が季語の俳句
・飯田蛇笏
『沖通る 帆に黒南風の 鴎群る』
・相生垣瓜人
『毒の風 黒南風に又 中りけり』
「荒南風」が季語の俳句
・飯田龍太
『荒南風の橋下に澄みて山と町 』
「白南風」が季語の俳句
・芥川龍之介
『白南風の 夕浪高う なりにけり』
・日野草城
『白南風や 化粧にもれし 耳の陰』
「黒南風」「荒南風」「白南風」がどういうものかわかりましたね。
梅雨の始まりに「黒」、梅雨の終わりに「白」ということで、空の雲の色を表しているそうですが、人々の気持ちも表しているような気がしませんか?
梅雨は恵みの雨をもたらすものなので大切な時期ですが、雨が続くことを考えると気持ちが落ち込むので「黒」、梅雨が終わると気持ちも浮上するので「白」と、そんな風に考えると覚えやすいかもしれませんね。
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