昔から使われている言葉遊びのひとつに「倒語」があります。
倒語とは、どのような言葉遊びなのでしょうか?
この記事では、倒語の意味や由来、有名な倒語の例を一覧でご紹介します。
倒語の意味とは?
読み方は「とうご」です。
倒語とは、言葉を逆の順序にして作る言葉で、言葉遊びの一種です。
「逆読み(ぎゃくよみ)」
「逆さ読み(さかさよみ)」
「逆さ言葉」
とも言います。
倒語とは、基本的には言葉を単純に逆に読むことですが、以下の場合も倒語といいます。
- 言いやすいように言葉を伸ばす
- 途中の文字を抜く
- 文字を不規則に入れ替える
※後ほど具体例を紹介します。
倒語の由来とは?
倒語という言葉は、日本書紀で神武天皇が即位される日の以下の一文に登場します。
「能以諷歌倒語、掃蕩妖氣。倒語之用、始起乎茲。」
ここにでてくる「倒語」は「とうご」ではなく「さかしまごと」と読みます。
「歌を倒語に謳へることを以ちて、能く妖しき気を掃蕩げき。倒語之用いること、始めて茲に起こしき乎。」
(うたをさかしまごとにうたへることをもちて、よくあやしきけをたひらげき さかしまごとをもちいること、はじめてここにおこしきや)
と読みます。
「諷歌(そえうた)・倒語(さかしまごと)で妖気を払った。これが倒語を用いるようになった始めである。」という意味です。
このときの「諷歌」や「倒語」がどのようなものだったのか具体的な記述がなく、正確な意味などは不明です。
現在の倒語と同じように逆に読んだり、文字を入れ替えるなどしたものとは限らず、「呪文や暗号、呪いの言葉」として用いられたのではないかと考えられています。
現在も使われている倒語は江戸時代(1603年~1868年)に流行しました。
江戸時代は、職人や商人などの町人たちが中心となって発展させた「町人文化」が花開いた時代です。
歌舞伎や浮世絵、花火、相撲、落語などが庶民の娯楽として楽しまれていました。
これらの娯楽と同じように町人たちの間で言葉遊びや洒落も流行し、倒語もそのひとつとして親しまれていました。
倒語は特定の仲間内だけで通じる隠語や暗号、強調表現としても流行し、現在まで残る言葉もあります。
有名な倒語を一覧で紹介!
江戸時代に生まれ現在も残っている倒語をいくつかご紹介します。
●ネタ
「話の種」が「話のネタ」となり、現在はどちらも使われています。
●ドヤ
宿とは呼べないような宿泊料の安い簡易宿泊所を倒語で「ドヤ」と呼んでいました。
「ドヤ」は江戸時代から使われていましたが、その後、簡易宿泊所を利用する日雇い労働者が多く集まった街を「ドヤ街」と呼ぶようになりました。
●だらしない
もともとは「しだらない」で、自堕落(じだらく)が変化した言葉です。
「しだらない」はいつの間にか使われなくなり、倒語の「だらしない」だけが現在も残っています。
●験を担ぐ(げんをかつぐ)
「縁起を担ぐ」の「縁起(えんぎ)」が「ぎえん」となり、さらに「げん」に変化し「験」という漢字が当てられました。
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●ずぼら
ずぼらは、行動や性格がだらしないことという意味です。
江戸時代に修行をなまけたり、お酒や女に溺れる坊主が大勢いたため、そのような坊主を「坊主(ぼうず)」を倒語にした「ずぼう」と呼びました。
この「ずぼう」が「ずぼら」に変化し、いつしかだらしない人を指すようになりました。
ほかにも芸能界やマスコミ関係者などが使う「業界用語」も倒語になっているものが多いです。
業界用語は一般の人たちが聞いてもわからないようにする目的があるといわれており、限られた人にしかわからない言葉を使う自分たちを特別だと感じるエリート意識もあるのではないかといわれています。
バブル期に使われるようになった業界用語をいくつかご紹介します。
●寿司=しーすー
●うまい=まいうー
●銀座=ざぎん
●六本木=ぎろっぽん
●コーヒー=ヒーコー
●タクシー=シータク
●マネージャー=ジャーマネ
●ハワイ=ワイハ
業界用語だけではなく、一般の人たちの間でも使われている倒語もあります。
●サングラス=グラサン
●金髪=パツキン
●先輩=パイセン
●手袋=ろくぶて
このように、倒語は単純に逆から読むだけではなく、言葉を伸ばしたり、途中の文字を抜いたり、文字を不規則に入れ替えたりしていることがわかりましたね。
倒語を使った遊び
倒語を使ったいたずら
「手袋を反対から言って」とお友達に言い、お友達が「ろくぶて」と答えたら数を数えながら6回たたきます。
お友達が「なぜ叩くの?」と言ったら「だって、ろくぶて(6ぶって)って言ったでしょう」と答えます。
嫌がらせをするわけではないので、叩くときは優しく叩きましょう。
逆さ言葉ゲーム
倒語を使った「逆さ言葉ゲーム」というゲームもあります。
たとえば、
- ①出題者がお題の言葉を逆から読んで、解答者が元の言葉がなにかを当てるゲーム
- ②出題者がお題として出した言葉を、解答者が逆から読んで答えるゲーム
- ③逆から読んでも意味が通じる言葉を探すゲーム
- ④看板の文字を倒語にする遊び
①のゲーム
出題者が「まるく」とお題を出したら、解答者は「くるま(車)」と答えれば正解です。
②のゲーム
出題者が「くるま(車)」とお題を出したら、解答者は「まるく」と答えれば正解です。
③のゲーム
出題者が「2文字の言葉」「3文字の言葉」というふうに文字数を決めて、回答者が逆から読んでも意味が通じる言葉を探します。
また、特に文字数を決めずに参加者みんなで逆から読んでも通じる言葉を探して遊ぶこともできます。
たとえば、2文字の言葉は
- 庭(にわ)=鰐(わに)
- 位置(いち)=地位(ちい)
- 茄子(なす)=砂(すな)
- 北(きた)=滝(たき)
- 陸(りく)=栗(くり)
- 六(ろく)=黒(くろ)
- 国(くに)=肉(にく)
- 無地(むじ)=事務(じむ)
3文字の言葉は
- ミルク=クルミ
- 絵画(かいが)=外貨(がいか)
- 効き目(ききめ)=目利き(めきき)
- 換気(かんき)=金貨(きんか)
- 天狗(てんぐ)=軍手(ぐんて)
- 桜(さくら)=落差(らくさ)
- イルカ(いるか)=軽い(かるい)
- 薬(くすり)=リスク
- 文庫(ぶんこ)=昆布(こんぶ)
- 力士(りきし)=仕切り(しきり)
- 動き(うごき)=記号(きごう)
4文字以上の言葉は
- 嘘つき(うそつき)=きつそう
- うどん粉(うどんこ)=混同(こんどう)
- 可愛い(かわいい)=良い和歌(いいわか)
- 登録(とうろく)=玄人(くろうと)
- 気だるい(けだるい)=いるだけ
- かっこいい=良い国家(いいこっか)
- 開催地(かいさいち)=小さい蚊(ちいさいか)
- キンセンカ=観戦記(かんせんき)
などいろいろあります。
④のゲーム
電車や車に乗っている時や、散歩をしている時などに目に入った看板や駅名の文字を逆から読む遊びです。
たとえば、親子で山手線に乗っている時に通過する駅の看板に書かれている駅名を、親と子のどちらが早く倒語にできるか競ったり、一緒に考えるなどをして遊びます。
ちなみに山手線の駅名の倒語は以下のようになります。
- 渋谷=やぶし
- 恵比寿=すびえ
- 目黒=ろぐめ
- 五反田=だんたご
- 大崎=きさおお
- 品川=わがなし
このように倒語を使った遊び方はいろいろありますが、発想力や語彙力、想像力などが養えるといわれています。
厳密なルールはありませんので、その時に自分たちでルールを決めると良いですね。
倒語がどういうものかわかりましたね。
倒語にしたら意味がわからなくなって仲間内でしか使えない言葉もあれば、倒語にすると意味が違う言葉になるものもあって面白いですね。
ここでご紹介したのはほんの一部です。
今日もどこかで新しい倒語が生まれているかもしれません。
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