縁起が良いものの代表的なものといえば鶴と亀ですよね。
結婚式や長寿のお祝いなど、おめでたい席には欠かせません。
そして「鶴は千年亀は万年」という言葉があります。
鶴と亀はなぜ縁起が良いのでしょうか?
今回は、「鶴は千年亀は万年」の意味と続き、鶴と亀はなぜ縁起がいいのかなどについて解説します。
「鶴は千年亀は万年」の意味
「鶴は千年亀は万年」ということわざには、「長寿でめでたいこと」という意味があります。
鶴と亀は縁起が良いものとされ、長寿の象徴となっているからです。
鶴と亀はなぜ縁起がいいの?
中国・前漢時代の「淮南子(えなんじ)」というさまざまな思想をまとめた書物には「鶴寿千歳、以極其遊」と記されています。
読み方は「鶴、千歳(せんざい)を寿(じゅ)として、以て其の游(ゆう)を極め」です。
「鶴は千年生き、その遊びを極める」という意味があります。
また、淮南子に「亀歳三千歳(かめさいさんぜんとい)」と記されています。
「亀は三千年生きる」という意味で、のちに「亀は万年」に変化したという説があります。
他にも「鶴寿千歳、以極其遊」の「鶴は千年」が日本に伝わった後、「亀は万年」が日本で付け加えられたという説があります。
淮南子には「人間万事塞翁が馬」という有名な故事成語についても書かれています。
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また、鶴と亀は四神(しじん・ししん)が由来という説もあります。
四神とは、中国の伝説上の神獣のことで、それぞれ東西南北を守護します。
- 青龍(せいりゅう)は東方を守護する
- 朱雀(すざく)は南方を守護する
- 玄武(げんぶ)は北方を守護する
- 白虎(びゃっこ)は西方を守護する
このうち朱雀は鳥の姿なので鶴へ変化し、玄武は亀と蛇が合体した姿なので亀に変化したといわれています。
そして、東西南北の北と南を結ぶ縦の線は過去から現在、未来へと続くものだという考え方があり、北(玄武)と南(朱雀)は未来永劫を意味し、長寿や子孫繁栄の象徴としての鶴と亀に変化したという説があります。
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それ以外にも、
鶴は夫婦仲が良く、一生連れ添うことから「夫婦鶴(めおとづる)」と呼ばれ、夫婦円満の象徴でもあります。
また、鳴き声が遠方まで届くことから「天に届く=天上界に通ずる鳥」ともいわれています。
これらに加え、鳥類の中では鶴は長生きすることから長寿の象徴となり、民衆に「めでたい鳥・縁起が良い鳥」と思われていたそうです。
長寿の願いを込めて折り紙で鶴を折り、千羽鶴にする習慣は室町時代(1336年~1573年)に始まりました。
江戸時代には(1603年~1868年)には病気回復や必勝祈願など、現在のようにさまざまな願い事をするために千羽鶴を作るようになったといわれています。
また、亀は古代中国では仙人が住む蓬莱山(ほうらいさん)の使いとされ、知恵と長寿を象徴する動物とされていました。
蓬莱山は、霊亀(れいき)という怪物の一種である大きな亀の背中の上にあるといわれています。
金や銀の宮殿が建ち、不老不死の薬があり、神や仙人が住むといわれる伝説の島です。
また、亀の甲羅の六角形は吉兆(良いことやめでたいことが起こる前ぶれ)や長寿の象徴です。
硬い甲羅は、インドやギリシャでは「世界を支えている」といわれ、不動の象徴とされています。
また、亀の丸い甲羅が江戸時代の硬貨によく似ているから、金運の縁起物としても扱われることもあります。
「鶴は千年亀は万年」の続きとは?
「鶴は千年亀は万年」には2種類の続きがあります。
一つ目は、
「鶴は千年、亀は万年、我は天年(てんねん)」
天年とは、天から授かった寿命、天寿という意味です。
江戸時代の僧侶である仙厓義梵(せんがいぎぼん・1750年~1837年)が「鶴は千年亀は万年」に「我は天年」を付け加えた言葉だといわれています。
仙厓義梵は多くの絵を残していますが、その中に、二羽の鶴を描いた「双鶴画賛」という絵があります。
その絵に「鶴は千年 亀は万年 我は天年」という言葉が添えられています。
意味は、「鶴や亀は万年も千年も生きるかもしれないが、自分は天からいただいた寿命を生きるだけである」という解釈が一般的です。
二つ目は、
「鶴は千年、亀は万年、鸚(おうむ)は天年」
この言葉はいつごろ誰が言い出したのか出典や詳細は不明です。
以下のような意味があるといわれています。
・生き物によって寿命は違うから、自然の法則に従わなければならない
・鶴は千年、亀は万年生きるけれど、鸚はただ天から授かった寿命を全うするのみである
・千年生きるか万年生きるか分からないけれど、鸚はただ天から授かった命を全うをするのみである
鶴と亀は縁起が悪い?
日本では鶴と亀は縁起が良い生き物とされていますが、縁起が悪い・不吉なものと考える国や地域もあります。
北欧では鶴は「死を運ぶ不吉な鳥」とされており、忌み嫌われています。
ケルト神話に殺戮(さつりく)を好むエススという神様がいるのですが、エススと一緒に鶴が描かれることが理由だといわれています。
また、中国では亀は長寿の象徴として縁起が良いといわれていますが、一部地域では「亀は悪魔の使い」として亀が描かれたものは忌み嫌われているそうです。
「鶴は千年亀は万年」の使い方
「鶴は千年亀は万年」は「長寿でめでたいこと」という意味で使われています。
使い方をいくつかご紹介します。
・鶴は千年、亀は万年といいますから、まだまだ長生きしてください。
・鶴は千年、亀は万年、長寿を目指して日頃から健康管理を頑張ろう。
・「鶴は千年 亀は万年」という言葉を使って長寿のお祝いのスピーチをしよう。
・健康に百歳を迎えられれば、鶴は千年、亀は万年で喜ばしいことですね。
・長寿のお祝いに「鶴は千年 亀は万年」と書かれた湯呑をプレゼントした。
実際の寿命はどのくらい?
「鶴は千年 亀は万年」といわれていますが、本当のところはどうなのでしょう?

タンチョウ
鶴で思い浮かべるのは国の天然記念物であるタンチョウですが、平均寿命は20~30年です。
ほかの鳥の寿命は3年~10年程度といわれているので、鶴は鳥類の中では随分長生きです。
亀は種類によりますが、100年以上生きるものもいます。
ガラパゴス諸島には推定200年を生きている亀もいるそうです。

ガラパゴスゾウガメ
「鶴は千年亀は万年」までは生きないようですが、鶴と亀が長寿の象徴であるように、ほかの生物と比べると長生きなのですね。
浦島太郎のお話
私たち日本人が良く知っているお話のなかに「浦島太郎」があります。
浜で助けた亀に連れられて、竜宮城へ行き、乙姫と楽しい時間を過ごしますが、もとの場所に戻るとすでに長い時間が経っており、帰り際に渡された玉手箱を開けると老人になってしまった・・・というお話ですが、これには続きがあるそうです。
浦島太郎は老人になったあと、鶴になって乙姫のところへ飛んで行ったそうです。
乙姫が浦島太郎に渡した玉手箱には、実は浦島太郎の魂が封じ込められており、浦島太郎は老いない体になっていたそうです。
これは乙姫が「浦島太郎にもう一度会いたい」と思っていたからなのですが、浦島太郎はそうとは知らずに玉手箱を開けて老人になってしまいました。
そして、鶴になった浦島太郎は乙姫のところへ飛んでいき、乙姫は亀に姿を変え、永遠ともいえる長い時間、愛し合ったそうです。
このお話の中でも、鶴と亀が長寿の象徴として扱われているのですね。
鶴と亀の本当の寿命は千年も万年もありませんが、ほかの生物に比べると長寿であることがわかりましたね。
現在の日本人の平均寿命は80歳を超えますが、千羽鶴が始まったといわれる室町時代の平均寿命は33歳と言われています。
平均寿命が33歳の人々が、30年生きる鶴や、100年生きる亀を長寿の象徴として大切にするのもわかる気がしますよね。
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