「漆器(しっき)」「漆塗り(うるしぬり)」・・・聞いたことはあるけれど、実際どういう物なのかよくわからないという方もいらっしゃるかもしれません。
しかし日本では、古くから漆塗りの食器や櫛、花器などの日用品が使われていました。
数多くの工程を経て出来上がることから、壊れにくい、長持ちする、と愛用されていたようですが、安価に大量生産できるものが増えてからは、漆器を使う人が減ってきたそうです。
今回は、日本に古くからある漆器についてご紹介します。
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漆器とは?
漆器とは、木や紙などに漆(うるし)を塗り重ねて作る工芸品のことです。
表面に漆を塗った器物(きぶつ・うつわ)のことをいいますが、櫛(くし)や箸置き、箸など、うつわ以外の物も含まれ、漆を塗り重ねて作られたものを幅広く「漆器」といいます。
漆は、ウルシ科ウルシ属の落葉高木の「ウルシ」から採れる樹液を加工したもので、加工された木や紙などに塗り重ね、30~40もの工程を経て漆器を仕上げていきます。
以前は日本各地で漆が採られていましたが、現在は90%以上が中国から輸入されたものだそうです。
そのため、日本産の漆は希少で価格も高いので、主に神社仏閣の補修に使われているそうです。
漆器の歴史とは?
漆の歴史は古く、2011年に北海道垣ノ島遺跡(かきのしまいせき)で漆を使った縄文時代前期(紀元前14000年ごろ~数世紀)の装飾品発見されたことから、今からおよそ9000年前には漆加工が用いられていたと考えられています。
弥生時代(紀元前数世紀~3世紀中頃)になると武器類に漆を塗るようになり、古墳時代(3世紀中頃~7世紀頃)になるとさまざまなものに漆加工が用いられ、漆が塗られた棺などが見つかっています。

平安時代(794年~1185年)に、宮廷内での漆器の使用が日常化し、朝廷直轄の漆工芸が始まりました。
鎌倉時代(1185年~1333年)から室町時代(1336年~1573年)には漆塗りの新技法が誕生し、数多くの名品が生まれました。
安土桃山時代(1573年~1603年)になると、南蛮文化の到来したことで欧風モチーフの作品も作られるようになり、江戸時代(1603年~1868年)には庶民の間でも日用品として普及しました。
諸外国に輸出されるようになり、欧州の王侯貴族から高い評価を得ました。
大正(1912年~1926年)から昭和(1926年~1989年)にかけて、皇室が海外の国賓にお土産として漆器を用いるようになったことで、輸出品の重要項目となりました。
それと同時に、輸入品として漆器よりも安価で大量生産できる器物も入ってきて、庶民の生活から漆器が遠のいてしまったそうです。
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漆塗りの意味とは?

漆塗りとは、漆を器物に塗ることや、器物そのもののことをいい、漆を塗る職人のことを「塗師(ぬし)」といいます。
漆はウルシの木の年代や産地で成分が異なり、乾く時間や粘度の性質が異なります。
この性質を把握し、使用目的に適した塗り重ね方をすることで、美しく、丈夫で長持ちする器物が出来上がります。
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英語でjapanの意味はうるし?
英語で「Japan」というのは、日本のことですよね。
しかし、すべて小文字で「japan」と書くと、その意味は「うるし」のことになります。
ほかにも、うるしは「Japan lacquer」と書くこともあります。
江戸時代に漆器が輸出されるようになり、欧州の王侯貴族から高い評価を受け、日本は積極的に漆器を輸出するようになりました。
数多くの漆器を輸入するようになった欧州では日本の漆器を「japan」と呼ぶようになり、一般的にも広がったといわれています。
11月13日は「うるしの日」

文徳天皇
平安時代に文徳(もんとく)天皇の第一皇子・惟喬(これたか)親王が京都嵐山の法輪寺に参籠(さんとう・神社や仏堂など一定の期間の昼夜、引き籠って神仏に祈願すること)し、満願の日の11月13日に漆の製法を菩薩から伝授された伝説が由来となっています。
「うるしの日」は1985(昭和60)年に日本漆工芸協会によって制定された記念日です。
毎年11月13日は昔から漆関係者の祭日であり、親方が職人に酒や菓子などを配り労をねぎらう日だったそうです。
日本の漆や漆器の歴史がとても古いことがわかりましたね。
2011年に北海道でおよそ9000年前の漆器が出土するまで、最古のものは中国で発掘されたおよそ7000年前のもの・・・といわれていました。
9000年、7000年、どちらも気が遠くなりそうなほど昔の話ですよね。
現在はあまり日用品として使われていませんが、長い歴史を持った漆器は、見た目も美しく丈夫で長持ちすると愛用されていた時代もあったのです。
みなさんの生活の中にも、漆器を取り入れてみてはいかがでしょうか?
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