日本人は、麺類が大好きですよね。
麺類というと、うどん、ラーメン、そうめんなどいろいろ思い浮かびますが、日本人にとって最も馴染み深い麺類は、「そば」ではないでしょうか。
そばと一言でいっても、いろんなそばがありますが、
「ざるそば」
「もりそば」
「せいろそば」
は何がどう違うのかご存知ですか?
今回は、この三種類のそばの違いについてわかりやすく解説します。
そばの歴史
そばは縄文時代(紀元前131世紀ごろ~紀元前4世紀ごろ)に栽培が始まったといわれています。
高知県内では9000年以上前の遺跡からそばの花粉が見つかり、埼玉県内でも3000年前の遺跡からそばの種子が見つかっています。
そばといえば麺の形状を思い浮かべますが、16世紀ごろまでは麺ではなく、「そばがき」や「そばもち」といった餅状の食べ物でした。

餅状のそば
麺のそばは、包丁で切って作ることから「そば切り」と呼ばれていました。
そば切りは、天正2年(1574年)の書物に登場していることから、16世紀ごろに誕生したと考えられています。
また、このころは「つなぎ」を使わず、そば粉だけで作られていたました。
そば粉だけの「そば切り」は切れやすかったため、江戸時代になると小麦粉をつなぎとして使うようになりました。
関東の土壌はそばの栽培に適していたことから、江戸ではそば屋が増えていき、江戸っ子たちに定着していきます。
そのころの食べ方は「そば切りをツユに付けて食べる」というものでした。
しかし、せっかちな江戸っ子たちは「ツユをそば切りにかければ、器がひとつでいいし、すぐに食べられる」と、ツユをそのままそば切りにかけて食べ始め、「ぶっかけそば」としてお店でも提供されるようになりました。
「ぶっかけそば」は、現在の「かけそば」の由来になっています。

かけそば
そして、もともとのそば切りにツユに付ける食べ方は「ぶっかけそば」と区別するために「もりそば」と呼ぶようになりました。
「もりそば」は「盛りそば」と書き、そば切りの麺をそのまま器に盛って出すことに由来しています。

もりそば
江戸時代中期ごろになると、深川(現在の東京都江東区)の「伊勢屋」というお店が、初めて「ざるそば」を提供したといわれています。
「ざるそば」は、竹ざるにそばを盛り、「もりそば」よりも高級なそばという意味で、海苔をかけ、「ざるつゆ」という特別なツユを作ったそうです。

ざるそば
江戸時代後期ごろになると、「せいろそば」が誕生します。
「せいろそば」の「せいろ」は「蒸籠」と書きます。

蒸籠
「蒸籠」は蒸し料理に使う調理器具ですが、つなぎを使うようになる前のそばは切れやすかったので、江戸時代初期のころはそばを蒸籠で蒸していたそうです。
しかし、つなぎを使って切れにくくなったので、そばは茹でるようになり、蒸籠は蒸すという用途ではなく、そばの器として使われるようになりました。
下の画像は、そばの器として蒸籠が使われている例です。
(木製・竹製の蒸籠の側面に漆塗りやウレタン塗装をしたものやABS樹脂製のものもあります。)

もりそば または せいろそば
天保年間(1831年~1845年)、幕府が蕎麦の値段を決めていたため、そば屋は幕府にそば代金の値上げを申請しましたが許されませんでした。
そのためそば屋は、蒸籠のすのこを「そばの量を減らして単価をあげる」という目的で「底上げ」のために使い始め、「せいろそば」という名前で見た目を山盛りにして提供したそうです。
「ざるそば」「もりそば」「せいろそば」の違いとは?
では、「ざるそば」「もりそば」「せいろそば」の違いとはどんなものでしょうか?
「ざるそば」と「もりそば」の違い
一般的には、「ざるそば」と「もりそば」の違いは海苔があるかどうかです。
海苔があるのが「ざるそば」で、海苔がないのが「もりそば」です。
器が区別することはなく、竹ざる、蒸籠、皿などに盛られています。
器がざるでも海苔がなければ「もりそば」になります。
※店舗によっては「もりそば」にも海苔が乗っていることもあります。
また、老舗のお店などはざるそば用に特別な「ざるツユ」を作るそうですが、作らないお店が増えているので、味の違いはほとんどないと考えていいでしょう。
「せいろそば」と「もりそば」の違い
「せいろそば」には、海苔はありません。
また、「せいろそば」は本来、蒸籠で蒸した温かいそばのことで、蒸籠を器として使っていました。
しかし現在は、蒸籠で蒸していない冷たいそばも蒸籠を器として使っていたら「せいろそば」と呼ぶようになりました。
「もりそば」でも蒸籠を器として使うことがあるため、「せいろそば」と「もりそば」の違いは曖昧になっています。
お店には「せいろそば」と「もりそば」のどちらかがメニューにありますが、二つともがひとつのお店に存在することはありません。

ざるそば(せいろの器)
また、「ざるそば」が、蒸籠の器を使って提供される場合もあります。
これは、蒸籠は重ねて運ぶことができるため、出前の際に使用された名残だとも言われています。
但し、本来の「せいろそば」を提供するお店は「蒸しせいろそば」という名前でメニューに載せているところもあるようです。
「ざるそば」「もりそば」「せいろそば」の違いのまとめ
上記をまとめると「ざるそば」「もりそば」「せいろそば」違いで明確なものは海苔の有無だけとなります。
つまり、
海苔がなければ「もりそば」または「せいろそば」
海苔があれば「ざるそば」(蒸籠の器を使用している場合がある)
と言うことになりますね。
いずれにいたしましても現在それぞれの違いは曖昧になっているようです。

もりそば または せいろそば
それぞれの違いがわかりましたか?
縄文時代からあるといわれるそばは、江戸時代に江戸っ子たちがいろんな食べ方で愛していた歴史があるからこそ、今私たちが食べているカタチになったのですね。
現在は違いが曖昧になっていますが、お店でそばを食べる時には、そのそばがどういう風に誕生したのか思い出してみてくださいね。
今まで以上にそばが好きになるかもしれませんよ。
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コメント
コメント一覧 (2件)
ありがとう。
ずっと思っていた謎が解けました。
コメントありがとうございます!
内容を少し修正いたしましたのでご覧いただけますと幸いです。