
日本の古い音楽のひとつに雅楽があります。
あまり馴染みのない楽器が使われていて、聴く機会が少ない雅楽ですが、一体どのような音楽なのでしょうか?
雅楽の楽器の種類と歴史、どこで聴けるのかについて解説します。
雅楽とは?
読み方は「ががく」です。
日本の宮廷音楽や舞踊を中心とする、伝統芸能のひとつです。
雅楽は宮中で受け継がれてきた日本の伝統芸能です。
楽器を演奏するだけではなく、舞や歌も含まれます。
日本に古くから伝わる歌や舞に、中国大陸や朝鮮半島を経て伝わった音楽や舞が加わって、平安時代(794年~1185年)に今につながる形に整えられました。
現代は「宮内庁式部職楽部(くないちょうしきぶしょくがくぶ)のほか、神社や寺院、各地の雅楽保存会などによって継承・演奏が続けられています。
雅楽は、演奏の形式によって、大きく3つに分けられます。
- 器楽合奏の管絃(かんげん)
- 舞を伴う舞楽(ぶがく)
- 声楽を中心とする歌謡(かよう)

雅楽の楽器を演奏する楽師のイラスト(笙・篳篥・龍笛・琵琶・楽太鼓)
また、雅楽は、主に次の3つの系統にわけることができます。
国風歌舞(くにぶりのうたまい)
宮中儀式や神道と深い結びつきがあります。
日本古来の歌と舞が基本となっており、平安時代以降の宮廷芸能として伝承されてきました。
国風歌舞は、
- 神楽(かぐら)
- 東遊(あずまあそび)
- 五節舞(ごせちまい)
などが代表的です。
神楽とは、神道の神事で神に奉納するための歌や舞のことです。
東遊とは、東国地方(現在の東日本または関東地方)の風俗歌が由来で「東舞」とも呼ばれています。
5つの曲からなる組曲です。
五節舞は、雅楽で唯一、女性が舞う舞です。

五節舞(ごせちのまい)(大正天皇の即位の大礼、1915年) 出典:Wikimedia Commons
外来系の舞楽
5世紀~8世紀ごろにアジア大陸から伝来したもので、平安時代に日本独自の様式に変化しました。
外来系は、
- 唐楽(とうがく)
- 高麗楽(こまがく)
などを指します。
唐楽とは、中国やインド方面が由来の音楽です。
舞楽では、唐楽系の演目を左方(さほう)と呼び、赤系統の装束を用います。

田中訥言「舞楽図」(江戸時代18世紀、東京国立博物館)左が陵王(りょうおう)、右が還城楽(げんじょうらく)。どちらも唐楽の演目で、赤系統の装束で舞う姿が描かれている 出典:ColBase

唐楽の左方の舞「陵王(りょうおう)」で使う舞楽面(重要文化財・鎌倉時代13~14世紀、東京国立博物館) 出典:ColBase
高麗楽とは、朝鮮半島や満州方面が由来の音楽です。
舞楽では、高麗楽系の演目を右方(うほう)と呼び、青緑系統の装束を用います。

高麗楽の右方の舞「納曽利(なそり)」で使う舞楽面(鎌倉時代14世紀、東京国立博物館) 出典:ColBase

高麗楽の右方の舞「納曽利」の装束、裲襠(りょうとう)。右方は青色系統の装束を基調とする(江戸時代19世紀、東京国立博物館) 出典:ColBase
歌物(うたもの)
平安時代に作られた声楽曲です。
歌物は、
- 催馬楽(さいばら)
- 朗詠(ろうえい)
などを指します。
催馬楽とは、平安時代初期ごろに庶民の間で歌われた民謡や風俗歌に外来楽器の伴奏を加えた音楽です。
朗詠とは、漢詩や和歌を楽器の伴奏に合わせて歌うものです。
出典:宮内庁「雅楽」
雅楽の歴史とは?
日本には、古来より神事や宮廷儀礼にまつわる歌や舞が存在していました。
飛鳥時代から奈良時代(710年~794年)にかけて、中国から仏教とともに外来系の舞楽、特に唐楽が中心に伝わり、日本の宮廷に取り入れられました。
701年の大宝律令の制定で、朝廷の音楽を司る部署「雅楽寮(ががくりょう・うたまいのつかさ)」が作られ、公的行事での演奏や、演奏者の養成が行われました。
出典:文化デジタルライブラリー(日本芸術文化振興会)「交流と楽舞の活況」
平安時代になると、宮廷儀式や年中行事などで雅楽が演奏されるようになり、貴族の教養として重んじられるようになりました。
宮廷では外来の音楽を唐楽(左方)と高麗楽(右方)に分類し、日本人の感性に合わせた様式に再編しました。
そして、国風歌舞や歌物などの形式も整えられ、現在の雅楽の形が完成しました。
鎌倉時代(1185年~1333年)になると武家社会となったため、宮廷の規模が縮小され楽人(がくにん・雅楽の演奏をする人)が減りましたが、宮廷儀式や神社の神事、お寺の祭典などで演奏が続けられました。
江戸時代(1603年~1868年)には、宮廷儀式だけでなく幕府関係の儀式にも雅楽が使われるようになりました。
徳川幕府の保護を受け江戸城内でも楽人が配備され、古い曲目や楽譜、演奏法が整理され、雅楽の継承体制が整えられていきました。

狩野永岳(かのうえいがく)「舞楽図屏風(ぶがくずびょうぶ)」右隻(うせき)(江戸時代19世紀、東京国立博物館) 出典:Wikimedia Commons
明治3年(1870年)、宮中の太政官(だじょうかん)に雅楽局(ががくきょく)が設置されました。
雅楽局は雅楽だけでなく洋楽も演奏し、国歌や儀礼音楽の整備を行い、伝統芸能の保存とともに近代日本の音楽制度形成にも繋がりました。
洋楽とは、ヨーロッパで発展した音楽のことで、西洋の音楽を指します。
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昭和24年(1949年)に雅楽局を継承する宮内庁式部職楽部が設置されました。
宮内庁式部職楽部の雅楽は、昭和30年(1955年)に国の重要無形文化財に指定されました。
昭和31年(1956年)から、雅楽を一般に公開するため、毎年春と秋に演奏会を催しており、現在も行われています。
昭和34年(1959年)には、ニューヨークの国連総会議場で初めての海外公演を行いました。
平成21年(2009年)にはユネスコ無形文化遺産保護条約「人類の無形文化遺産の代表的な一覧表」に記載されています。
出典:文化デジタルライブラリー(日本芸術文化振興会)「明治期の改革と第二次大戦」
出典:宮内庁「雅楽」
現在も、宮中の儀式や行事などで演奏するほか、春と秋の演奏会や地方公演なども行っています。
雅楽の楽器の種類は?
管絃で用いられる楽器は、
- 管楽器の「吹き物(ふきもの)」
- 絃楽器(げんがっき)の「弾物(ひきもの)」
- 打楽器の「打物(うちもの)」
に分類されています。
楽曲や演目によって用いられる楽器や人数編成が異なります。
基本となるのは、
- 吹き物3種類(三管)
- 弾物2種類(両絃)
- 打物3種類(三鼓)
で、これらを総称して「三管両絃三鼓(さんかんりょうげんさんこ)」と呼び、16人編成が基本です。
三管
吹き物(管楽器)の三管(さんかん)は、
- 笙(しょう)
- 篳篥(ひちりき)
- 龍笛(りゅうてき)
です。
それぞれ3人ずつ、合計9人です。
主旋律や和音など、音楽の中心的な旋律を担う役割があります。

笙(しょう)「銘 鈴虫」(管は鎌倉時代13世紀、東京国立博物館) 出典:ColBase

篳篥(ひちりき)「銘 蜩(ひぐらし)」(鎌倉時代13世紀、東京国立博物館) 出典:ColBase

龍笛(りゅうてき)「銘 占月丸(せんげつまる)」(鎌倉時代14世紀、東京国立博物館) 出典:ColBase
両絃
弾物(絃楽器)の両絃(りょうげん)は、
- 琵琶(びわ)
- 箏(そう)
です。
それぞれ2人ずつ、合計4人です。
旋律を支える役割があります。

琵琶(びわ)「銘 大虎(おおとら)」(鎌倉時代13世紀、東京国立博物館) 出典:ColBase

雅楽の舞台に置かれた箏(そう)(2006年、ハワイ大学の雅楽公演) 写真:mandolin davis(CC BY-SA 2.0) 出典:Flickr

箏(そう)を演奏する楽師のイラスト
三鼓
打物(打楽器)の三鼓(さんこ)は、
- 鞨鼓(かっこ)
- 太鼓(たいこ)
- 鉦鼓(しょうこ)
です。
それぞれ1人ずつ、合計3人です。
リズムを刻んだり、曲のテンポをコントロールしたり、演奏全体にメリハリをつけたりする役割があります。

鞨鼓(かっこ)(2018年、宮内庁式部職楽部のパリ公演) 写真:Jean-Pierre Dalbéra(CC BY 2.0) 出典:Wikimedia Commons

雅楽の太鼓(楽太鼓) 出典:Wikimedia Commons

鉦鼓(しょうこ)(19世紀、メトロポリタン美術館) 出典:The Met
雅楽はどこで聴ける?
雅楽を聴くことが出来る場所は以下のとおりです。
宮内庁の雅楽演奏会
宮内庁式部職楽部が毎年春と秋に行っている演奏会です。
春の演奏会は、文化団体や在日外交団を中心に行われます。
秋の演奏会は一般の人が対象で、事前申し込みが必要です。
希望者が多い場合は抽選となります。

舞楽の伴奏をつとめた宮内庁式部職楽部の楽師たち(2018年、パリ公演) 写真:Jean-Pierre Dalbéra(CC BY 2.0) 出典:Wikimedia Commons
神社やお寺の神事や祭礼
日本各地の神社やお寺で雅楽が奉納演奏されています。
雅楽を演奏する団体は、神社やお寺に所属していたり、一般の団体などさまざまです。
たとえば、
- 伊勢神宮は、例年、春の神楽祭(4月28~30日)と秋の神楽祭(9月22~24日)
- 明治神宮は、例年、春の例大祭(4月29日~5月3日)と秋の例大祭(11月1~3日)
- 日光東照宮は、例年、春季例大祭(5月17、18日)と秋季大祭(10月16、17日)
などがあります。

伊勢神宮内宮の神宮舞楽(じんぐうぶがく) 写真:N yotarou(CC BY 2.5) 出典:Wikimedia Commons
雅楽団体の演奏会
有名な雅楽団体をいくつかご紹介します。
●伶楽舎(東京都)
昭和60年(1985年)創立の団体です。
合奏の研究を目的としており、復曲や復元古楽器での合奏、現代曲の演奏、ワークショップや各公演活動を行っています。
●日本雅楽會(東京都)
昭和37年(1962年)創立の団体です。
国内外での公演を多数行っています。
●東京楽所(東京都)
昭和53年(1978年)創立の団体です。
国立劇場主催の雅楽公演のほか、国内外で活動しています。
●大阪楽所(大阪府)
昭和57年(1982年)創立の団体です。
東京楽所の姉妹団体です。
●洋遊会(富山県)
江戸時代の1861年に「暢日連(ちょうにちれん)」が結成され、大正8年(1919年)に「洋遊会」として新たな組織となりました。
祭事などのほか、海外公演なども行っています。
●筑紫楽所(福岡県)
昭和62年(1987年)に発足した団体です。
寺社の法要のほか、国内外での公演などを行っています。

雅楽の歴史はとても古いことがわかりましたね。
テレビやラジオなどではあまり聴く機会がありませんので、馴染みのない方も多いでしょう。
しかし、大規模な御祈祷や法要でも雅楽が演奏されることがあり、神社やお寺で雅楽に触れることができます。
雅楽の団体も演奏会を行っていますので、雅楽を聴いてみたい方はぜひ公式サイトなどをご確認ください!
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