
習い事や学校の授業で「書道」や「習字」を経験した人は多いと思います。
では、書道と習字の違いとはなんでしょうか?
今回は、書道の歴史、書体の種類をわかりやすく解説いたします。
書道とは?
読み方は「しょどう」です。
書道は、文字を通して美しさや自分の感性を表現する芸術です。
主に使うのは、動物の毛などを穂先に使った「毛筆(もうひつ)」と墨です。
また、万年筆やボールペンなど、先の硬い筆記具である「硬筆(こうひつ)」も使われ、ペンを使った書道は「ペン書道」とも呼ばれます。
出典:日本ペン習字研究会「全日本ペン書道展」作品公募のご案内
毛筆で使う「筆・墨・硯(すずり)・紙」の四つは、まとめて「文房四宝(ぶんぼうしほう)」と呼ばれます。

筆・墨・硯・紙は、文具店や書道用品店などで購入できます。
近くに書道用品店がない場合は、通販でも購入できます。
習字とは?
読み方は「しゅうじ」です。
習字は、お手本を見ながら文字の書き方を練習することです。
たとえば、習字教室で先生に教わったり、お手本を見ながら自分で練習したりします。
習字でも、毛筆と硬筆の両方を使います。

小学校・中学校で学ぶ習字は、正式には「書写(しょしゃ)」と呼ばれ、国語の授業に含まれます。
文字の書き方や筆記具の使い方などを身につけることが主な目的です。
学校の授業で学ぶのは?
すでに説明したとおり、小学校・中学校では、学習指導要領に基づき、国語の授業で「書写」を学びます。
学習指導要領とは、全国どこの地域で教育を受けても一定水準の教育を受けられるようにするためのものです。

小学校では1年生から硬筆を学び、毛筆が加わるのは3年生からです。
中学校では全学年で毛筆と硬筆の両方を学びます。
出典:文部科学省「中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 国語編」(小学校の内容も掲載)
高校では、原則として音楽・美術・工芸・書道のうち、いずれか一つの授業を選択して受けます。
選べる授業は学校によって異なり、すべての学校でこの4種類から自由に選べるとは限りません。
高校の「書道」でも、目的や用途に応じて硬筆を取り上げます。
出典:文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 芸術編」
小学校・中学校の書写では、文字を正しく読みやすく書くことを学びます。
高校の「書道」では、小中学校で身につけた文字を書く力を土台に、芸術としての表現や鑑賞を学びます。
書道と習字の違いとは?
一般に、書道では芸術としての表現や鑑賞に、習字では文字の書き方を身につけることに重点が置かれています。
ただし、学ぶ内容は重なるため、はっきり二分できるものではありません。
●お手本の使い方
書道では、古典の筆遣いや字形を学ぶ「臨書(りんしょ)」も、自分の表現を探る「創作」も大切にします。
習字では、お手本を参考に、字形や筆遣い、文字の整え方などを練習します。
●重視すること
書道は、全体のバランスや文字の配置、濃淡など、表現を重視します。
習字は、字形や筆順、とめ・はね・はらい、読みやすさなどを重視します。
出典:文部科学省「高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 芸術編」
書道と習字の段位とは?
書道教室や習字教室には、上達の目安として「段級位制(だんきゅういせい)」を採用しているところがあります。
段級位制は、実力や熟練度を「級」や「段」で示す仕組みです。
級や段の数、進み方、師範(しはん)の認定条件は、団体ごとに異なります。
師範は、各団体が定める基準により、指導者として認定する資格です。
たとえば、日本書道教育協会の高校一般部では、10級から1級、準初段を経て初段へ進み、段位は10段まであります。
さらに準師範・師範の認定があります。
関連:「段」は数字が大きいほど上なのに「級」は数字が小さいほど上なのはなぜ?
書道と習字の歴史とは?
書道の起源は中国です。
中国で使われた古い漢字の例に、紀元前13世紀ごろの甲骨文字(こうこつもじ)があります。

文字が刻まれた甲骨(殷の時代・紀元前13~前11世紀、東京国立博物館) 出典:ColBase
漢字の発展とともに、文字の形や筆遣いを美しく表す文化も育まれました。
文字を美しく書くことを「書(しょ)」といいます。
日本の書は、中国から伝わった漢字や書の技法を土台として発展しました。
仏教の伝来後、飛鳥時代から奈良時代にかけて写経(しゃきょう)が盛んになり、整った文字で経典を書き写す技術が発達しました。
写経は、経典を複製したり広めたりする目的のほかに、仏教の修行の意味もありました。
平安時代以降の書道
平安時代(794年~1185年)にひらがなが誕生しました。
漢字をもとにしたひらがなは、和歌や物語などに使われるようになりました。
また、漢字の書にも日本独特の和様(わよう)という書風(しょふう)が育まれました。
和様とは、日本風に発展した書のスタイルを指す書道用語です。
書風とは、文字の書きぶりや筆跡の雰囲気・個性を指す書道用語です。
つまり、平安時代には日本独特の書道様式が確立したということです。
関連:漢字、ひらがな、カタカナの歴史や起源とは?ひらがな、カタカナの由来と成り立ち
平安時代初期には、「三筆(さんぴつ)」と呼ばれる書の名人3人がいました。
●空海(くうかい・774年~835年、僧侶)
●嵯峨天皇(さがてんのう・786年~842年、第52代天皇)
●橘逸勢(たちばなのはやなり・生年不詳~842年、貴族)
遣唐使を通じて、唐(とう・現在の中国)の書風が日本に伝わった時期です。
三筆は中国の書法を学び、それぞれの書風を発展させました。

空海の「金剛般若経開題残巻(こんごうはんにゃきょうかいだいざんかん)」(国宝・平安時代9世紀、京都国立博物館) 出典:ColBase
中国風の書は「唐様(からよう)」と呼ばれます。
唐代の書だけを指す言葉ではありません。
平安時代中期には、「三蹟(さんせき・三跡)」と呼ばれる書の名人3人がいました。
●小野道風(おののみちかぜ・894年~966年、貴族)
その筆跡は、「小野」の「野」をとって「野蹟(やせき)」と呼ばれています。
●藤原佐理(ふじわらのすけまさ・944年~998年、公卿)
その筆跡は、「佐理」の「佐」をとって「佐蹟(させき)」と呼ばれています。
●藤原行成(ふじわらのゆきなり・972年~1027年、公卿)
権大納言(ごんだいなごん)という役職だったことから、その筆跡は「権蹟(ごんせき)」と呼ばれています。

小野道風の「屏風土代(びょうぶどだい)」(国宝・延長6年〈928年〉、皇居三の丸尚蔵館) 出典:ColBase

藤原行成の「白氏詩巻(はくししかん)」(国宝・寛仁2年〈1018年〉、東京国立博物館) 出典:ColBase
三蹟は中国の書を受け継ぎながら、日本独特の和様を大成させた人々として知られています。
「習字」という言葉は、室町時代ごろから使われるようになったとされています。
江戸時代には寺子屋が普及し、庶民や子どもたちが読み書きや計算を学びました。

寺子屋で重視された「手習い(てならい)」は、手本を見ながら文字を書き習うことです。
文字を繰り返し書いて学ぶ習慣が、広く親しまれるようになりました。
出典:文化庁「生活文化調査研究事業(書道)報告書」第1章第1節
明治時代になると、学校教育に「習字」が取り入れられました。
また、書が博覧会や展覧会で展示されるようになり、多くの人が作品を鑑賞する機会も広がりました。
学校教育では「習字」「書き方」などの呼び方が使われましたが、昭和33年(1958年)の学習指導要領で「書写」という名称になりました。
現在も、学校外では「習字教室」など、「習字」という名称が広く使われています。
出典:文化庁「生活文化調査研究事業(書道)報告書」第1章第1節・第3節
書体の種類をわかりやすく解説
漢字の代表的な書体には、篆書・隷書・楷書・行書・草書があり、まとめて「五体(ごたい)」と呼ばれます。
書道では、このほかに仮名なども学びます。
●篆書(てんしょ)

古代中国の文字をもとにした書体です。
左右対称に近い構成で、丸みを帯びた複雑な線が特徴です。
身近なものでは、パスポートの表紙に書かれている「日本国旅券」の文字が篆書です。
●隷書(れいしょ)

篆書を書きやすくしたのが隷書です。
横長の形と、特徴的な横線を持つ古典的な書体です。
身近なものでは、紙幣の「日本銀行券」「壱万円」などに、隷書をもとにした独特の書体「大蔵隷書(おおくられいしょ)」が使われています。
●楷書(かいしょ)

点画を一画ずつはっきりと書く、最も標準的な書体です。
正方形に近い整った形をしており、点画が明確なのが特徴です。
学校の書写で基本として学ぶ書体です。
教科書などの「教科書体(きょうかしょたい)」は、楷書の字形をもとにした印刷書体です。
新聞や一般の書籍でよく使われる「明朝体(みんちょうたい)」とは区別します。
●行書(ぎょうしょ)

楷書よりも筆の流れを生かした書体です。
点画を続けたり一部を省略したりしながら、読みやすさも保つのが特徴です。
身近なものでは、店舗や看板などの文字、神社やお寺の御朱印などで使われています。
●草書(そうしょ)

点画を大きく省略し、筆の動きを連続させて書く書体です。
流れるような形が特徴です。
ただし、行書をさらに崩して作られた書体というわけではありません。
省略や連続が多いため、慣れていないと読むことが大変難しいです。
出典:台東区「台東鳥瞰 第6号」書道博物館・漢字の五つの書体
書道と習字がどのようなものかわかりましたね。

書道も習字も、主に子どもの習い事という印象が強いですが、大人になってから教室に通う人もいます。
「書道教室」「習字教室」という名称だけで、教える内容が決まるわけではありません。
読みやすい文字の基礎を学ぶ教室も、古典の臨書や作品制作まで扱う教室もあります。
実際の指導内容を確かめて選ぶとよいでしょう。
美しい文字を書いてみたい、自分を表現したい、そういう想いがある方は、ぜひ一度体験教室に行ってみてはいかがでしょうか。
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