日本には数えきれないほど多くの神社があります。
その中でも「三大神社」と呼ばれているのがあり、特に格式が高いといわれています。
「伊勢神宮」と「出雲大社」ですが、三大神社のあと1つはどこでしょう?
神社の格付け一覧もご紹介します。
神社の格付けとは?
神社の格付けは古代より何度か行われてきましたが、最も新しいものは明治4年(1871年)の「近代社格制度(きんだいしゃかくせいど)」です。
近代社格制度は、平安時代(794年~1185年)の「延喜式神名帳(えんぎしきじんみょうちょう・927年)」を参考に、日本全国の神社を規模や格式などで格付けしたものです。
延喜式神名帳とは、祭祀(さいし・神や祖先を祀ること)の重要性や地域的影響などを基準に国が認めた神社を一覧にしたもので、延喜式神名帳に記された神社は社格(しゃかく)が与えられていました。
社格とは、神社の格付けです。
近代社格制度によって決められた社格は以下のように大きく4つありました。
- 神宮
- 官社(かんしゃ)
- 諸社(しょしゃ)
- 無格社(むかくしゃ)
詳細は後ほど説明します。
近代社格制度は、第二次世界大戦後の昭和21年(1946年)にGHQ(連合国最高司令官総司令部)によって廃止されました。
廃止された理由は、明治時代から戦時中まで政府によって管理されていた神道のことを「国家神道」といいますが、国が神道・神社を通して国民の思想や忠誠心をコントロールするのを断ち切るため、国と神道を分離するのが目的でした。
そのため、現在は社格はなくなり、すべての神社が平等とされていますが、人々の心の中では近代社格制度の順番が引き継がれています。
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社格による格付け
社格を順位が高い順にご紹介します。
神宮(じんぐう)
伊勢神宮の正式名称は「神宮」です。
ほかの神宮と区別するために「伊勢神宮」と呼ぶのが一般的です。
便宜上「神宮」を一番高い社格として紹介していますが、すべての神社の中で最も社格が高い伊勢神宮は「全ての神社の上にあり、社格のない特別な存在」とされており、他の神社と比べられるものではなく、「別格」として扱われています。
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官社(かんしゃ)
天皇や皇族とゆかりのある神社など、歴史的・国家的に重要であり、朝廷や天皇から特別な扱いを受けた神社です。
官社は、さらに「官幣社(かんぺいしゃ)」と「国幣社(こくへいしゃ)」に分けられ、それぞれ大中小に分類され、以下のような序列になっていました。
官幣大社>国幣大社>官幣中社>国幣中社>官幣小社>国幣小社>別格官幣社
官幣社とは、朝廷が直接管理を行う神社です。
国幣社とは、地方にあり朝廷から派遣された人が管理する神社です。
諸社(しょしゃ)
神宮、官社以外の神社を指しており、地域が管理していました。
諸社は
- 都道府県レベルで重要とされた「府社」と「県社」
- 郡レベルで重要とされた「郷社」
- 村レベルで重要とされた「村社」
があり、以下のような序列になっていました。
府社=県社>郷社>村社
無格社(むかくしゃ)
公式に認められた神社ではあるものの、規模が小さいなどの理由で社格を与えられなかった神社です。
その多くは明治時代末期の神社合祀(じんじゃごうし)で廃社となりました。
神社合祀とは、数が多かった神社を減らすために複数の神社を合併させた政策で、神社整理とも呼ばれています。
神社の格付け一覧
社格の格付順に、有名な神社を一覧にしました。
神宮
- 伊勢神宮(三重県伊勢市)
官社
官幣大社
- 明治神宮(東京都渋谷区)
- 香取神宮(千葉県香取市)
- 熱田神宮(愛知県名古屋市)
- 下賀茂神社(京都府京都市)
- 出雲大社(島根県出雲市)
- 筥崎宮(福岡県福岡市)
- 霧島神宮(鹿児島県霧島市)
など
国幣大社
- 熊野大社(島根県松江市)
- 大山祇神社(愛媛県今治市)
- 気多大社(石川県羽咋市)
など
官幣中社
- 熊野那智大社(和歌山県東牟婁郡)
- 北野天満宮(京都府京都市)
- 厳島神社(広島県廿日市市)
- 太宰府天満宮(福岡県太宰府市)
など
国幣中社
- 函館八幡宮(北海道函館市)
- 鶴岡八幡宮(神奈川県鎌倉市)
- 金刀比羅宮(香川県仲多度郡)
- 海神神社(長崎県対馬市)
など
官幣小社
- 大國魂神社(東京都府中市)
- 竈門神社(福岡県太宰府市)
- 波上宮(沖縄県那覇市)
など
国幣小社
- 岩木山神社(青森県弘前市)
- 出羽神社(山形県鶴岡市)
- 秩父神社(埼玉県秩父市)
- 日御碕神社(島根県出雲市)
- 都農神社(宮崎県児湯郡)
など
別格官幣社
- 上杉神社(山形県米沢市)
- 靖国神社(東京都千代田区)
- 久能山東照宮(静岡県静岡市)
- 豊国神社(京都府京都市)
など
諸社
府社・県社
- 北海道護国神社(北海道旭川市)
- 仙台東照宮(宮城県仙台市)
- 島天満宮(東京都文京区)
- 西宮神社(兵庫県西宮市)
- 祐徳稲荷神社(佐賀県鹿島市)
など
郷社
- 札幌伏見稲荷神社(北海道札幌市)
- 浅草神社(東京都台東区)
- 今宮戎神社(大阪府大阪市)
- 神谷神社(香川県坂出市)
- 鷲尾愛宕神社(福岡県福岡市)
など
村社
- 笠間稲荷神社(茨城県笠間市)
- 川越八幡宮(埼玉県川越市)
- 来宮神社(静岡県熱海市)
- 比治山神社(広島県広島市)
- 高千穂神社(宮崎県西臼杵郡)
など
無格社
- 樽川神社(北海道石狩市)
- 猿田彦神社(三重県伊勢市)
- 塩釜神社(長野県松本市)
- 金蛇水神社(宮城県岩沼市)
- 岩津天満宮(愛知県岡崎市)
など
社号の格付けとは?
神社の格付けには「社号(しゃごう)」というものもあります。
社号とは、神社の名称の「〇〇神宮」「〇〇大社」「〇〇天満宮」「〇〇東照宮」「〇〇神社」などのことです。
社号は神社の歴史、役割、社殿の大きさ、社格などを考慮して決められているため、社号にも社格の影響があります。
社格が高いと社号の格付けも高くなりますが、例外もあります。
社号と社格の違いは
- 社号は、神社の名称であり社格とは別の格式
- 社格は、近代社格制度で決められた神社の格付け
ということになります。
以前は社号にも格付けがありましたが、近代社格制度と同じ理由でGHQによって廃止され、現在はありません。
社格と同じく、人々の心の中では廃止される前の順番が引き継がれています。
社号の格付けが高い順に紹介します。
神宮(じんぐう)
社号で最も格付けが高いのが「神宮」です。
皇室とゆかりの深い由緒ある神社の社号です。
宮(みや・ぐう)
神宮に次いで格付けが高く、特別な由緒を認められた神社の社号です。
大神宮(だいじんぐう)
伊勢神宮の内宮(ないくう・天照大御神をお祀りしているところ)を指します。
広い意味では、伊勢神宮と同じ御祭神(ごさいじん)を祀る神社の社号です。
大社(たいしゃ)
地域信仰の中心となる格付けが高く規模の大きな神社の社号です。
神社(じんじゃ)
一般的な神社に用いられる社号です。
社(しゃ)
神社の略称で比較的小さな規模の神社の社号です。
社号についての詳細はこちらをご覧ください。
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社格と社号の対応
社格と社号の対応は基本的に以下のとおりです。
社号 | 社格 |
伊勢神宮以外の「神宮」と社号が付く神社 | 官幣大社、官幣中社が多い |
出雲大社など「大社」と社号が付く神社 | 官幣大社、国幣大社が多い |
八幡宮、天満宮など「宮」と社号が付く神社 | 官社、府社、県社などさまざま |
「大神宮」は伊勢神宮の内宮のこと | 対応する社格がありません |
「神社」と社号が付く一般的な神社 | 府社、県社、郷社、村社が主 |
小規模な「社」 | 郷社、村社、無格社が多い |
日本の三大神社は「伊勢神宮」「出雲大社」あと1つは?
日本の三大神社のうちふたつは「伊勢神宮」と「出雲大社」です。
伊勢神宮は、これまでも説明したように特別な神社であり、別格です。
出雲大社は、日本最古の歴史書とされる古事記(こじき・712年)にも登場し、縁結びや国造り信仰の中心となっている神社です。
残りのひとつはいくつかの候補があります。
- 熱田神宮(愛知県名古屋市)
- 石上神宮(奈良県天理市)
- 香取神宮(千葉県香取市)
- 鹿島神宮(茨城県鹿嶋市)
- 春日大社(奈良県奈良市)
- 住吉大社(大阪府大阪市)
- 明治神宮(東京都渋谷区)
- 石清水八幡宮(京都府八幡市)
日本の三大神社は複数の候補があることがわかりましたね。
現在は神社の格付けはないといわれていますが、伊勢神宮が別格であることに変わりはないようです。
また、神社の由緒などを調べると、その神社の昔の社格が記されていることもあります。
昔はどうだったのか知りたい方は、神社の公式HPや、神社境内の案内看板などを確認してみてくださいね!
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