秋の心地よい気候から、冬の寒さ厳しい気候へ移り変わる頃、「木枯らし一号が吹きました」というニュースを見聞きするようになりますね。
木枯らし一号のニュースの時期から、なんとなく「冬のもの」と思っている人も多いと思いますが、意味や由来をご存知ですか?
今回は「木枯らし」についてわかりやすく解説します。
「木枯らし」の読み方と意味とは?
木枯らしの 読み方は「こがらし」です。
漢字一文字で「凩」と書くこともあります。
「木枯らし」とは、秋から冬へと変わる時期に吹く北寄り(北の方向から吹いてくる)の強く乾いた冷たい風のことで、冬の到来を告げる風です。
語源は「木の葉を落とし、枯らすほどの風」という意味から来ているそうです。
「木枯らし」が吹く仕組みは、日本列島の地形が大きく関係しています。
まず、日本では秋から冬にかけて、低気圧と高気圧が交互に通過しながら、西高東低の冬型の気圧配置になります。
冬型の気圧配置になると、ユーラシア大陸から湿った冷たい空気が吹いてきます。
日本列島の中央部には連山があるため、この湿った空気は山にぶつかり、上昇し、冷やされ、日本海側で雨や雪が降らせます。
その後、湿り気のなくなった冷たい空気が山を越えるため、太平洋側では乾いた冷たい風が吹きます。
これが「木枯らし」です。
「木枯らし一号」は、その年の最初に吹いた「木枯らし」のことです。
日本各地で吹く可能性があるのですが、関東地方(東京)と近畿地方(大阪)で2箇所でしか発表されず、他では記録されません。
関東地方と近畿地方では「木枯らし一号」の条件が少しだけ異なります。
●関東地方(気象庁が発表)
10月中旬から初冬11月末の間に、西高東低の冬型の気圧配置となって初めて吹く、毎秒8メートル以上の北よりの風
●近畿地方(大阪管区気象台が発表)
霜降(そうこう・二十四節気のひとつ 10月24日ごろ)から冬至(とうじ・12月22日ごろ)の間に、西高東低の冬型の気圧配置になって初めて吹く、最大風速8メートル以上の北よりの風。
「木枯らし一号」は、平均すると関東では11月8日ごろ、関西では11月7日ごろに吹くといわれており、立冬(りっとう・冬の始まり。11月7日ごろ)に重なり、冬の到来を告げる言葉になっています。
同じような現象で「春一番」を思い浮かべた人もいらっしゃるかもしれません。
「木枯らし一号」と「春一番」では、風が吹く季節と向きが違います。
「木枯らし一号」も「春一番」も、どちらも季節の変わり目に吹く秒速8メートル以上の風ですが、「春一番」が吹くのは立春(りっしゅん・2月4日ごろ)から春分(しゅんぶん・3月21日ごろ)の間です。
また、「木枯らし一号」が北寄りの風なのに対し、「春一番」は南寄りの風(南の方向から吹いてくる風)という違いもあります。
「木枯らし」はいつの季節の季語?
「木枯らし」は冬の到来を告げる強い風なので、初冬の季語になっています。
有名な俳句は次のものがあります。
●松尾芭蕉
『木枯に 岩吹とがる 杉間かな』
(こがらしに いわふきとがる すぎまかな)
松尾芭蕉が、三河(現在の愛知県)の蓬莱寺山で詠んだ俳句で、
「冷たい木枯らしが杉の木の間を吹き通ってゆく。樹間から見え隠れしている岩がとがって見えるほどの風の強さである。」
という意味です。
英語で何ていうの?
英語圏には日本の「木枯らし」と全く同じ意味をもつ言葉はないようですが、英語で伝えるときは
「cold wind」
「cold wintry wind」
となります。
wintryは「冬のような」という意味です。
「木枯らし一号」は冬の到来を告げる言葉だったのですね。
その単語を見聞きするだけで、私たち日本人は季節を感じたり、季節の移り変わりを実感することができるって素敵だと思いませんか?
木枯らしが吹く季節は、日々の天気予報で天気図を見ながら、西高東低になっているか確認して「今日は木枯らし一号が吹きそうだ!」と自分で予想をしてみると楽しいかもしれませんね。
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