
寒い季節はこたつが恋しくなりますよね。
こたつに入ってみかんを食べて、ちょっと横になっていたら気持ち良くてそのまま眠ってしまった・・・という経験をされた方も多いのではないでしょうか?
童謡「雪」に「猫はこたつで丸くなる」という歌詞があるように人間だけではなく猫も大好きなこたつですが、寒くなったから出すというわけではなく「この日に出すと良い」といわれている日があるようですよ。
今回は、寒い季節に欠かせない暖房器具のこたつについてわかりやすく解説します。
こたつの歴史と起源とは?
こたつの漢字表記は「炬燵」や「火燵」のほか「火榻」とも書きます。
語源は、こたつのやぐらの部分が、牛車を降りるときに使う「榻(しじ)」と呼ばれる踏み台に似ていることから来ています。
「榻」という漢字に椅子などの道具につけられる接尾語「子」を付け、禅僧が唐音で呼んだ「火榻子(クヮタフシ)」が最も有力な説だと言われています。

こたつは室町時代(1336年~1573年)に登場したといわれています。
そのころは囲炉裏(いろり)の火力を落として台を置き、着物をかぶせたものだったそうです。

囲炉裏(いろり)
江戸時代(1603年~1868年)になると囲炉裏の上に櫓(やぐら)を組み布団をかけた「やぐらこたつ」で暖を取るようになりました。

明治時代(1868年~1912年)になると、囲炉裏(いろり)を床より下げて作り、床と同じ高さに櫓を組み布団をかけ、足を入れられる掘りごたつが登場しました。
この頃までの熱源は、木炭や炭団(たどん・炭の粉末とつなぎとなる素材を混ぜ合わせて団子状にし、乾燥させた燃料)などでしたが大きな問題を抱えていました。
それは火事と一酸化炭素中毒の危険性があることです。
幼い子供が亡くなることも、多々あったといわれています。

炭団(たどん)
電気ごたつは大正時代後期にはすでに発売されていましたが普及しませんでした。
戦後に現在のものと同じ机式のやぐら式こたつ(置きこたつ)が発売されました。

掘りごたつのように畳を切って炉を作る必要がないので好きな場所へこたつを置き、足を伸ばすことができたことから爆発的に売れました。
また、赤外線の輻射熱を利用し点灯と同時に暖かさが得られ、視覚的にも暖かい赤外線ランプ式のタイプが人気となり主流となっていきました。
こたつを出すのは戌の日?亥の日?
こたつを出す日は「亥(い)の日」です。
江戸時代には亥の月亥の日を「炬燵(こたつ)開き」と呼んで、この日にこたつを使い始めたと言われています。
武家では、「最初の亥の月亥の日」に暖房器具を出したといわれ、「二番目の亥の月亥の日」は庶民が出したそうです。
「亥の月」とは旧暦の10月のことで、新暦が採用されて以降は、一ヶ月遅らせた11月の最初の亥の日になります。
亥の日は毎年異なりますので後ほど紹介いたします。

「亥(い)」はイノシシのことです。
摩利支天(まりしてん・仏教の守護神)の神使といわれ、イノシシは火を免れる(火災が起こらない)と考えられていました。

摩利支天
「亥」は陰陽思想(いんようしそう・この世のすべてのものを陰と陽に分類する思想)では「陰」に当てはまることから、火を弱める(火を制御する)と考えます。
また、五行思想(ごぎょうしそう・万物は木、火、土、金、水の五種類の元素からなるという自然哲学の思想)では「水」に当てはまります。
五行思想では、以下のとおり「水は火を消す」と考えます。

これらのことから、亥の日に暖房器具を使い始めることで家の防火を祈ったのです。
亥の日に出すと火事にならないという言い伝えは、各地の郡誌や市誌に残っています。
兵庫県の武庫郡誌は、次のように書いています。
「此日炬燵を開けば火の用心よしと言ひ傳ふ」
出典:『武庫郡誌』武庫郡教育会、大正10年(1921年) 国立国会図書館デジタルコレクション
愛媛県の今治市が昭和18年(1943年)にまとめた市誌には、次のように書かれています。
「此日一般に炬燵開きをする。此日開けば火の過ちが無いといふのである」
出典:『今治市誌』今治市、昭和18年(1943年) 国立国会図書館デジタルコレクション
また、明治19年(1886年)の『万代大雑書三世相』には、「炬燵開き吉日」という項目が載っており、十月の中の亥の日をこたつ開きの吉日とする記述があります。
参考:『万代大雑書三世相』明治19年(1886年) 国立国会図書館デジタルコレクション
戌の日は間違い?
「こたつを出すのは戌(いぬ)の日」と聞いたことのある方もいらっしゃるのではないでしょうか?
これは思い違いではなく、実際に各地で伝えられていた言い伝えです。
昭和19年(1944年)に全国の子どもの言い伝えを調べた報告書は、暦にまつわる言い伝えの実例として
「戌の日に炬燵開きすると、火事にかからない」
という一文を挙げています。
出典:関寛之『日本児童宗教の研究』彰考書院、昭和19年(1944年) 国立国会図書館デジタルコレクション
また、長野県内の民俗調査でも、10月上旬の戌の日にこたつを出したという記録が残っています。
「10月上旬の戌の日に作った。犬はずくがあってこたつなどに入っていないからだという」(三水村)
「ずく」は長野県の方言で、根気や粘り強さのことです。
出典:国立国会図書館 レファレンス協同データベース「〝戌の日〟にこたつを作るのは何故か知りたい」(県立長野図書館)
ただし、古い記録に多く残っているのは亥の日で、戌の日は地域ごとの風習と考えたほうがいいでしょう。
2026年のこたつを出す日はいつ?
2026年の最初の亥の月亥の日は11月9日(月)です。
二番目の亥の月亥の日は11月21日(土)です。
できればこのいずれかの日に出すといいですね!
現在は江戸時代と違って武家と庶民が区別されていませんので、最初と二番目どちらで出しても何の問題もありません。
また、こたつを早く出したい方、出し忘れた方は上記以外の「亥の日」に出してみてはいかがでしょうか?
2026年の「亥の日」は以下のとおりです。
| 日付 | 備考 |
| 10月4日(日) | |
| 10月16日(金) | |
| 10月28日(水) | |
| 11月9日(月) | 江戸時代の武家はこの日 |
| 11月21日(土) | 江戸時代の庶民はこの日 |
| 12月3日(木) | |
| 12月15日(火) | |
| 12月27日(日) |
最初の亥の月亥の日は、毎年だいたい11月初旬ごろのようですが、寒い地域ではそれよりも前にこたつを出すこともあると思います。
日にちを意識しつつも、快適な生活を送るために臨機応変に対応するといいですね。
久しぶりに出したこたつ布団が傷んでいたら、買い替えの時期かもしれません。
近くのお店で見つからない場合は、通販でも購入できます。
こたつをしまう時期はいつ?
こたつを出す日に言い伝えがあるように、しまう方にも言葉があります。
「炬燵塞ぎ」といいます。
読み方は「こたつふさぎ」です。
炬燵塞ぎとは、暖かくなってその年のこたつを使い終えることです。
もともとは、囲炉裏を板でふさぐことを指した言葉でした。
昔のこたつは囲炉裏の上に櫓を組んだものだったので、こたつをしまうことがそのまま炉をふさぐことでした。
俳句では春の季語として扱われ、別名を「炬燵の名残(こたつのなごり)」ともいいます。
明治44年(1911年)の歳時記では、その時期を「陰暦三月晦日(3月の末日)」としています。
新暦では4月下旬から5月中旬ごろにあたります。
出典:中谷無涯編『新脩歳時記 春の部』俳書堂、明治44年(1911年) 国立国会図書館デジタルコレクション
昭和63年(1988年)にまとめられた長野県の民俗調査では、天龍村坂部について「4月下旬の戌の日にあげる」と記録されています。
出典:国立国会図書館 レファレンス協同データベース「〝戌の日〟にこたつを作るのは何故か知りたい」(県立長野図書館)
ただし、これは囲炉裏を板でふさぐことを指す言葉なので、持ち運べる今の置きごたつに、何月何日にしまうという決まりはありません。

いかがでしたでしょうか?
こたつは室町時代から私たち日本人が愛用していた暖房器具だったのですね。
最近は一人暮らしの人用に、一人用こたつが販売されていたり、リビングテーブルをこたつにすることができたりと、時代の流れで新しいこたつも登場していますね。
高さを変えられる継脚タイプなら、こたつを使わない季節はふつうのテーブルとして使えます。
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コメント
コメント一覧 (3件)
大変参考になりました。私の家は、代々コタツは「戌の日」に出す家訓でした。
亥の日なんですか。先祖が勘違いしたんですね(笑)
言い伝えは「申の日」にだすと、猿は赤いものを見ると興奮して燃やしてしまうから火事になる。犬は火を見たら消し止めると教わっていました。
面白い記事でした!
コタツのことを私のブログで書くにあたり、いくつか引用させていただきました。
こちらの記事へのリンクも貼らせていただきました!
素晴らしい記事をありがとうございました!
もしよければ、私のブログも見ていただけますと嬉しいです。
コメントありがとうございます!
コタツの記事お役に立てたのでしたら幸いです。
ブログの方拝見させていただきました。
個人的な感想があってとても楽しいブログですね!