
夏と言えば、麦茶ですよね。
暑い日に飲む麦茶を水筒やマイボトルなどに入れて持ち歩いている人も多いのではないでしょうか。
そんな麦茶の歴史とは、どういうものでしょうか?
なぜ夏に飲むのか、麦茶とお茶の違いも解説します。
麦茶とは?
読み方は「むぎちゃ」です。
麦茶は、殻付きの大麦を焙煎(ばいせん)して、お湯や水で抽出した飲み物です。

焙煎された大麦
焙煎とは、生の穀物や豆などを加熱して水分を飛ばし、香りや風味、色を引き出すことです。
大麦から作られるお茶なので、カフェインが含まれていません。
昔は、焙煎した大麦をそのままお湯で煮出して麦茶を作るのが一般的でしたが、現在は焙煎した後に大麦を粉砕してティーバッグに入れたものが販売されています。
ディーバッグでの麦茶の作り方は大きく、煮出し、お湯出し、水出し、の3つに分けられます。
煮出し

煮出し
いちばん手間がかかる作り方ですが、麦茶らしいコクと香りが楽しめます。
●作り方
- やかんなどで水を沸騰させる
- 火を止めずに沸騰しているお湯にティーバッグを入れる
- 5分程度そのまま煮出す
- 火を止めてティーバッグを取り出す
- やかんなどに水を当てて冷やす
- 完成
長時間ティーバッグを入れたままにすると、苦みやえぐみが出てくるので、火を止めたらすぐに取り出します。
お湯出し

お湯出し
煮出しほどのコクと香りはありませんが、雑味の少ないすっきりとした味を楽しめます。
●作り方
- 沸騰させたお湯にティーバッグを入れる
- 10分~30分程度経ったらティーバッグを取り出す
- やかんなどに水を当てて冷やす
- 完成
水出し

水出し
一番手軽に作ることができ、苦みやえぐみが気にならない、さっぱりとした味を楽しめます。
●作り方
- ティーバッグを入れた容器に水を注ぐ
- 容器を冷蔵庫に2時間程度入れておく
- ティーバッグを取り出す
- 完成
ティーバッグを入れたままにしておくと雑菌が繁殖しやすくなるため、2時間程度で取り出すのを忘れないようにしましましょう。 いずれの場合も完成後は冷蔵庫で保管し、1日~2日で飲み切るようにします。
麦茶の歴史とは?
麦茶の原料である大麦は、縄文時代(紀元前14000年ごろ~紀元前8世紀ごろ)の終わりごろから弥生時代(紀元前8世紀ごろ~3世紀中ごろ)初めにかけて、大陸から日本に伝わり栽培されるようになったと考えられています。
このころは、大麦を炒(い)って水に浸して食べたり、その水を飲んでいたようです。
「麦茶」のようなものが飲まれるようになったことを示す最古の文献は、平安時代(794年~1185年)中期に作られた辞書の「和名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)」です。
和名類聚抄には、
「米麦を乾かし、これを炒って粉にし、湯水に転じて服す。これを『みずのこ』あるいは『はったい』という」
と記されています。
現代語にすると、「米や麦を乾燥させて炒り、粉にしたものを、お湯や水に溶かして飲む。これを『みずのこ』または『はったい』と呼ぶ」となります。
炒った大麦を煮出して飲む現在の麦茶とは違う飲み方ですが、麦茶のルーツといわれています。
次に「麦茶」のようなものが文献に登場するのは、安土桃山時代(1573年~1603年)の「北野大茶湯の記(きたのおおちゃのゆのき)」です。
北野大茶湯の記は、1587年に豊臣秀吉(とよとみひでよし・1537年~1598年)が京都の北野天満宮で催したお茶会の様子を記したものです。
その中に、「茶葉がない者は、こがしで代用しても良い」とあります。
「こがし」とは、麦や米を焦がしたものです。
お茶会では茶葉が用いられていましたが、当時は高級なものだったので入手できない人もいました。
そのような人は「こがし」を茶葉の代わりにしてお茶会に参加しても良いですよ、ということです。
江戸時代(1603年~1868年)の食物辞典である「本朝食鑑(ほんちょうしょっかん・1697年)」の「大麦」の項目では
「当今、生麦を香ばしく炒り、麨(むぎこがし)を磨き、篩にかけて粉末にし、夏月、冷水を飲むとき、これを加えて練って服用している。砂糖を和して食べることもある」
と、麦こがしを水で練って飲む方法が記されています。
現代語にすると、
「現在は、生の麦を香ばしく炒って麦こがしにし、夏に冷たい水を飲むときにそれを加えて練って飲む。また、砂糖を混ぜて食べることもある。」
となります。
ここまでの飲み方は、いずれも炒った米や麦を粉にして湯や水に溶かす・練るというもので、大麦を煮出す現在の麦茶の飲み方とは異なります。
江戸時代後期になると、炒った大麦を煮出したものは「麦湯(むぎゆ)」と呼ばれるようになり、麦湯を提供する屋台が江戸の町なかの大通りや寺社の門前などに並びました。
この「煮出す」という作り方は、現在の麦茶とほぼ同じです。
当時の麦湯は温かい状態で飲まれていました。
温かい飲み物を飲んで汗をかくことで、夕方の風がより涼しく感じられると考えられていたためです。

涼み台
夏の夕方になると涼み台(涼むための木製のベンチ)を出して麦湯を売る光景は、当時の夏の風物詩となっていました。
江戸時代後期の町の移り変わりや出来事、人の話などを記した「寛天見聞記(かんてんけんぶんき)」では、人々が夏に夕涼みをしながら麦湯を味わう様子が記されています。
明治時代(1868年~1912年)になると、家庭でも炒った大麦を煮出して麦湯を作って飲むようになりました。

昭和30年代になると、一般家庭にも冷蔵庫が普及し、麦湯を冷やして飲むようになりました。
昭和30年代の終わりごろ、ティーバッグ状の「麦茶」が販売されるようになり、昭和40年代には「麦茶」という呼び方が定着しました。
その後、水出し麦茶やパック飲料、ペットボトル飲料などが販売され、現在に至ります。
なぜ夏に飲むの?
夏に麦茶を飲む理由はいくつかあります。
水分補給に適しているから
麦茶はカフェインを含まないため、利尿作用(尿が出やすくなる作用)がなく、飲んだ水分が体外に排出されにくいという特徴があります。
夏は汗をかいて水分が失われやすいので、水分が体に留まりやすい麦茶は水分補給に適しています。
また、ノンカフェインなので、赤ちゃんや子どもの水分補給にも使えます。
ただし、麦茶に含まれる塩分はごくわずかで、汗で失われる分を補えるほどの量ではないため、大量に汗をかいたときは塩分の補給も別途必要です。
夏バテ防止に役立つから
麦茶には、アルキルピラジンという香ばしい香りの成分が含まれています。
この成分には血流を良くする働きがあることが研究で確認されています(参考:はくばく「麦茶のススメ」)。
血の巡りが良くなるため、夏バテ対策にも役立つと考えられています。
収穫時期が夏だから
大麦は、夏が収穫時期です。
収穫したばかりの大麦で「麦湯」を作るのが、江戸時代の夏の風物詩だったそうです。
東洋医学では身体を冷やす性質があるとされているから
東洋医学では身体を冷やす性質があるとされているから東洋医学(漢方)では、大麦は「涼性」の食材とされ、身体にこもった余分な熱を取り除くと考えられています(参考:東邦大学医療センター大森病院 東洋医学科)。
麦茶とお茶の違いも解説!
麦茶とお茶の違いは以下の通りです。
原料が違う
麦茶の原料は大麦です。
お茶の原料はツバキ科ツバキ属の常緑樹である「チャの木」の葉です。
カフェインの有無
麦茶は、カフェインが含まれていません。
カフェインの摂り過ぎには注意が必要とされており、カフェインゼロの麦茶は、小さなお子さんや妊婦さん、高齢者も安心して飲むことができます。
また、カフェインが含まれているお茶は、覚醒作用(目を覚まさせる作用)や利尿作用(尿が出やすくなる作用)がありますが、麦茶はそのような作用はないため、就寝前の水分補給にも適しています。
渋み成分であるカテキンの有無
麦茶は、カテキンが含まれていません。
カテキンが含まれていないので胃腸への刺激が少なく、渋みや苦みが無いので、小さなお子さんや胃腸が弱っている人も安心して飲むことができます。
お茶は、カテキンが含まれています。
風味が違う
麦茶は、香ばしい風味がします。
お茶は、風味豊かですっきりした渋みがあります。
麦茶(麦湯)は夏の季語
麦茶と麦湯は、俳句の世界でも夏の季語として親しまれてきました。
高浜虚子の俳句を紹介しましょう。
「厨西日あすの麦湯の麦を煎る」
(くりやにしび あすのむぎゆの むぎをいる)
西日が差し込む台所で、翌日に飲む麦湯のための麦を炒っている、夏の家庭の情景を詠んだ句です。

麦茶がどのようなものかわかりましたね。
汗を大量にかいて身体から水分が減ってしまう夏には、大変重宝する飲み物です。
スポーツドリンクやジュースなどは糖分が含まれているので、大量に飲むと健康に悪影響を与える場合がありますが、麦茶の場合はそのような心配もありません。
熱中症対策のためにも、麦茶でこまめな水分補給を心がけましょう!
関連:お茶の種類(緑茶・煎茶・番茶・玉露・ほうじ茶・抹茶)の違いと意味とは?
関連:暑気払いの意味とは?2026年の時期はいつ?食べ物は何?

コメント