日本中のいたるところみかける「お地蔵さん」。
柔和な表情をしていて、小さな子どもからお年寄りまで多くの人に親しまれているお地蔵さんにはどのような意味があるのでしょうか?
今回は「お地蔵さん」の意味や、なぜ赤いよだれかけをしているのかなどについて解説します。
お地蔵さんってどんな意味があるの?
一般的に親しみをこめて「お地蔵さん」や「お地蔵様」とよばれますが、正式には「地蔵菩薩(じぞうぼさつ)」といい仏教の信仰対象である「菩薩」の一尊(いっそん・仏の数え方)です。
「菩薩」とは、「悟りを目指す人」という意味があり、悟りを開くための修行をしています。
修行中の身ではありますが、人々を救済し、共に歩み、教えに導くという事で庶民の信仰の対象となっていきました。
「地蔵」は、サンスクリット語で「クシティ・ガルバ」といいます。
クシティは「大地」、ガルバは「胎内・子宮」という意味があり、クシティ・ガルバは「大地の母胎」を意味します。
大地がすべての命を育む力を蔵する(ぞうする・おさめる、所蔵すること)ように、苦悩の人々を無限の慈悲の心で包み込み、救うところから「地蔵」と名づけられたと言われています。
菩薩は如来に次ぐ存在です。
仏教では、釈迦如来(しゃかにょらい)が入滅(にゅうめつ・亡くなること)したあと、弥勒菩薩(みろくぼさつ)が悟りを開き如来となって人々を救済するまで56億7千万年という時間がかかると言われており、その間、この世に如来が存在しないことになります。
そして、如来が現れるまでの間、人々を苦しみから救うために現れたのが地蔵菩薩といわれています。
釈迦如来とは、仏教の開祖である釈迦(しゃか)のことで、「仏陀(ぶっだ)」とも呼ばれ、本名は「ゴータマ・シッダルータ」です。
地蔵信仰
地蔵信仰(じぞうしんこう)とは、地蔵菩薩に対する信仰のことです。
地蔵菩薩は、状況によって色々なものに姿を変え、八面六臂(はちめんろっぴ・多方面でめざましい力を発揮すること)の大活躍をすると言われています。
すべての人に救いの手を差し伸べ、あらゆる苦難から救ってくれると信じられており、多くの人に信仰されるようになりました。
信仰によっていろいろな種類がありますので、いくつかご紹介します。
子安地蔵(こやすじぞう)
妊婦の安産、子どもの健やかな成長を守護するお地蔵さんです。
身代わり地蔵(みがわりじぞう)
災難にあった人の苦しみを身代わりになって引き受けてくれるお地蔵さんです。
また、病気を治し、その病気を引き受けてくれるともいわれています。
水子地蔵(みずこじぞう)
水子を供養するために建立されたお地蔵さんです。
水子とは、母体に宿ったもののなんらかの事情で生まれてくることができなかった子どもや、生まれてもわずかな期間で亡くなってしまった子どものことです。
とげぬき地蔵
「とげぬき地蔵」とは、東京都豊島区の高岩寺(こうがんじ)の通称です。
高岩寺のご本尊(ほんぞん・寺院などで最も大切な信仰の対象のこと)は「延命地蔵菩薩(えんめいじぞうぼさつ)」で、痛みや病気を治すといわれています。
六地蔵(ろくじぞう)
六体のお地蔵さんのことで、六道(りくどう・ろくどう)で苦しむ人々を救ってくださるお地蔵さんで、あの世とこの世の境目となる、墓地の近くにある場合が多いです。
「六道」とは、人が輪廻転生(りんねてんせい)する「天道」「人間道」「修羅道」「畜生道」「餓鬼道」「地獄道」という6つの苦しみと迷いの世界のことです。
輪廻転生とは、肉体が滅びても魂は滅びず、生死を繰り返すことです。
ちなみに、今現在私たちがいるのが、六道の「人間道」です。
六道についてはこちらをご覧ください。
関連:六道(天道・人間道・修羅道・畜生道・餓鬼道・地獄道)の意味とは?
こういった側面から人々は、長寿や健康、安産祈願、子どもの健やかな成長、五穀豊穣、合格祈願、交通安全、家内安全、商売繁盛などいろいろなことをお地蔵さんにお願いするようになり、いろいろな場所にお地蔵さんが建てられたのです。
また、お地蔵さんとよく似たものに道祖神(どうそしん・どうそじん)があります。
道祖神は、集落や村に病気が入ってくるのを防いだり、旅人の安全を見守ったりする神様であることから、集落や村の境界や道が交差するところ、峠などに多く祀られています。
・人の形をしているもの
・石に「道祖神」と刻まれているもの
・塔になっているもの
・男女一対のもの
など道祖神の形態はさまざまですが、中には道祖神としてお地蔵さんが建立されている場合もあり、両者は同じものとして信仰されてきました。
赤いよだれかけの意味とは?
お地蔵さんには、赤いよだれかけが掛けられていたり、赤い帽子や頭巾が被せられていますよね?
それはお地蔵さんが賽の河原(さいのかわら)の子どもたちを救う役割があるためといわれています。
賽の河原とは、親よりも先に亡くなってしまった子どもたちが行く場所で、仏教では親より先に亡くなることは罪だと考えられています。
その罪を償うために、子どもたちは河原でずっと石積みをさせられます。
そんな子どもたちを救ってくださるのが、地蔵菩薩です。
そのため、子どもの供養のために、お地蔵さんによだれかけや帽子、頭巾を奉納するようになり、次第に供養のためだけではなく、子どもが元気に育つようにと奉納されるようになったのです。
また、このよだれかけや頭巾は、なぜ赤色なのでしょうか?
それは、赤という色は「清く」「正しく」「正直な色」と信じられているからです。
そのため、古くから魔除けの効果があると信じられており、赤ちゃんやお地蔵さんに赤いものを着せるようになったのです。
還暦でも赤いものを身につけますが、これは干支が一巡りして赤子に還るという意味で、お地蔵さんや赤ちゃんが赤いものを身につけるのと同じ意味で贈られています。
日本中のいたるところでみかけるお地蔵さん。
こうして由来を調べてみると昔から私たちのそばで生活を見守ってくださっている、とてもやさしく尊い存在だということが分かりましたね。
街中でお地蔵さんをみかけたら、見守ってくださることへの感謝の気持ちを伝えてみてはいかがでしょうか。
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コメント
コメント一覧 (3件)
ありがとうございます
心無い人には、ただの石ですが、
普通の人なら、そのありがたみに感謝し、100%以上で頑張れハズです。
コメントありがとうございます!