「逆さごと」という言葉を見聞きしたことはありますか?
もしかすると、お葬式の場面ではいくつかの「逆さごと」を見たことがあるかもしれません。
また、普段の生活の中で「逆さごと」をすると「縁起が悪い」と叱られることもあるのですが、どんなものがあるのでしょうか?
今回は「逆さごと」の意味や種類ついてわかりやすく解説します。
逆さごとの意味とは?
「逆さごと」とは、 お葬式で行われる習慣で、普段の生活で行うことを逆の方法ですることです。
「あの世(死者の世界)」は、「この世(私たちが暮らす世界)」とは真逆になっているという考え方があるため、故人があの世に行っても困らないように「逆さごと」という習慣が始まったといわれています。
例えば、お通夜が夜に行われるのは、あの世とこの世は昼夜が真逆になっており、故人が迷わないようあの世が明るい時に故人を送り出したいという考えがあったことが由来といわれています。
また、仏教では、人は亡くなるとあの世で7日ごとに裁判を受け、生前の罪を裁かれるといわれています。
そして、裁判所までの道中はひとりで歩いて行くと考えられており、あの世はこの世とは真逆なので、亡くなってすぐの人は真逆の世界に慣れておらず大変な苦労をします。
「逆さごと」は、すべてを逆にすることで裁判所への道中で困らないようにという心遣いでもあるそうです。
あの世では49日目(四十九日法要)の裁判で、「天道」「人間道」「修羅道」「畜生道」「餓鬼道」「地獄道」という6つの苦しみと迷いの世界である「六道」のいずれに行くのかが決まります。
また、六道から離れることを解脱(げだつ)といい、極楽浄土へ行くことができると考えられています。
関連:六道(天道・人間道・修羅道・畜生道・餓鬼道・地獄道)の意味とは?
仏教の中で浄土真宗では、人は亡くなると同時に極楽浄土へ行けると考えられているため、「逆さごと」はしません。
「逆さごと」にはどんな種類があるの?
「逆さごと」は宗教的な作法ではなく、古くから日本に根付いていた習慣なので、地域によって違いがあります。
ここでは、一般的な「逆さごと」の種類をご紹介します。
左前
普段、着物や浴衣を着る時には右前にします。
右前とは、着物や浴衣を着る時に、着る人から見て右側の襟(えり)が下になるように着ることをいい、左側が上になります。
故人に着せる白い着物を「死装束(しにしょうぞく)」といいますが、死装束を着せる時は普段とは逆の左前にします。
最近は白い着物ではなく、故人が好きだった服を着せることもあり、洋服の場合は左前を気にせず普段通りに着せます。
紐の結び方(縦結び)
普段は衣服の紐を結ぶときは蝶結びですが、死装束の紐を結ぶ際は縦結びにします。(上の画像)
逆さ着物
故人が好きだった着物や洋服を死装束の上にかぶせることがあります。
その際、着物の襟もとを故人の足の方へ、着物の裾(すそ)を故人の頭の方へ向けてかぶせます。
足袋
足袋を故人に履かせる際、左右逆に履かせます。
逆さ屏風
故人の枕元に飾る屏風は、絵柄が上下逆になるように飾ります。
逆さ布団
故人を布団に安置する際、布団の襟に当たる部分を故人の足の方へ、布団の裾を故人の頭の方へ向けてかぶせます。
逆さ水
普段は、お湯の温度を調整する際には、お湯に水を注ぎますよね。
逆さ水はその逆で、水にお湯を注いで温度を調整し、湯灌(ゆかん・故人の体を洗うこと)に使います。
北枕
普段の生活で北枕にするのは縁起が悪いとして避ける人が多いですが、「北枕」は仏陀(ぶっだ・仏教の開祖)が亡くなった時、頭を北の方角へ向けていたことが由来といわれています。
仏陀のおられる極楽浄土へ行けるようにと願い、故人の頭が北向きになるよう寝かせます。
「逆さごと」がどういうものかわかりましたか?
ほとんどは普段の生活ですることはありませんが、浴衣を着る時期になると左前にしている人を時々見かけてしまい、こっそり「逆だよ!」と教えたくなりますよね。
「逆さごと」は地域によって違う部分もありますし、ここではご紹介していないものもあると思います。
「お葬式ではこうしなければならない」と決められているものでもありませんので、お世話になっているお寺のお坊様や、葬儀スタッフなどと相談しながら進めると良いですね。
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