
小さくて美しい線香花火は、みなさんも一度は楽しんだことがあると思います。
線香花火がすぐ落ちるのはなぜでしょう?
線香花火を長持ちさせる持ち方や、東西で持ち方が逆になる理由をご紹介します。
線香花火とは
読み方は「せんこうはなび」です。

線香花火は、日本の伝統的な手持ち花火です。
手持ち花火とは、手に持って遊ぶ花火のことです。
花火の種類はほかに、以下のものがあります。
●ロケット花火
火をつけるとまっすぐ飛んで破裂する花火
●噴出し花火
地面に置いて導火線に火をつけると、筒から火花が噴き出す花火
●打ち上げ花火
地面に置いて導火線に火をつけると、空高く上がって開く花火
●回転花火もう
導火線に火をつけると、くるくる回転する花火
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線香花火の歴史
最初の線香花火は、江戸時代(1603年~1868年)前期ごろ当時米作りが盛んだった関西地方で誕生したといわれています。
稲刈り後の藁(わら)が豊富にあったので、藁の先端に火薬を付けて、火の玉が出来たり、火花が飛ぶのを見て楽しんでいました。
そして、仏壇に香炉に線香を立てるように、火が上向きになるよう藁を立てて遊んだことから「線香花火」と呼ばれるようになりました。
江戸時代中期ごろになると、和紙で火薬を包んだものも作られるようになりました。
関東地方では紙すき(和紙づくり)が盛んで、薄い和紙を安定して大量に作ることができたため、火薬を包んだ和紙をねじって作る線香花火が考案されました。
和紙は繊維が長く強いのでねじっても破れにくく、線香花火に適していました。
また、線香花火に適した丈夫な藁の産地は主に関西地方だったため、多くの地域では藁よりも和紙のほうが入手しやすく、和紙で火薬を包む作り方は江戸から全国の花火業者を通じて広まりました。
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江戸時代の後期ごろには、夏になると子供が線香花火を売り歩いていたそうです。
小さくて軽い線香花火は運びやすいので子供が売り歩くのにちょうどよく、線香花火を買って楽しむ人も多く、夏の娯楽として定着していたようです。
特に両国川開きの時にはよく売れ、子供たちにとって稼ぎ時だったそうです。
「両国川開き」とは、現在の花火大会のルーツといわれているものです。
享保17年(1732年)に起きた「享保の大飢饉」と江戸に流行した疫病で多くの人が亡くなり、8代将軍徳川吉宗が死者の供養と災厄除去を祈願して、翌享保18年(1733年)に大川(現在の隅田川)で「両国川開き」として花火を打ち上げたのが始まりです。
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明治時代(1868年~1912年)以降は現在までさまざまな花火が誕生しましたが、線香花火は現在も多くの人に親しまれています。

線香花火の燃え方には段階があります。その様子は人の一生にたとえられることも多いのでご紹介します。
●蕾(つぼみ)
火をつけると、直径5mmほどの火の玉ができます。
炭素が燃焼することで気泡ができては破裂し、また火の玉に戻ることを繰り返すため、火の玉が震えています。
その様子は花の蕾にたとえられます。
人の一生では、「誕生」や「幼年期」を表します。
●牡丹(ぼたん)
火の玉の燃える温度が上昇し、火の玉は液体状に変わり、力強い火花が飛びます。
その様子は美しく咲き誇る牡丹の花にたとえられます。
人の一生では、「若さ」を表します。
●松葉(まつば)
多くの火花が四方八方に激しく飛びます。
その様子は直線的な姿で密集する松葉にたとえられます。
人の一生では、「青年期」や「壮年期」を表します。
●柳(やなぎ)
火の勢いが衰え、火花も小さくなります。
その様子は細長い葉がしなだれるように生える柳にたとえられます。
人の一生では、「円熟期」や「老年期」を表します。
●散り菊(ちりぎく)
火が消える直前です。
火花が出なくなり、最後には火の玉が燃え尽きます。
その様子は最後まで美しく咲きながらも花びらをひとつずつ落としていく菊の花の散り際にたとえられます。
人の一生では、「晩年」「人生の終わり」を表します。

寺田寅彦
また、寺田寅彦(てらだとらひこ・1878年~1935年、物理学者、随筆家、俳人など)は、
『線香花火の一本の燃え方には、「序破急(じょはきゅう)」があり「起承転結(きしょうてんけつ)」があり、詩があり音楽がある』
と、線香花火に着火してから燃え尽きるまでの様子を表現しています。
持ち方が東西で逆になる線香花火
線香花火は大きくわけると2つあり、持ち方が異なります。
西日本の線香花火

スボ手牡丹
西日本に多い線香花火は「スボ手牡丹(すぼてぼたん)」です。
- 「スボ」とは「わらすぼ」のことで、藁の茎の部分を差します。
- 「手」は、手持ち花火という意味です。
- 「牡丹」は、火花の美しさを牡丹の花にみたてています。
単に「スボ手」とも呼ばれています。
最初に誕生した線香花火で、関西地方を中心に親しまれています。
わらすぼの先に火薬を塗り付けています。
仏壇に線香を立てるように、火が上向きになるよう香炉の灰に藁を刺す遊び方が現在まで引き継がれており、火がついている部分を45度斜め上に向けて持ちます。
東日本の線香花火

長手牡丹
東日本に多い線香花火は「長手牡丹(ながてぼたん)」です。
- 「長」は、長い和紙のこよりという意味です。
- 「手」は、手持ち花火という意味です。
- 「牡丹」は、火花の美しさを牡丹の花にみたてています。
単に「長手」とも呼ばれています。
和紙で火薬を包み、和紙をねじり合わせています。
火がついている部分を45度斜め下に向けて持ちます。
このようにそれぞれ持ち方が違い
- 西日本の「スボ手牡丹」は45度斜め上に向けて持ちます。
- 東日本の「長手牡丹」は45度斜め下に向けて持ちます。
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現在、スボ手牡丹は国内では福岡県の筒井時正玩具花火製造所(株)でしか作られておらず、流通しているもののほとんどが中国産です。
長手牡丹は国内でいくつかの製造所が作っていますが、それほど量がないため、流通しているもののほとんどが中国産です。
参考:筒井時正玩具花火製造所
線香花火はなぜすぐ落ちる?

線香花火がすぐに落ちるのはいくつかの理由があります。
●風の影響
線香花火の火の玉はとても繊細で、ほんの少しの風でも火の玉が冷えたり燃焼が偏るなどして落ちやすくなります。
●手が揺れる影響
小さな火の玉は、ほんの少しの振動でも落ちてしまいます。
長持ちさせる持ち方とは?
線香花火を長持ちさせるには、風の影響を受けづらい場所で火を付けます。
火がついたら、手が揺れるのをなるべく抑えて楽しみます。
ほかには、以下の点に気を付けると長持ちしやすくなります。
スボ手牡丹の場合
●45度斜め上にする

真上や真下にすると、重力によって火の玉が落ちやすくなります。
真横にすると、火の玉が不安定になり落ちやすくなります。
火のついた部分が45度斜め上になるよう持つと火の玉が安定し長持ちします。
45度は、火の玉が落ちにくく安定する目安の角度です。
長手牡丹の場合
●和紙をねじる
長手牡丹は和紙で火薬を包んでいます。
火をつける前に火薬の上を少しねじって、ねじりを強くすることで火の玉が落ちにくくなります。
●45度斜め下にする

真下にすると、重力によって火の玉が落ちやすくなります。
また、長手牡丹は真横にすることは難しく、無理に真横にすると持ち手が不安定になり、火の玉が落ちやすくなります。
火のついた部分が45度斜め下になるよう持つと火の玉が安定し長持ちします。
45度は、火の玉が落ちにくく安定する目安の角度です。
●火をつける部分は最小にする
ライターやろうそくなどで火をつける時、線香花火の先のほうにだけ火をつけるようにします。
スタートの時点で大部分に火がついてしまうと、落ちやすくなります。

線香花火は東西で違うのですね!
長手牡丹は全国的に広く流通している一方で、スボ手牡丹は流通量が少ないため、関西を中心とした西日本でも長手牡丹で遊ぶことが多いようです。
夜空に打ちあがる大きな花火も華やかで迫力があって良いですが、手に持って静かに楽しむ線香花火も良いですよね。
夏の夜に、家族や友人と楽しんでみてはいかがでしょうか。

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