「天皇」は何のためにいるのと疑問に思ったことはないでしょうか?
また、「天皇」の始まりはいつなのでしょうか?
またどこから来たのでしょうか?
今回はそんな疑問についてわかりやすく解説いたします。
天皇は何のためにいるの?
初代天皇は、紀元前660年に即位した神武天皇(じんむてんのう)といわれています。
神武天皇は、大和(やまと・現在の奈良県周辺)を征服、平定し、橿原神宮(かしはらじんぐう・現在の奈良県)で初代天皇に即位しました。
初代天皇の神武天皇は、日本の創始者といえるでしょう。
明治5年(1873年)に、神武天皇が即位した紀元前660年2月11日を日本という国が始まった日と決め、「紀元節(きげんせつ)」という祭日を制定しました。
紀元節は戦後に廃止され、現在は「建国記念の日」という祝日になっています。
紀元節についての詳細はこちらをご覧ください。
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神武天皇の時代から奈良時代(710年~794年)ごろまでの天皇は、国をまとめる支配者的存在だったようです。
平安時代(794年~1185年)になると、天皇よりも摂関家(せっかんけ)が権力を持つようになります。
摂関家とは、貴族たちのトップとなる家のことで、摂政(せっしょう)や関白(かんぱく)を務める家柄のことです。
摂政とは、幼い天皇や病弱の天皇の補佐をする役職です。
関白とは、成人した天皇を補佐する役職です。
摂関家は、天皇に忠実に仕えて補佐をするというより、自分たちが政治の権力を握るために天皇の権威を利用していたといわれています。
鎌倉時代(1185年~1333年)になると武家が実権を持つようになり、天皇は政治的権力を失い、鎌倉幕府が政治を行うようになります。
幕府とは、武家がトップとして政治を行う仕組みです。
政治を行う権力は失いますが、天皇としての権威はあり、物事を進める際、幕府は天皇の許可を得たりしていました。
江戸時代(1603年~1868年)になっても実権は幕府が握っており、天皇は幕府の意向に従うかたちで官位の授与や、元号の制定を行っていました。
政治に強く関わることはありませんでしたが、外国との条約を結ぶには国のトップである天皇の許可が必要でした。
しかし、幕府は1858年に孝明天皇(こうめいてんのう・1831年~1867年)の許可を得ずに日米修好通商条約(にちべいしゅうこうつうしょうじょうやく)を結びました。
日米修好通商条約とは、日本とアメリカとの間で結んだ通商(貿易)に関する条約で、「治外法権を認める」「関税自主権がない」という点で日本に不利な不平等条約だったため、幕府への批判が高まりました。
そして、孝明天皇が開国には反対の姿勢を取っていたことから、「尊王(そんのう)」論と「攘夷(じょうい)」論が結びつき、江戸時代末期の幕末には尊王攘夷運動(そんのうじょういうんどう)が起こります。
尊王とは、天皇や朝廷中心の政治を行うことです。
攘夷とは、外国勢力を追い払うことです。
その後、幕府を支持する佐幕派(さばくは)と、幕府を倒し実権を天皇に返そうとする倒幕派(とうばくは)が争い、倒幕派が勝ちました。
1867年に大政奉還(たいせいほうかん)が行われ、江戸幕府が朝廷に権力を返すことで、江戸幕府による政治は終わり、明治政府が成立しました。
これら幕末の動乱から明治政府が成立するまでの政治的革命を「明治維新(めいじいしん)」といいます。
明治時代(1868年~1912年)になると、明治政府は大日本帝国憲法で天皇を主権者と位置付けました。
主権者とは、国土や国民を支配する権利のことです。
そして、国家統治のために天皇を神格化し、国民は天皇に忠誠を誓うよう教育されました。
明治23年(1890年)には、教育勅語(きょういくちょくご)が発布されました。
勅語とは、天皇が口頭で伝える公務上の意思表示です。簡単に言うと「天皇が国民に対して発する言葉」ということになります。
そして、教育勅語を簡単に言うと、日本の学校教育の基本方針を示す明治天皇の言葉です。
教育勅語は、明治天皇が国民に語りかける形で、愛国主義や儒教的道徳などの教えが書かれています。
親孝行をしなさい、夫婦仲良くしなさい、勉強に励みなさい、社会貢献しなさい、など道徳的な内容となっていますが、昭和になると軍国主義教育に使われるようになりました。
教育勅語の中に「義勇(ぎゆう)」というものがあります。
義勇とは「正しい勇気をもって国のため真心を尽くしましょう」という意味なのですが、「祖国のために命を捧げて戦わなければならない」「天皇のために命を捧げよ」と解釈をして国民を教育しました。
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また、戦時中には、天皇を現人神(あらひとがみ)として崇拝するよう教育しました。
現人神とは、人間でありながら神でもあるという意味です。
そして、第二次世界大戦で日本は敗戦しました。
終戦時には、天皇による玉音放送(ぎょくおんほうそう)が流れ、日本が戦争に負けたことが国民に伝えられました。
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昭和21年(1946年)1月1日、昭和天皇は「天皇が現人神であるというのは架空の観念である」と述べられ、天皇=神であることを否定されました。
そして、GHQは天皇を象徴であるとした新憲法の案を日本に突きつけ、日本国憲法第1条で天皇は日本国の象徴とされ、政治に関わることはなく国事行為(こくじこうい)を行うよう規定されました。
国事行為とは、天皇が行うものとして日本国憲法で規定されているもので、主に「国会の召集」「内閣総理大臣の任命」「法律や条例の公布」などがあります。
国事行為についての詳細はこちらをご覧ください。
天皇の国事行為とは?一覧にまとめて簡単にわかりやすく説明します!
国事行為のほかに、
・全国各地で行われる式典に参加する
・災害に遭った地域をお見舞いする
・福祉関係の施設を訪問する
・宮中祭祀(きゅうちゅうさいし)を行う
・和歌や養蚕(ようさん)など伝統文化を受け継ぐ
・外国を訪問して国際親善に努める
などの活動を行っておられます。
宮中祭祀についての詳細はこちらをご覧ください。
このように、奈良時代ごろまでは、天皇は国をまとめる支配者的存在でした。
平安時代以降は、権威はありましたが、政治権力はない存在でしたが、明治維新後に神格化され、戦時中には現人神と言われる存在になっていました。
戦後は、日本国憲法によって国の象徴となり、政治に関わることはなく、国事行為やさまざまな活動を行っておられます。
天皇の始まりはいつ?
今上天皇(きんじょうてんのう)は徳仁(なるひと)陛下で、第126代目です。
今上天皇とは、今現在、在位なさっている天皇陛下のことをいいます。
そして、初代天皇は神武天皇といわれています。
古事記(こじき・712年)や日本書紀(にほんしょき・720年)では、紀元前660年2月11日に神武天皇が即位したとされています。
古事記とは、天皇家の歴史を残す目的で書かれた日本最古の歴史書です。
日本書紀とは、国家の歴史を残す目的で書かれた歴史書です。
古事記、日本書紀についての詳細はこちらをご覧ください。
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古事記と日本書紀によると、初代天皇である神武天皇は、天照大御神(あまてらすおおみかみ)の五世の孫といわれています。
天照大御神とは、日本の最高神と位置付けられている女神です。
日本神話では神々が住んでいるとされる天上の国「高天原(たかまがはら)」の最高責任者でもあります。
天照大御神の詳細はこちらをご覧ください。
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古事記では、神武天皇は紀元前711年2月に日向の国(ひゅうがのくに・現在の宮崎県)で誕生し、紀元前585年4月に亡くなったと記されており、127歳で亡くなったというのは現実的ではありません。
神武天皇は、神話や伝説の存在といわれています。
さらに、第2代天皇~第9代天皇までは「欠史八代(けっしはちだい)」と呼ばれています。
欠史八代は天皇の名前、生年月日、没年齢、妻の名前などの記録はあるものの、歌や物語など具体的な記述がないため、後世に創作されたと考えられており、実在したかどうかがわかっておらず、神話や伝説の域を出ません。
第10代以降の天皇は実在していた可能性はあるものの、確かなことはわかっていません。
実在していることが確認されていて現在の皇室までつながるのは、第26代天皇である継体天皇(けいたいてんのう・450年?~531年?)とされています。
継体天皇は、近江の国(おうみのくに・現在の滋賀県)で誕生しています。
天皇の始まりについては、神話や伝説の域を出ませんが、初代天皇である神武天皇です。
天皇はどこから来たの?
神話も関わってくるため、「天皇はどこから来た?」という疑問を抱く人もいるようです。
初代天皇である神武天皇は神話や伝説の存在といわれていますが、高天原ではなく日本で生まれています。
実在が確認されている継体天皇も、日本で生まれています。
「天皇はどこから来た?」と問われれば「日本から」となるでしょう。
今上天皇は第126代天皇です。
初代天皇から今上天皇まで、2600年を超える長い歴史があるのですね。
古代の天皇は実在が確認されておらず、神話や伝説の域を出ませんが、実在していたことの証拠となるものが発掘されたり研究が進んで、不確かなことが判明する日が来るかもしれませんね。
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