天気予報では、普段は聞きなれない言葉を使うことがあります。
その中に「花曇り」という言葉があるのですが、ご存知でしょうか?
意味や時期を知ると「なるほど!」と思うかもしれません。
今回は「花曇り」の意味と類語、季語「花曇り」を使った俳句と時候の挨拶の例文をご紹介します。
「花曇り」の意味とは?時期はいつごろ?
「花曇り」の読み方は「はなぐもり」です。
意味は、 桜の花が咲く時期の薄くぼんやりと曇った天気のことをいいます。
このあと詳しく説明しますが、薄くぼんやりと曇った状態だと地上には日差しが差し込むため、天気予報では「晴れ」として扱われます。
時期は桜が咲く時期の 3月下旬から4月中旬ごろになります。
それでは具体的に「花曇り」とはどのような天気なのでしょうか?
気象庁では、「曇り」や「晴れ」を以下のように空全体のうち雲が占める割合によって定義しています。
天気 | 定義 |
曇り | 雲の量が9割以上で雨が降らない状態 |
晴れ | 雲の量が8割以下 |
快晴 | 雲の量が1割以下 |
また、雲は発生する高さによって以下の3つのグループに分けられています。
雲 | グループ |
上層雲 (じょうそううん) |
5000~13000mの高さの雲 |
中層雲 (ちゅうそううん) |
2000~7000mの高さの雲 |
下層雲 (かそううん) |
地上付近~2000mの高さの雲 |
イラストにすると以下のようになります。
それぞれの高さに発生する雲の割合によって以下のように名前がつけられています。
名前 | 雲の割合 |
曇り | 中層雲+下層雲が占める割合が、上層雲よりも多い |
薄曇り (花曇り) |
中層雲+下層雲よりも、上層雲が占める割合が多い |
本曇り | 上層雲+中層雲よりも、下層雲が占める割合が多い |
高曇り | 他の雲の量よりも中層雲が占める割合が多い場合 |
そして、 桜が咲く時期(3月下旬から4月中旬ごろ)の「薄曇り」を「花曇り」といいます。
「薄曇り」は薄くぼんやりと曇った天気で「曇り」という言葉は入っていますが、雲が上の方で薄く広がっているため地上には日差しがあり、建物などが影を作ることも多いので、天気予報では「晴れ」として扱われます。
「花曇り」の原因とは?
「花曇り」の原因は大きく2つあります。
冬の間、低温で乾燥した「シベリア気団」の影響で西高東低の気圧配置になりますが、春になるとシベリア気団の勢いが弱まり、移動性高気圧と低気圧が交互に日本にやってくるようになります。
天気は、高気圧に覆われていると晴れ、低気圧に覆われていると曇りや雨になるのですが、移動性高気圧と低気圧が交互にやってくるので、晴れのあとに雨や曇りの天気になりやすくなります。
これが花曇りの原因の1つです。
また、冬の間、日本列島を覆っていた高気圧が春になると北上することで日本列島の南側(太平洋側)に前線が停滞しやすくなります。
前線とは、暖気(だんき・暖かい空気)と寒気(かんき・冷たい空気)がぶつかる境目のことで、両者の勢いが等しい場合どちらにも動くことができずに前線が停滞し、雨や曇りの日が多くなります。
この前線の停滞も花曇りの原因になっています。
「花曇り」の類語は?
「花曇り」の類語は、以下のものがあります。
●鳥雲(とりくも)
春になって渡り鳥が北へ帰っていくような陽気のことをいいます。
●養花天(ようかてん)
曇り空のおかげで花の命が一日長くなり「曇り空が花を養っている」様子を表しています。
また、同じ時期に起こる現象として以下のものがあります。
●花冷え(はなびえ)
桜が咲く時期に急に気温が低くなることです。
●菜種梅雨(なたねづゆ)
菜の花が咲く時期(3月下旬から4月上旬ごろ)に長雨が続くことをいいます。
季語「花曇り」を使った俳句
「花曇り」は桜が咲く時期(3月下旬から4月中旬ごろ)のことなので、俳句では春の季語となっています。
有名な俳句には以下のものがあります。
●夏目漱石
『花曇り 尾上の鐘の 響きかな』
(はなぐもり おのえのかねの ひびきかな)
●与謝蕪村
『花曇り 朧につづく 夕べかな』
(はなぐもり おぼろにつづく ゆうべかな)
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「花曇り」を使った時候の挨拶と例文
「花曇り」を時候の挨拶として使う場合は、桜が咲く時期の3月下旬から4月中旬ごろに用いると良いでしょう。
例文は以下のとおりになります。
「花曇りの昨今、みなさまいかがお過ごしでしょうか」
「桜の季節になりましたが、花曇りが続く今日この頃」
「花曇りが続く今日この頃、お元気でお過ごしのことと思います」
「拝啓 花曇りの候、皆様におかれましては一段とご壮健のことと存じます」
「拝啓 花曇りのみぎり、〇〇様にはいよいよご清祥のことと拝察いたしております」
花曇りの意味がわかりましたね。
「曇り」と定義されてはいますが、花曇りの時に空を見上げると、太陽を見つけることができますし、下を見ると自分の影ができることもあります。
桜が咲いてお花見を楽しみにしている時期に、うっすらと雲が広がって少し寒くなると少し残念な気持ちになりますが、そのようなときには「花曇り」という美しい名前がついていることを思い出してみてくださいね。
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