子どもを抱いてザクロを手に持っている「鬼子母神」という女性の神様をご存知ですか?
鬼子母神はなぜザクロを手に持っているのでしょうか?
今回は鬼子母神についてわかりやすく解説します。
鬼子母神とは?
鬼子母神の読み方は「きしもじん」または「きしぼじん」です。
鬼子母神には「神」と付きますが、神道の神様ではなく、お釈迦様によって説かれた教えである「法華経」というお経のなかに説かれる神様で、仏の一尊です。
一尊(いっそん)とは、仏様の数え方のひとつで、他に「一仏(いちぶつ)」や「一体(いったい)」と数えることがあります。
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鬼子母神はサンスクリット語で「hariti(ハーリーティー)」といいます。
この発音に漢字を当てて「訶梨帝(かりてい)」や「訶梨帝母(かりていも)」ともいいます。
鬼子母神は、もともとは鬼女(きじょ・女の鬼)で500人の子どもの母親でした(千人や一万人という説もあり)。
多くの子どもたちを育てるだけの栄養をつけるために、鬼子母神は人間の子どもをさらっては食べていたので、人々に恐れられていました。
そして、そのことを知ったお釈迦様は鬼子母神の末子を隠したそうです。
必死で探す鬼子母神に「お前には多くの子がいながら一人失っただけで嘆き悲しんでいる。それなら、ただ一人の子を失う親の苦しみはいかほどであろうか」と諭し、我が子を失う悲しさや命の大切さを説きました。
お釈迦様の言葉に改心した鬼子母神は、釈迦の教えとすべての子どもたちを守ることを誓い、子育てや安産、子授け、子どもを守護する神となったといわれています。
鬼子母神がザクロを持っている理由とは?
鬼子母神がザクロを持っている理由は、人間の子どもをさらって食べていた鬼子母神にお釈迦様が「ザクロは人の肉に似た味だから、人の肉を食べたくなったらザクロを食べて我慢しなさい」と言ったことが由来とされています。
しかし、これは俗説でもともとは鬼子母神が持つ果物はザクロではなく「吉祥果(きっしょうか・きちじょうか)」と呼ばれる魔を払い、子孫繁栄を象徴する果物のことだったといわれています。
つまり、鬼子母神は、人の肉を食べたくなった時に代わりに食べるためにザクロを持っているのではなく、子どもを守る神として、子孫繁栄の願いを込めて吉祥果を持っているというのが本当の由来です。
では、なぜ吉祥果がザクロになったかというと、インドから中国へ経典が伝わった際、中国の人たちは「吉祥果」がどのような果物なのかわからず、経典などから推測して、馴染みのあったザクロで代用したため、それがそのまま日本に伝わったといわれています。
ザクロは種が多いことから吉祥果と同様、子孫繁栄の象徴とされており、石榴文様(ざくろもんよう・ざくろの模様のこと)は子孫繁栄を表すもとて用いられ、着物などの柄などにも使われています。
子どもを守る神である鬼子母神が祀られているお寺には子育てや安産、子授けなどの御利益があるため、子宝を願う人々や、安産や子育て祈願をする人々が多く訪れています。
「江戸三大鬼子母神」とは?
鬼子母神は、法華経の守護神とされており、法華経を経典とする日蓮宗や法華宗の寺院で祀られることが多く、有名なのは以下の「江戸三大鬼子母神」です。
東京都台東区入谷の真源寺「恐れ入谷の鬼子母神」
江戸時代、とある大名の奥女中におできが出来たのですが、真源寺で願掛けをしたら完治したそうです。
このことが江戸中で話題となり、「恐れ入りました」と地名の「入谷(いりや)」をかけ、さらに真源寺で祀られていた鬼子母神を続け、洒落で口調良く表現したのが「恐れ入谷の鬼子母神」という言い回しです。
毎年7月に開催される「入谷朝顔まつり」が有名です。
外部リンク:入谷鬼子母神真源寺の概要
千葉県市川市の遠寿院「法華経寺鬼子母神」
日蓮宗の大本山(だいほんざん)で、春は桜の名所として有名なお寺です。
大本山とは、総本山(そうほんざん)の次に位の高いお寺のことで、日蓮宗の総本山は山梨県の久遠寺です。
外部リンク:千葉県市川市の遠寿院「法華経寺鬼子母神」
東京都豊島区雑司ヶ谷の法明寺
「雑司ヶ谷鬼子母神堂」は、絵馬にもザクロが描かれていることで有名です。
外部リンク:鬼子母神へようこそ
鬼子母神をお祀りするお寺には、ザクロが植えられていることが多いそうです。
ザクロは大きな実の中に小さな果肉がたくさん詰まっていて、その果肉ひとつひとつに種があります。
食べる時に種が気になって取り出す人もいるのですが、ザクロの種は多くの栄養が含まれているので、そのまま食べると良いそうですよ!
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