日本では、一年のある時期をいろいろな言葉で表現しますが、今回紹介する「三伏」もある時期を表しています。
三伏は手紙などの季節の挨拶に用いられることがありますので、見聞きしたことがある人もいらっしゃるかもしれません。
三伏にはどのように意味があるのでしょうか?
また2025年はいつからいつまでなのでしょうか?
季語「三伏」を使った俳句をご紹介します。
「三伏」の意味とは?
読み方は「さんぷく」です。
陰陽五行説に基づいて決められた
「初伏(しょふく)」
「中伏(ちゅうふく)」
「末伏(まっぷく)」
の総称を「三伏」といいます。
「三伏」は、夏の勢いがとても盛んで秋の気配を伏する(ふくする・降伏させる)という意味があります。
夏の最も暑い時期のことをいいます。
陰陽五行説とは、
この世のすべてのものを陰と陽に分類する「陰陽説(いんようせつ)」という思想と、
万物は木、火、土、金、水の五種類の元素からなる「五行説(ごぎょうせつ)」という自然哲学の思想が合わさったものです。
「三伏」はいつ?
「三伏」の日付(三伏日)は一般的に以下の通りです。
三伏 | 日付 |
初伏 (しょふく) |
夏至(げし・毎年6月22日ごろ)以後の三度目の庚の日(かのえのひ) |
中伏 (ちゅうふく) |
夏至以後の四度目の庚の日 |
末伏 (まっぷく) |
立秋(りっしゅう・毎年8月8日ごろ)以後の最初の庚の日 |
庚の日の意味は以下のとおりです。
「庚の日(かのえのひ)」とは?
「庚(かのえ)」は、「十干(じっかん)」の7番目にあたります。
十干(じっかん)とは、
甲(こう)
乙(おつ)
丙(へい)
丁(てい)
戊(ぼ)
己(き)
庚(こう)
辛(しん)
壬(じん)
癸(き)
のことです。
この「十干」に、
五行説の五行「木(き)」「火(ひ)」「土(つち)」「金(か)」「水(みず)」と、
陰陽説の陽を表す「兄(え)」と、陰を表す「弟(と)」
を順番に当てはめると次のようになります。
甲(木・兄)=「木の兄(きのえ)」
乙(木・弟)=「木の弟(きのと)」
丙(火・兄)=「火の兄(ひのえ)」
丁(火・弟)=「火の弟(ひのと)」
戊(土・兄)=「土の兄(つちのえ)」
己(土・弟)=「土の弟(つちのと)」
庚(金・兄)=「金の兄(かのえ)」
辛(金・弟)=「金の弟(かのと)」
壬(水・兄)=「水の兄(みずのえ)」
癸(水・弟)=「水の弟(みずのと)」
庚は「金の兄(かのえ)」になりますね。
兄(陽)は、「強い」「盛ん」という意味なので、庚(金の兄)は 金の性質が盛んという意味になります。
また以下のように、陰陽五行説で金は秋に対応し、火は夏に対応します。
五行 | 水 | 木 | 火 | 土 | 金 |
季節 | 冬 | 春 | 夏 | 土用 | 秋 |
火と金は下の図のように「相克」の関係にあり、「火は金(属)を溶かす」と考えます。
このことから夏(火)の勢いが盛んで秋(金)の気配は伏する(降伏させる)ことになり、 夏の最も暑い時期になるということになるのです。
また、暦注で三伏日は、 「旅行・婚姻・種まきを忌む日」とされています。
暦注とはカレンダーに記載される日時・方位の吉凶などに関する注記事項のことです。
十干を日にちに当てはめると10日間で一巡りするので、「庚の日」は10日ごとに訪れます。
2025年の「三伏」いつからいつまで?
2025年の三伏日は以下の通りです。
●初伏は7月20日(火)
●中伏は7月30日(月)
●末伏は8月9日(土)
よって、2025年の「三伏」の期間は、
2025年7月20日(火)~8月8日(金)
となります。
手紙で「三伏」を用いる場合
手紙などで季節の挨拶として「三伏」を用いる場合、7月中旬から8月上旬までとなるので、暑中見舞いと同じ時期によく使います。
暑中見舞いは一般的に、
「梅雨明けからお盆まで」
「暦の上では秋になる立秋まで」
といわれており、夏の最も暑い時期である「三伏」とほぼ重なります。
そのため、「三伏の候」や「三伏のみぎり」というふうに、時候の挨拶として用いることができます。
例:「拝啓、三伏の候」
暑中見舞い、時候の挨拶については以下の記事を御覧ください。
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関連:「暑中見舞い」気の利いた一言・メッセージ・添え書き例文まとめ
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「九夏三伏」の意味とは?
「三伏」に関連する言葉で「九夏三伏(きゅうかさんぷく)」という四字熟語があります。
「九夏」は夏の90日間のことで、「夏の期間いっぱい」「夏の間全部」という意味があります。
九夏三伏は、「夏の最も暑いころのこと」という意味になります。
「九夏」は具体的には、立夏(りっか・5月6日ごろ)から立秋(りっしゅう・8月8日ごろ)までの期間を指します。
「三伏」は夏至(毎年6月22日ごろ)から立秋以後の最初の庚の日までです。
手紙などの時効の挨拶として使う場合、夏の最も暑い時期に使います。
例文
「九夏三伏、皆様いかがお過ごしでしょうか」
「九夏三伏も過ぎ、暑さも和らいできましたね」
「九夏三伏も過ぎ、暑さもどうやら峠を越えたようですね」
季語「三伏」を使った俳句
「三伏」は、夏の季語です。
「三伏」を使った俳句は以下のとおりです。
・飯田蛇笏
三伏の 月の穢に鳴く 荒鵜かな
(さんぷくの つきのえになく あらうかな)
・日野草城
三伏や 昼の浄瑠璃 ラヂオより
(さんぷくや ひるのじょうるり らじおより)
・村山故郷
三伏や 家にゐて食ふ にぎり飯
(さんぷくや いえにいてくう にぎりめし)
「三伏」という言葉の意味がわかりましたね。
秋を降伏させるほど夏の勢いが盛んということで、夏の厳しい暑さを表現しているのです。
毎年同じ日になるわけではありませんが、「7月中旬から8月上旬まで」や「暑中見舞いと同じ時期」と覚えておくと良いかもしれませんね。
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