私たちは普段、年齢を「満年齢」で数えますが、「数え年」という数え方もあります。
「満年齢」は今現在の年齢です。生まれたときは0歳で誕生日になるとひとつ年を重ねていきます。
「数え年」は生まれたときは1歳でその後は元日にひとつ年を重ねていきます。
なぜ日本には二種類の数え方があるのか不思議に思ったことはありませんか?
現在はあまり使うことのない「数え年」ですが、今でも「数え年」で行われるイベントがあります。
今回は「満年齢」と「数え年」についてわかりやすく解説します。
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昔は数え年が使われていた
日本では古くから数え年が使われてきました。
数え年は、生まれた時点で1歳と数え、元日(1月1日)に1つ年を重ねる考え方です。
これは、年神様(としがみさま・毎年お正月に各家にやってくる豊作や幸せをもたらす神様)が、人々に豊作や幸せとともに歳を授けると考えられていたからだそうです。

日本がいつごろから数え年を使っていたのか定かではありませんが、東アジア諸国では古くから使われており、中国から日本に伝わったといわれています。
満年齢が使われるようになったのはなぜ?
明治維新によって外国との交流が増え日本に西洋文明が入ってくるようになり、明治5年(1872年)に暦が新暦(太陽暦・グレゴリオ暦)に変わりました。
そして、年齢の数え方も西洋に合わせようと考えた明治政府は、明治6年(1873年)に「太政官布告(だじょうかんふこく・明治時代初期の法令)を発布し、満年齢を使用するようにしました。

しかし、法令で「満年齢を使用せよ」といわれても満年齢はなかなか人々に普及せず、一般的には数え年が使われ続けました。
満年齢が普及したのは、戦後の昭和25年(1950年)に「年齢のとなえ方に関する法律」が施行されてからで国や地方公共団体に対して満年齢の使用を義務付け、国民にも改めて満年齢を使うよう指示しました。
「年齢のとなえ方に関する法律」の制定理由
「年齢のとなえ方に関する法律」の制定理由は、以下の4つです。
1.「若返る」ことで日本人の気持ちを明るくさせる効果を狙った
満年齢で20歳の人は、数え年では21歳か22歳ですから、一種の若返り法になります。
終戦から4年しか経っておらず国民は暗い気持ちで日々を過ごしていましたが、「若返る」ことで少しでも気持ちが明るくなれば良いと考えたようです。
2.正確な出生届の促進

結婚に年齢が大きく関わっていたこの時代、正確な出生届を出さないことが多々あったそうです。
たとえば、「数え年」だと12月生まれの人は、すぐに2歳になってしまいます。
しかし、1月に出生届を出すことで、本来ならすぐに2歳になるところを1歳にすることができます。
数週間や数か月ずらしたり、中には1年や2年遅れて出生届を出す人もいたそうです。
満年齢にすることで誕生日に年齢を重ねるようになり、ひとりひとりが正確に年齢を数えるようになるため生まれた日を正確に把握できると考えた。
3.国際性の向上
欧米諸国では満年齢が使われているため、日本も満年齢にすることで国際性が向上すると考えたようです。
4.配給における不合理の解消
もっとも大きな理由は、配給における不合理の解消だといわれています。
戦時中に始まった配給制度は、戦後もしばらく続き、配給制度では、満年齢を基準にカロリー計算をして配給量が決められていました。
しかし、配給をする現場では便宜上、数え年で配給を行っていました。昭和16年(1941年)当時のお米の配給は1歳~5歳が120g、6歳~10歳が200g、11歳~59歳までが330g、60歳以上は300gでした。
配給はお米だけではなく、塩、砂糖、魚、食用油、菓子、パン、味噌、キャラメルなど数多くあり、戦後もしばらく続きました。
例えば、昭和24年12月に生まれた赤ちゃんは、数え年だと昭和25年1月に2歳になります。
昭和25年3月に食事の配給をする場合、満年齢は0歳(生後3、4か月)の赤ちゃんなのに、数え年2歳としてキャラメルが配給されることがよくあったそうです。
生後3、4か月の赤ちゃんに2歳児向けの配給でキャラメルをもらっても食べることができませんでした。
また、50代と60代では配給量が異なり、満年齢は58歳なのに数え年では60歳になっているため配給量が減らされました。
数え年は元日に年を重ねる数え方ですので誕生日によって配給量に差がでるため混乱が生じたそうです。
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還暦・厄年・七五三・長寿のお祝いは満年齢・数え年どっち?
現在は満年齢で生活をしている私たちですが、人生の節目に行われるイベントは、満年齢と数え年のどちらなのでしょう?
ひとつずつみていきましょう!
還暦

還暦は「満年齢」の60歳です。
還暦は、干支(十干十二支・じっかんじゅうにし)が60年一巡し、生まれた年の干支に戻ることから暦が還るという意味があります。
関連:年齢の名称・異称・別名・別称。弱冠・不惑・三十路・還暦は何歳?
厄年
厄年は一般的には「数え年」です。
男性は25歳、42歳、61歳
女性は19歳、33歳、37歳、61歳
が厄年です。
厄年の年齢を「本厄(ほんやく)」といい、前の年を「前厄(まえやく)」、後の年を「後厄(あとやく)」とし、本厄と同じように気を付けなければならない年齢とされています。
厄払いは一般的に「前厄」「本厄」「後厄」の3年続けて行います。
厄払いも「数え年」で行いますが、神社やお寺によっては「満年齢」で行うところもありますので、事前に確認をしておくと良いでしょう。
関連:厄年の意味と男女の年齢。厄払いはいつ行けばいい?効果や祈祷料、服装について
七五三

七五三は一般的に「数え年」ですが、最近は「満年齢」で七五三を行うご家庭も増えています。
男の子は三歳と五歳、女の子は三歳と七歳で行います。
関連:七五三はなぜ7歳・5歳・3歳にお参りするの?男の子と女の子で年齢が違う理由
長寿のお祝い
長寿のお祝いは、還暦以外は「数え年」で行います。
たとえば、数え年70歳の「古希(こき)のお祝い」や、77歳の「喜寿(きじゅ)のお祝い」、88歳の「米寿(べいじゅ)のお祝い」など、長寿のお祝いはたくさんあります。
一般的に「数え年」でお祝いをしますが、最近は「満年齢」でお祝いをするご家庭も増えているようです。

日本にはなぜ満年齢と数え年があるのかわかりましたね。
還暦だけは「満年齢の60歳」で行いますが、厄年、七五三、長寿のお祝いは「数え年」で行うのですね。
しかし、神社やお寺、ご家庭によって異なるので、事前に確認しておくと良いですね。
もともとは「数え年」で行っていたことも、現在は「満年齢でもOK」という考え方になっていますから、「数え年」はいつか消えて行くのかもしれません。
いつか消えていく可能性があっても、古くからの伝統として受け継いでいけると良いですね。
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